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2017年06月08日

JAXA 松浦直人 新規事業促進部長インタビュー、宇宙ビジネスはどう始めればいいのか

宇宙というと、これまで人々の憧れの対象であっても、なかなか一般企業の手の届かないものと思われていた。しかし近年、米国ではテスラのイーロン・マスク氏やアマゾンのジェフ・ベゾフ氏らが相次いで宇宙ビジネスに参入。その市場規模は2000億ドル(22兆円)ともいわれる。日本でもアクセルスペースなどさまざまなベンチャー企業が立ち上がったり、金融機関やVCによる投資も活発化。さらに6月1日にはGPSなどでのビジネス活用が期待される準天頂衛星「みちびき2号機」の打ち上げも成功した。そこで宇宙航空研究開発機構(JAXA)で新規事業の促進に尽力する新規事業促進部長 松浦直人氏に宇宙ビジネスの現状と「始め方」について話を聞いた。

聞き手・構成:フリーライター 戸津 弘貴、編集部 松尾慎司

後編はこちら(この記事は前編です)

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)
新規事業促進部長
松浦 直人 氏


JAXAの新規事業促進部の2つの目的と取り組みとは?

──新規事業促進部の目的と概略について教えてください。

松浦氏:新規事業促進部では「宇宙産業の競争力強化」と「新たな事業の創出と宇宙産業コミュニティの拡大」という2つの大きな柱を推進しています。これはJAXAの産業振興の取り組みと見ていただいても結構です。

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産業振興に向けたJAXAの取り組み

(出典:JAXA提供)


 1つ目の柱は、性能や信頼性だけでなく、価格も含めて国際競争力を持った研究・開発や、国内企業への技術移転を行うとともに、企業の海外展開を支援し、日本の宇宙市場を拡大させることです。一方、2つ目の柱は、宇宙産業の新たな取り組みや、他分野からの新規参入、民生分野への展開などを促進することで、宇宙産業の活性化とコミュニティの拡大を狙うことです。

 宇宙産業力の強化という観点では、やはり宇宙色の濃い製品が多いと思います。H3ロケットや技術試験衛星9号機などもプロジェクトとして動いていますが、産業振興の観点で我々が企業との接点を担当している形です。

──2つ目の柱のほうが企業との関係が深いかもしれませんね。

松浦氏:宇宙への取り組みがもたらした技術を使った製品はもとより、宇宙開発を行う技術そのものも海外に売り込んでいます。たとえば今は政府が主導して鉄道インフラをはじめとする重要インフラの輸出などを行っていますが、これらと同レベルで、宇宙事業についても取り組まれています。世界的にも官民連携で進めることが一般的ですが、相手国の要望もあって、物を売るだけでなく、人材育成などとペアになって進めています。

 一方で、宇宙技術をいかに使ってもらうか、新しい仕事をいかに創出するかという点が、もうひとつ重要な狙いになります。現在、我々もこちらに注力しており、実際に引き合いが非常に多くあります。宇宙に携わるベンチャーや、宇宙に携わっていない大企業、あるいは金融機関からも問い合わせをいただきます。

──金融機関からの問い合わせは具体的にどのようなものなのでしょうか?

松浦氏:たとえば、銀行の取引先が宇宙分野に参入したいといったことであったり、自分たちも宇宙に投資をしたいがどう目利きをしたらよいのかわからない、あるいは現状把握のための調査依頼といった問い合わせです。

 宇宙事業は国主導なので、国の政策がどうなのかを知りたいようです。以前までJAXAの認知度は低かったのですが、いまは銀行だけでなく、ベンチャーキャピタル(VC)からも多くの問い合わせがあり、かなりの数を対応させていただいています。

超小型衛星「CubeSat」の開発が宇宙ビジネスの火付け役に

──宇宙事業に関わるスタートアップも増えたとのことですが、いつ頃からそういう状況になったのでしょうか?

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ノルウェーのCubeSat

(写真:Rogerb/Wikipedia/CC BY 1.0)

松浦氏:明確ではありませんが、個人的には2000年ぐらいから大学機関で教育のために超小型衛星「CubeSat」の開発が始まってからだと思っています。これは10cm四方のサイコロ型で、ロケットに相乗りして打ち上げます。当初は機能もシンプルで、地上と通信したり、地球の写真を撮ったりなど、単機能なものが多かったです。

 ただし、2U、3Uなど少し大きなサイズになると、企業が製作する場合が多いですね。米国では高分解能の地球観測が可能なものも開発しています。いずれにしても技術レベルが上がり、コンポーネントの性能がすごく良くなったことが背景にあります。

 あと重要な点としては、業界に資金が流れ込むようになったことが挙げられます。昔は大学などが国の予算で数百万円レベルの衛星を開発していましたが、その投資額ではさすがに進展しません。現在は企業のイノベーションやスタートアップへの投資が活発化しており、こうした資金の動きと完全に連動していると思います。そういう意味では、技術と資金、ビジネスがうまくリンクしたことが大きいと思います。

──それで多くの成果物が出てきたということですね。近年の成果物にはどんな傾向がありますか?

松浦氏:我々が産業振興という形で明確に取り組みはじめたのは3年ほど前ですが、技術のスピンオフなどは以前からも継続して行っていました。しかし、JAXAの研究をいかに世に展開するかということに取り組み、ここにきて宇宙部品やコンポーネントだけでなく、衣料、食料、農業、建築など、さまざまな分野で成果物が多く出てきました。

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冷却下着ベスト型


 JAXAの特許を使って製品を開発するだけではなく、やはり宇宙技術を地上に応用するための研究も必要です。そこでオープンラボで共同研究をしています。我々の技術を使いながら、企業側も資金を出して、ビジネスとして回る形を考えてくださいというスタイルです。JAXAの技術をわかっていても、自分たちの事業に取り込める想定がないと進みません。逆に事業に活かせることがわかり進み始めると、著しく進展するようです。

【次ページ】イノベーション創出を目的とした「未来共創プロジェクト」

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