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2017年04月21日

セクハラ、人材流出問題が噴出の「ウーバー」では何が起こっているのか

2017年に入ってから、配車アプリサービスのウーバーにトラブルが続いている。これまでに160億ドルを調達し、評価額は690億ドルといわれる同社で、いったい何が起きているのか? 元ウーバーの女性社員によるセクハラ告発、自動運転プロジェクトに関するグーグルとの訴訟問題など、これまでウーバーに起きたことを振り返り、社内カルチャーの是非が問われる「ユニコーン企業」が直面する問題についても考えてみたい。

執筆:テックライター・翻訳家 佐藤ゆき

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ウーバーをはじめとする「ユニコーン企業」に問われる社内カルチャーの是非


女性社員がセクハラを受けたことをブログで公開

 今年の2月19日、ウーバーにとっては思いがけない形で事は起きた。ウーバーで以前エンジニアを務め、その後Stripeに転職したスーザン・ファウラー氏が、自分のブログ上で上司から性的な関係を迫られたこと、そしてその件を人事部に報告したものの誠実に対応してもらえなかったことを詳細に綴り、公開したのだ。

 彼女の主張する内容を一部簡単にまとめると、このようなものだ。

「在籍する部署の上司から性的な関係を迫る内容のメールが送られてきた。明らかなセクシュアルハラスメントであったにもかかわらず、人事部は彼の業績が良いこと、そうしたセクハラは『初めての行為』であることを理由に、彼に警告を与える以上のことはしなかった。

 結局、彼女は『別のチームに移る』か『部署に残るものの、男性上司からの評価が低くなる可能性があることを理解する』という二つの選択肢しか与えられなかった。その件をさらに会社の上層に報告しようにも、そうした報告体系が社内に確立されていなかったためできなかった。

 その後、他部署に移った。社内で他の女性エンジニアとのつながりが増えていくにしたがって、同僚たちもまた自分と同じような経験をしていたことを知った。前の部署のセクハラ上司から同じような性的関係を迫る誘いを受けていた女性もいた。しかも自分が入社する前に。つまり、人事部が主張していた『初めての行為』というのは嘘だったのだ」

 ブログ記事によれば、その後も人事に問題を報告し続けたものの、逆に自分に問題があるのではないかと指摘され、マネージャーからは個別のミーティングでこれ以上問題を人事に報告するのであれば解雇すると脅迫を受けたという。

 彼女は最終的にウーバーを退職し、同じくベイエリアのスタートアップであるStripeに転職。その後、ウーバーで経験したことの顛末を執筆して公開したのだった。この記事はネット上ですぐさま拡散され、ウーバーは対応に迫られることになった。

 ブログの影響力は大きく、ウーバーへの失望と怒りが広がって、22日にはソーシャルメディア上でウーバーのアカウント削除を促す「#DeleteUber」のキャンペーンが話題になった。

止まらない人材流出、幹部たちが続々と離れる

 その後起きたことは、幹部たちの退任だった。2月27日、その約1か月前にウーバーに参画したばかりのエンジニアリング部門上級副社長アミット・シングハル氏の辞職が発表された。

 彼は1年前に15年間在籍し、最後は検索部門の責任者まで務めたグーグルを去っていたのだが、当時社員の一人からセクハラを訴えられ、内部調査によってそれが「信頼できる情報」とみなされたことが理由だった。ウーバーに移籍する前に、そうした経緯をウーバーに伝えていなかったことが原因で、シングハル氏は辞職を言い渡されたのだ。

 その後わずか1週間もたたないうちに、今度はプロダクト・グロース担当副社長のエド・ベイカー氏が辞職するというニュースが報じられた。

 「公的な領域で、自分のこれまでの経験を生かしたい。今がその絶好のタイミングだと思う」というのが、彼自身による辞職理由であるが、今回のセクハラ問題にベイカー氏が大きく絡んでいたことが本当の理由なのではないかと推察する声も多い。

 さらに、3月19日には半年前に社長に就任したばかりのジェフ・ジョーンズ氏の辞職が報じられた。

 ウーバーに移籍する前は、米大手小売ターゲットのCMOを務めていたジョーンズ氏であるが、「これまでのキャリアで信じてきたリーダーシップに対する信念と取り組み方が、ウーバーで目にしたことと経験したことと相反することが明らかになった今、これ以上このライドシェアリングビジネスの社長として継続することはできない」というのが辞職の理由だ。

 ウーバーの成長を促進することを期待されていた社長はじめ上層幹部たちが相次いで去ったことは、大きな注目を浴びた。

ユニコーン企業ウーバーが直面する組織体制の問題

 元女性社員によるブログ記事が公開されたあとのウーバーの対応は決して悪いものではなかったように思う。

 ブログ記事が公開された直後、2月21日には外部の弁護士を呼び、社内の性差別の実態に関する調査をスタートさせた。取締役のアリアナ・ハフィントン氏もこの調査に加わった。

 24日は、トラビス・カラニックCEOはウーバー社内の100名の女性エンジニアを集めて、現状のヒアリングに努めた。シングハル氏とベイカー氏の辞職も、こうした早期対応の結果としてみれば、決してネガティブなこととはいえないだろう。

 セクハラ自体の問題に目を向ければ、それはウーバーだけの問題ではない。シリコンバレーのテック企業・スタートアップの多くに内在する問題だ。「シリコンバレーのスタートアップは、男性中心主義で女性エンジニアにとっては決して良い環境とはいえない」という声を耳にすることは多い。

 だからこそ、問題が起きたときの人事部内の対応方法と社内ルール、報告システムをしっかりと築いておくことが重要だった。ブログを書いたファウラー氏のケースにしても、人事部の最初の対応が適切なものであれば、その後の展開はまったく違ったものになっていただろう。組織が正常に機能していなかったこと、性差別のはびこるカルチャーがそのままに放置されていたことで、問題は手のつけられないほど大きなものに膨らんでいった。

 優秀な人材を迅速に獲得していくこと、組織を成長させていくことはスタートアップにとって最重要課題だ。しかし、その成長スピードが通常の会社とは比べものにならないほど早い中で、社内カルチャーや組織体制が安定しないまま「カオス」の状態が続いていた、というのがウーバーに関する周囲からの見方だ。

 3月末には、社内カルチャーに対する多くの批判を受けて、ウーバーは現在取り組んでいるダイバーシティに関するデータを初めて公表した。

 そのデータによれば、現在の社員数は1万2000名(遠隔のカスタマーサポート担当者なども含む)にもおよぶ。この1年で社員数は倍増しており、新たに採用した社員の4割は女性であることも示されている。ダイバーシティを強化することで、「寛容で多様な職場」をつくるために奔走中だ。

【次ページ】グーグルの「自動運転技術」がウーバーに流出か

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