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2017年02月17日

大ピンチの紙・パルプ業界、それでも大王製紙が日清紡に「成長投資」のワケ

製紙業界各社の第3四半期(4〜12月期)決算が出そろい、大手3社(王子HD、日本製紙、大王製紙)とも減収で日本製紙は最終赤字を計上するなど、ふるわない。その背景には新聞、雑誌、書籍の「電子化」「ペーパーレス化」という大きなトレンドがあるが、一方では売上を伸ばす「紙」も存在している。2月10日、家庭紙で国内トップの大王製紙がシェア4位の日清紡HDの紙製品部門の買収を正式に発表したが、それは「成長投資」に他ならない。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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悩める製紙業界の「突破口」とは

(© Norman01 – Fotolia)


日清紡HDの事業買収により、家庭紙で「大王」が君臨する

 2月7日、「大王製紙、日清紡の紙事業買収」というニュースが流れた。その日、大王製紙も日清紡ホールディングス(HD)も、検討を進めている事実を否定しなかった。

 3日後の10日、大王製紙は第3四半期(4〜12月期)決算の発表と同時に、日清紡HD子会社、日清紡ペーパープロダクツの全株式を買収し、工場や従業員も含めて日清紡HDの紙製品事業に関するすべての資産を譲り受けると正式に発表した。買収額約250億円を現金決済で支払い、次の決算期初の4月3日付で事業譲受の予定になっている。

 日清紡の紙製品事業の売上高は325億円で、印刷用の高級特殊紙もあるが、主力は「コットンフィール」「ピーチ」ブランドのトイレットペーパーやティッシュペーパーなど「家庭紙」で、この分野で国内4位のシェアを有している。

 シャワートイレ用の吸水力2倍のトイレットペーパーがヒット商品になるなど商品開発力もあり、4〜12月期決算では売上高0.2%増、部門利益4.5倍と好調だった。

 買収側の大王製紙は「エリエール」ブランドを擁する家庭紙のトップシェア企業で、家庭紙の売上高(ホーム&パーソナルケア部門)の2017年3月期見通しは1700億円となっている。

 買収によって来期(2018年3月期)、家庭紙の事業が2000億円の大台に乗るのはほぼ確実で、2位の日本製紙(日本製紙クレシアの前期売上高720億円)、3位の王子ホールディングス(HD/家庭紙国内事業の前期売上高445億円)を、大きく引き離す。

 生産能力は2016年3月末で年産約26万トンだったが、2018年3月末までに約5万トンの設備増強を計画しており、それに日清紡から譲り受ける約8万トンを足すと年産39万トン。前期比で50%も増える計算になる。

 トイレットペーパーの売上シェア(2015年)は、23%の大王製紙が8%の日清紡を吸収すると単純計算で31%になり、2位の日本製紙の12%、日清紡の事業の争奪戦を演じた相手の3位の王子HDの10%を、大きくリードする。

 大王製紙という社名は、昭和18年(1943年)に四国の14社が合併して誕生した際、戦時中の企業合同で紙・パルプ業界の独占企業になっていた王子製紙に追いつけ、追い越せという願いを込めてつけられた説がある。王子よりも親の王様のほうが偉く、大王はさらに偉大だ、ということだが、1979年に参入した家庭紙の分野に限って言えば、今や同業他社を大きく引き離す「大王」として国内市場に君臨する。

業界の数少ない成長分野に生き残りをかける

 紙・パルプ大手3社の全体の業績はふるわず、最新の4〜12月期(第3四半期)連結決算はいずれも減収で日本製紙は最終赤字と、停滞している。営業増益は、昨年秋までの為替の円高で原料の木材チップやパルプ、燃料の石炭の外貨建て価格が低下したことと、事業構造改革でコストの削減効果が出ているおかげだった。

 業界トップの王子HDの4〜12月期決算の売上高は前年同期比1.9%減、営業利益は8.3%増、最終利益は円高差損が発生し17.6%減。2017年3月期の通期見通しは、売上高は1兆4100億円で1.6%減、営業利益は720億円で2.3%減、最終利益は330億円で116.3%増(約2.2倍)。それは中国事業撤退による特別損失を計上した前期の反動。

 日本製紙の4〜12月期決算の売上高は4.0%減、営業利益は6.4%増、最終利益は62億円の赤字(前年同期は142億円の黒字)。赤字は北米での印刷・出版用紙事業から撤退して237億円の特別損失を計上したため。2017年3月期の通期見通しは、売上高は9900億円で1.7%減、営業利益は280億円で23.8%増、最終利益はわずか10億円で58.8%減。

 大王製紙の4〜12月期決算の売上高は0.7%減、営業利益は0.9%増、最終利益は17.1%増。2017年3月期の通期見通しは、売上高は4800億円で1.2%増、営業利益は250億円で2.8%増、最終利益は130億円で10.9%減となっている。

 この3社は総合メーカーで、「紙(洋紙)」に属する新聞用紙も、印刷・情報用紙も、包装用紙も、衛生用紙(家庭紙)も、雑種紙も、「板紙」に属する段ボール原紙も、箱をつくるための紙器用紙も、すべて生産している。

 大手3社の家庭紙の売上高に限って見れば、「ネピア」の王子HD(家庭紙国内事業)は横ばいが続くが、「クリネックス」「スコッティ」の日本製紙(日本製紙クレシア)は2011年3月期からの5年間で18.2%増加し、「エリエール」の大王製紙(ホーム&パーソナルケア部門)に至っては、2011年3月期からの5年間で32.4%の大きな成長を遂げている。

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家庭紙シェア上位3社の家庭紙売上高の推移

(出典:各社IR)


「家庭紙」とともに成長分野に数えられるのは?

 この「家庭紙」とともに、紙・パルプ業界の成長分野に数えられるのが「段ボール原紙」である。農産物や工業製品の出荷でも、宅配便でも、引っ越しでも広く利用される段ボール箱の材料になる紙で、「板紙」のカテゴリーに属する。その国内市場は成長しており、2016年の段ボールの総需要は前年比約2%増え、年間では統計開始以来の高水準だったとみられている。

 段ボールは家庭用ではなく産業用なので景気変動の影響がありそうに見えるが、日本製紙連合会の斉藤俊氏によると、その需要が最も大きい業種はビールや清涼飲料水、加工食品、青果物のケースなどの食料品で、「約6割を占めている」(斉藤氏)という。

 食料品は好・不況の影響を受けにくい業種なので、その分、段ボールの需要も底堅い。全国段ボール工業組合連合会は2017年の段ボールの国内需要を前年比1%増で過去最高更新の141億平方メートルと予測し、レンゴーの大坪清会長は今後5年間の国内の段ボール需要について「1〜2%程度の成長が続く」と話している。

 段ボール原紙製造の国内最大手は王子HDで、段ボールシート・ケースの売上高(国内・海外計)は2011年3月期の2144億円から2016年3月期の2414億円へ、5年間で12.5%伸びた。

 シェア3位の日本製紙の段ボール原紙の国内販売数量はほぼ横ばいだが、2位のレンゴーの業績は好調。段ボール箱の製造では国内トップの専門メーカーで、セッツなど製紙企業へのM&Aも行って、段ボール原紙から最終製品まで一貫生産する。

 その4〜12月期(第3四半期)連結決算は、売上高は前年同期比1.3%増、営業利益は79.7%増、最終利益は113.7%増(約2.1倍)。2017年3月期の通期見通しは、売上高は5580億円で4.8%増と過去最高更新、営業利益は240億円で52.6%増、最終利益は145億円で47.7%増と2ケタ増益の見込み。近年の売上高はほぼ右肩上がりで、同業大手の王子、日本製紙、大王の3社と、まるで別の世界にいるような好業績をあげている。

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レンゴーの連結売上高の推移


【次ページ】家庭紙が比較的好調な理由に「インバウンド需要」あり

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