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  • 2015/12/28 掲載

ソニーの新規事業創出プログラムから飛び出した、「三日坊主を防止する」異色のアプリ

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さまざまな新事業・新製品を生み出してきたソニーが、復活に向けて新たな動きを見せている。新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」(以下、SAP)はその1つだ。これは、社内から集まった何百というアイデアの中からオーディションで筋のよさそうなものを選び出し、その事業化をサポートするというもの。今回は、そのSAPによりリリースされたスマートフォンアプリケーション「みんチャレ」について、ソニー 新規事業創出部 「みんチャレ」プロジェクトリーダーの長坂 剛氏に話を聞いた。
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ソニー 新規事業創出部 「みんチャレ」プロジェクトリーダー
長坂 剛氏

アプリ開発に向かわせたのは「人を幸せにしたい」という思い

──まずは、長坂さんの経歴をお聞かせください。

長坂氏:学生時代、映像制作に熱中していまして、その当時から映像制作会社の仕事をしていました。就職の際には、その経験を活かして活躍できそうな企業を幅広く回りました。最終的にソニーを選んだのは、創業者 井深 大氏、盛田 昭夫氏の「新しいものを生み出そう」という開拓者精神に深く共鳴したからです。ここなら、自分が活躍できる場があると考えて決めました。

 入社後は、放送用機器ビジネスやデジタルシネマ、PlayStationのネットワークサービスの立ち上げやマーケティングなどに携わりました。そして、それとは別に、個人的にアプリケーション(以下、アプリ)の企画開発を進めていました。

──通常業務をやりながら、ですよね? かなり大変だと思いますが、何か強い動機があったのでしょうか。

長坂氏:「人を幸せにしたい」という思いが昔からあるんです。私はゲームが好きで、ゲームに興じているときは幸せを感じます。人にそのような感情をもたらすものを何か、世の中に届けられないかと考えていました。

 最初に思いついたのは『小さなメダル』というアプリで、スマートフォンでユーザーのライフログを取り、その記録に応じてユーザーを表彰するというものです。たとえば、通勤電車の総乗車距離を見て「あなたは地球を一周したのと同じ距離を移動しました!」などとコミュニケーションするというものです。四つ葉のクローバーを見つければ幸せな気分になるように、何でもないことの中にも幸せは見つけ出せる、というコンセプトでした。しかし、これはちょっと行き詰りました。

  ──お話しを聞く限りではとても面白そうなのですが、どうして行き詰まったのでしょう?

長坂氏:実際に進めていくと、ライフログと表彰内容との関連づけが一筋縄ではいかなかったんですね。

 しかし、アプローチは間違っていないと思い、幸福学や心理学関連の文献を読み漁って行き当たったのが「人は自分から行動を起こすと幸せになる」という一文でした。人はよりよく生きるための新しい習慣をたくさん思いつきますが、なかなか行動に移せません。この課題をアプリで解決できないかと考える中で、みんなで一緒に始めればいいんだ、と考えてまとめあげたアプリが「みんチャレ」(みんなでチャレンジの意)でした。習慣を身につけたい人がチームを組み、チャットで励まし合いながらチャレンジするアプリです。

 そのアイデアを周りに話したところ、おもしろいと言ってくれたのですが、ソニーの既存事業部門の中では受け皿がなく事業化しにくい。そこで「Seed Acceleration Program」(以下、SAP)のオーディションに応募しました。

ソニーの新しいビジネスを生み出す"孵化器"

──応募されたSAPとは、どのような制度なのでしょうか?

長坂氏:これはソニーの既存の事業領域の枠を超えて新たな事業アイデア創出を促すべくスタートしたプログラムです。平井 一夫 取締役 代表執行役 社長 兼 CEOの直轄組織として、新規事業創出部が推進しています。

 いくつかある活動のうち2つを紹介すると、1つは2014年8月、本社の1階に開設された「Creative Lounge」です。ここはいわゆる“インキュベーション・ハブ”で、レーザーカッターや3Dプリンタなど、アイデアを“見える化”するアイテムが豊富に揃っています。ここに社内外のモノづくり志望者が集まって、さまざまなイノベーションを生み出そうとしています。共創の場ですね。ワークショップなども活発に行われています。

 もう1つは、年に複数回行われる新規事業オーディションです。最大の特徴は、既存の事業領域に当てはまらない新規事業アイデアが提案できること、そして応募はチームリーダーがソニーグループの社員であれば、チームの他のメンバーの所属は社内外を問わないこと。このオーディションに合格したアイデアは、約3か月間の短期集中育成プログラムにおいてさまざまな社内の支援を得ながら、必要最小限の人員とコストでプロトタイピングに取り組みリーンに顧客検証を行います。その後、脈ありと判断されればサービスの事業化・量産化に向けてビジネスモデルを検証するため、プロジェクト期間の延長が認められます。

──「みんチャレ」は脈ありと判断されたんですね。

長坂氏:その通りですが、実は1回目のオーディションは落ちたんです。アイデアを整理しなおして社外の仲間と一緒に再チャレンジし、これで晴れて合格となって、プロジェクトも順調に進み、アプリをリリースできるところまでこぎつけました。

──SAPでは、実際どのような支援が受けられるのですか。開発、人的リソースなどは?

長坂氏:まずは自分の工数を100%プロジェクトに使っていい、というのが大きく1つあります。またアプリ開発の過程では、クローズドのベータテストを社内で行えたり、あとはバックオフィス系ですね。事業化や技術についての相談に乗ってもらえたり、テクニカルサポートを受けられたり、使用実感をヒアリングしたり。

 ソニーは新しいものが好きな人が多いので、前向きに首を突っ込んで面白がってくれる人が多いのがありがたいです。また「この人に会ってみれば」と、いろいろな方から人脈をシェアしてもらったりもしています。平井社長直轄のプログラムなので、意思決定もスピーディで非常に動きやすいです。

 人的リソースに関しては会社がアサインするわけではなく、みんな私が声をかけたメンバーです。今は、私をリーダーとして、社内エンジニアが数名、アートディレクション、デザイン、エンジニアで社外の方数名に加わってもらって少人数で進めています。

【次ページ】 マネタイズはどうする?

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