顧客満足度を優先して成長を続ける老舗農園
理想園
草塩 正国氏
観光農園 理想園は、1965年(昭和40年)に果物王国と言われる山梨県で創業した。現在のように果物狩りが一般的なレジャーではなかった当時から、観光客が自分でぶどうを狩ることができる観光農園として運営されている。しかし、観光農園が中心的な事業になるほどではなく、出荷を中心とした一般的な農業経営を行っていたという。
「観光農園に力を入れ始めたのは、1980年前後からです。正国氏の父である園主の政則氏が旅行代理店と契約し、観光バスで多くのお客さまに来園いただき、ぶどう狩りを楽しんでいただいてお土産を買って帰っていただくというのが、中心的な事業になりました」
そして現在、観光農園を中心としつつ、インターネット販売などの通信販売も手掛けるぶどうと桃の専門店として成長している。取り扱っているのはぶどう15品種に、桃10品種。農協が取り扱う品種にこだわらず多くの品種を取り扱っているのは、顧客の好みに応えたいからだと、草塩氏は語る。
「お近くのスーパーではなくわざわざ当店をお選びいただくお客さまは、ただぶどうが欲しい、桃が欲しいとおっしゃるお客さまではありません。多くの場合、『肉質の柔らかいもの』、『甘みが強いもの』など細かなご希望をお持ちです。そうした希望に専門店ならではの品揃えと知識でお応えしたいと思っています」
また、卸売りを通さず、直接販売のみに特化しているので、鮮度や熟度にも自信を持っている。果物は収穫後にも熟度を増していく追熟(ついじゅく)があるため、流通に要する時間を見越して食べごろよりも前に収穫するのが普通だ。一方理想園では原則、収穫したその日に発送し、翌日には消費者の手元に届けられる。追熟期間を考慮する必要がないので、食べごろの熟度を優先して収穫、出荷できるのだ。
集客、販路拡大にインターネットを利用
キコー経営サポート&サービス
代表
松本 主計氏
(ITコーディネータ)
通信販売に取り組み始めたのは、20年以上前だ。当時は電話とFAXで受注し、件数は月間数十件程度だった。販売の中心は店頭であり、ぶどう狩り目的で来園した観光客がお土産用に購入するものが多かった。しかし次第に店頭での販売が減少したため、通信販売事業に力を注ぎ始めた。
「以前はバスで来園された団体客の方が、ぶどう狩りを楽しんだあとにお土産もたくさん買ってくださいました。それが次第に、その場でご自身が楽しむだけでお土産をあまり買わなくなりました。昔のように旅行後にお土産を配るような習慣自体がなくなってきたのでしょう」
通信販売による販売拡大を続けていた理想園は、2006年にインターネットを通じた集客、販売に本格的に取り組み始めた。今では月間販売件数は数千件にのぼり、農園事業部と通信販売事業部に分け、専門的に対応するほどに通信販売事業は成長している。
販路拡大や集客の手段は数多くあるが、その中からインターネットを選択したのは、消費者の変化を感じ取ったためだ。インターネットの発展に伴い、消費者自身の商品知識は増え、サービスや商品の選定方法も変化している。以前なら勝沼地方に行き農園を探してぶどう狩りをしていたのが、今は「ぶどう狩り」というキーワードで検索し、その結果の中から行き先を選定する消費者が多くなっている。そうした変化の結果、以前は同じ地域にある観光農園や果物店が競合だったが、今の競合は地域を超えた場所にある農園や果物店だという。
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