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2017年05月31日

農道空港は「地域のお荷物」を脱することができるのか

農道を拡幅して農産物を空輸する小型飛行機の離着陸場に整備された農道空港。農林水産省が1990年代に全国8カ所で整備し、無駄な公共事業の典型としてやり玉に挙げられたが、岡山県笠岡市の笠岡ふれあい空港はラジコン飛行機、他の空港も防災やスカイスポーツの拠点として生き残りを図っている。それなりの利用を確保した空港がありながらも、経営は赤字のまま。島根県立大総合政策学部の西藤真一准教授(交通政策論)は「自治体は農道空港をどのように活用するのか見いだし、住民と合意する必要がある」と指摘する。バブル期の負の遺産は地域のお荷物を脱することができるのだろうか。

執筆:政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

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「ラジコンの聖地」として1年中利用予約が入る笠岡ふれあい空港の滑走路

(写真:筆者撮影)

笠岡はラジコン飛行機の競技会や練習会に活路

 広さ約1,200ヘクタール。笠岡市南部の笠岡湾干拓地に広大な土地が広がる。一部が工業用地となったが、大半は農業用地。野菜や牧草の栽培、酪農が行われているほか、菜の花やヒマワリの畑もあり、満開の時期には地域の観光スポットとなっている。

 その中央部にある笠岡ふれあい空港は、正式名称が笠岡地区農道離着陸場。滑走路となる農道は延長800メートル、幅25メートルで、エプロンや管理事務所、誘導路も設けられている。国内の農道空港第1号として1991年に運用が開始された。

 市農政水産課によると、2015年度の施設利用件数はイベント活用222回、松くい虫防除の農薬空中散布5回、防災基地としての利用13回など計322回。事務所のスケジュール表にはほぼ連日、何らかの利用予定が入っている。

 中でも利用が多いのはラジコン飛行機の競技会や練習会だ。大学の愛好会をはじめ、西日本各地からマニアが集まり、大空にラジコン飛行機を飛ばしている。このほか、人力飛行機の試験飛行、自動車やオートバイの走行試験、県などのヘリコプター訓練会場としても活用されている。

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(クリックで拡大)

滑走路に併設された笠岡ふれあい空港のエプロン。奥に見えるのが管理事務所

(写真:筆者撮影)


農産物の空輸を断念し、運営協議会が解散

 運用開始当初は自治体や農業団体が運営協議会を設立し、岡山市の岡山空港へ小型飛行機で農産物を運んでいた。そこから空路で東京市場へ輸送しようというわけだ。しかし、1回のフライトで運べる量はトラックの10分の1程度。コストは3倍以上かかり、高速道路の整備で時間短縮も難しくなった。それなのに、高いコストに見合う農産物はない。

 1999年度から3年間は年間60回以上の農産物輸送があったが、その後は年を追うごとに運航回数が減少し、2007年度はついにゼロに。運営協議会も事業継続を困難として2008年に解散した。

 施設利用を促進するため、市はラジコン飛行機に目をつけた。1995年にアジアで初めてラジコン飛行機の世界選手権を開催し、約20万人を集めていた。市農政水産課は「ラジコン利用を積極的に許可していったところ、口コミで人気が高まり、利用が増えた」と振り返る。いまでは利用者の中に「ラジコンの聖地」と呼ぶ人もいる。

 しかし、年間の維持管理費はざっと500万円。施設利用料では7割程度しか埋められず、赤字が解消されたわけではない。しかも、運用開始から四半世紀が過ぎ、老朽化に伴う維持費が今後膨らむ見通し。市職員の間ではイベント会場としての利用を模索する声もあるが、利用が増えたからといって手放しで喜んでいられないのが現実だ。

【次ページ】赤字でも残すべき資産なのか?

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