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2016年07月11日

日本企業の「先送り」体質、そのルーツは旧・日本軍にあった

三菱自動車工業の燃費データ偽造問題、シャープが台湾企業の傘下に入るなど、日本の名門企業の凋落ぶりには驚きを禁じ得ないが、その原因の根底には、企業トップの不決断、先送り体質があり、そのルーツを辿ると、かつての「旧・日本軍」に通じていると、国際ジャーナリストの松本利秋さんは言う。今も昔も「想定外」にまったく対応できない日本企業の体質とは? テレビや雑誌などでコメンテイターとして活躍中で、先頃『なぜ日本は同じ過ちを繰り返すのか──太平洋戦争に学ぶ失敗の本質』を著した松本利秋さんに、最近の日本企業の凋落と、かつての日本軍の組織的欠陥の共通性を考察いただいた。

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「先送り」体質は今に始まったことではなく、根は深い

※(写真はイメージ)



先送り、不決断…シャープ凋落に見る「経済的合理性」の欠如

 名門家電メーカーのシャープが台湾の企業に買収され、同じく家電業界老舗の三洋電機も中国の同業者に買い取られ、その名が消えてから久しい。

 原子力発電用原子炉をも製造する巨大企業体である東芝の粉飾決算、ゼロ戦を創った技術をルーツに持つ三菱重工の一部として誕生した三菱自動車工業が燃費データ偽造問題で、ついに日産自動車の配下に入ってしまった。

 1980年代にウォークマンで全世界の若者のライフスタイルを変えたソニーも新しいデジタル時代の潮流には乗れず、ポータブルオーディオではアップルに圧倒されてしまっている。現在ソニーにはかつての勢いが無くなってしまった。

 ここ数年だけでも日本企業の凋落ぶりは目を覆うばかりだが、この体たらくは今に始まったことではない、1990年代から2000年代前半にかけてには日本長期信用銀行が驚くほどの低価格で外資に叩き売られ、山一證券も倒産の憂き目にあっている。

 こうした企業を見てみると、その根底にはほぼ一貫して企業トップの無責任、状況への即応力不足、不決断、先送り、硬直した組織観などが横たわっている。それも、長い歴史と伝統、卓越した技術力を備えた名門と呼ばれるような巨大企業になればなるほど内部ではさまざまな軋轢が起こり、経済的合理性をないがしろにしてしまう要因となっているようだ。

 これらの実例からすると俄かに劣化したのではなく、日本企業ははるか以前から組織の内部に何らかの重大な欠陥を抱えながら現在まで続いてきたと見るのが自然だろう。現在起きているさまざまな不祥事は、その事実が状況の変化に耐え切れず、一気に噴き出してきたと言える。

 その中でも重大な事象と思われるのが、「硬直した思考形式」で「想定外の事態」に対応できていないことであろう。

「想定外」に全く対応できなかった旧・日本軍

 ではいったい「想定外」とはいかなる状況を指すのか。

 それは自らは全く当たり前のこととしている行為や思考が、現実の世界では異常であることに気づいていないがゆえに、当人にとっては当たり前の事象が「想定外」となってしまうことである。

 だからこそ、解決の糸口が見えず、従来通りの対処しかできず、大混乱に陥りながら、大失敗に繋がっていく...。その典型例が、かつて太平洋戦争で日本を破滅に導き、さらなる惨事を何の躊躇もなく惹き起こした大日本帝国陸海軍であった。失敗に遭遇しながら、ことの重大さに気が付かないのである。

 明治維新以降、日本が近代化する過程で最大の組織が軍組織である。日本軍は日清・日露の両戦争を戦い、勝利することで成長し、組織の内部を充実させてきた。明治5年の徴兵令施行以来、日本人は兵役に着くのを名誉のこととし、出征兵士は村中挙げて祝ってきた。

 だが、兵士が兵営に入るのは軍の動員計画と密接に関係してくる。従って、動員計画は秘密裏に立てられ密かに実行されるのが常識である。でなければ、戦争計画そのものが敵に筒抜けになってしまう。

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『なぜ日本は同じ過ちを繰り返すのか──太平洋戦争に学ぶ失敗の本質』(松本利秋 著)
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 この極めて重大な秘密事項を日本ではこともあろうに「赤紙」と呼ばれる召集令状である葉書を役場の兵事係が各家庭に持参。さらには入営を祝う宴を張り、一族郎党や隣近所のものが集まって万歳を連呼し、召集兵を駅まで見送ったのである。

 このこと一つとっても日本のそれは、ドイツや当時の列強国とは相当ずれた戦争計画であったと言わざるを得ないだろう。日本人全員が赤紙は戦争計画を実行性のあるものに仕立て上げるためのものであり、鐘や太鼓で召集令状が来たことを触れ回ることは情報管理が全くできておらず、戦略的には大失敗を犯しているという認識が全くなかったのである。

 このような目的と手段に関する合理的な発想ができない国民気質の中では戦争のグランドデザインはおろか、情報の管理と利用、経済合理性を考えた戦争は始めから無理であった。

【次ページ】「旧・日本軍」を今も引きずる現在の日本的組織

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