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2016年11月01日

地方では銀行も限界か、再編が進むのには理由がある

金融庁が全国にある地方銀行の貸出業務に伴う収益見通しを試算したところ、2025年3月期で6割の地銀が赤字に転落する見通しであることが明らかになった。地方の人口減少に低金利が重なって利ざやが縮小、営業経費を賄えない地銀が続出すると予想している。九州大学名誉教授で関西外国語大外国語学部の堀江康熙教授(金融論)は「人口減少の大きい地域では地銀の経営がますます悪化し、赤字のところがさらに増えるだろう」とみている。預金を集めて貸し倒れリスクの低い取引先に金を貸すだけのビジネスモデルは、もはや限界なのだろうか。

執筆:政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

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大正銀行を傘下に加えたトモニホールディングス=香川県高松市亀井町

(写真:筆者撮影)

人口減少と低金利が地銀の貸出業務に打撃

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 金融庁は2025年3月時点の人口予測に基づき、預金残高と貸出残高を算出したうえで、預金と貸し出しの金利差から得られる預貸金利ざやを推計、営業経費と手数料収入を加味して収益率を試算した。対象は地方銀行64行、第二地方銀行41行、埼玉りそな銀行の計106行。

 それによると、本業である貸出業務に伴う収益率がマイナスの赤字となるのは、地銀の6割以上に上った。2015年3月期でもざっと4割の地銀が赤字だが、これからの10年で地銀の2割が新たに赤字転落する計算になる。

 マイナス幅が0.2%以上となるのは10行ほど。反対に収益増を見込めるのは全体の4割程度にとどまった。各地銀の体質に差があるものの、過疎地域を多く抱え、人口減少が深刻な地域の地銀ほど経営の先行きに不安がつきまとう傾向にあるという。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2010年に8,000万人以上いた15〜64歳の生産年齢人口は、2025年になると7,000万人まで縮小する見通しだ。

 高齢化が進んで預金減少のスピードは緩やかになると考えられるが、金融庁は貸し出し需要がハイペースで減少するとみている。預金をどれだけ貸し出しに回しているのかを示す預貸率は現在約70%。これが低下すると、利ざやの縮小に拍車がかかる。

 地銀は今、本業の収益悪化を国債や株式の売却益で補い、利益を上げている。貸し出し業務の赤字がすぐに経営不安につながるわけではないが、地元の中小企業への積極的な融資や経営支援を強化しなければ、地銀経営が将来、成り立たなくなる可能性も否定できない。

 金融庁は「このままでは従来の貸出業務から収益を得るのが困難になる。新しいビジネスモデルを確立させるよう各地銀に求めていきたい」としている。

起業支援や事業再生への融資を促す新指標も導入

 金融庁はこれまで、合併、経営統合による体質強化を呼びかけてきたが、地銀の体質改善に向けて新たに打ち出したのが、地元企業にどれだけ役に立っているのかを示す新指標だ。金融庁は各地銀がこれを活用して起業支援や事業再生に積極的に乗り出し、地域経済に貢献するとともに、収益基盤を安定させることを求めている。

 新指標は地銀のほか、信用組合、信用金庫も対象に入り、
■創業に関与した件数
■経営が改善した取引先の数
■担保でなく、事業内容で判断して融資した数
など、全金融機関共通の5項目と、各行の経営方針に合わせて選択する項目など約50項目から成る。

 今後、各金融機関に毎年、自己評価してもらい、結果を自主的に開示、企業が融資先を選ぶ際の検討材料とする。金融庁は評価結果を各金融機関と議論し、経営方針の改善に導きたい考えだ。

 過度に担保へ依存した融資姿勢では、地域金融機関の収益確保が難しいうえ、資産はなくてもアイデアや技術を持つ経営者の起業を支援しにくく、地方創生にも貢献できない。その結果、地方経済がますます縮小し、金融機関の経営基盤を揺るがす悪循環を促進させる。

 金融庁が地方企業を対象に実施したヒアリングでは、企業から「金融機関が担保しか見ていない」とする不満が多く上がっており、担保依存からの脱却は遅れている。

【次ページ】全国各地で相次ぐ地銀の経営統合

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