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2017年06月08日

自動運転に「経済的合理性」はあるか? ライドシェア・カーシェアとの関係はどうなる

いま自動車の交通事情は、事故・渋滞、駐車場不足など、さまざまな問題を抱えている。しかし、自動車は1日中、走行しているわけではない。逆に95%が停止している状況だ。大都市では駐車場もかなりのスペースを占めており、たとえばロサンゼルスでは、半分近い面積が駐車場で占められ、ドライバーは年間80時間もの渋滞に悩まされている状況だ。交通事故による死亡者も米国だけで年間3万人、全世界で100万人も出ている。このような社会的な課題を解決するために、世界で注目されているのが、新しい「自動運転技術」と「ライドシェアリング」「カーシェアリング」だ。その現状とこれからについて、エヌビディア、Cabify、Careem、Getaroundのキープレイヤーが討論した。

執筆:フリーライター 井上 猛雄

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クルマは1日に15億時間も使われて「いない」

(©Jakub Jirsák - Fotolia)


未来を変えるライドシェア、カーシェア、自動運転の現状の取り組み

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Cabify 創業者 兼 CEO
フアン・デ・アントニオ氏

 ラテンアメリカや、スペイン、ポルトガルでライドシェアリングを展開するCabify。同社の創業者兼CEOであるフアン・デ・アントニオ氏は、Cabifyの特徴を次のように語る。

「都市交通を改善すべく、個人ドライバーが安い料金で質の高いサービスを提供できる仕組みを提供中です。Cabifyでは、最も人気のある個人ドライバーによる“Cabify Lite”から、EV、乗客8人乗り乗用車、タクシーのほか、ヘリコプターなどの移動手段も用意しています」(アントニオ氏)

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Careem CEO 兼 共同創業者
ムダシール・シェイハ氏

 ドバイを拠点にするCareemも、中近東でライドシェアリングを提供しているスタートアップだ。同社のサービスは、モロッコからパキスタンまで計7億人を抱える計12か国のエリア、60都市をカバーしている。共同創業者兼CEOのムダシール・シェイハ氏は、「中近東では人口の45%が携帯電話を持っているが、公共交通は未発達」と語る。

「クルマも少なく、移動手段がない。我々の配車サービスは、まさに交通インフラを作っているのと同じです。いま20万人のドライバーと800万人のユーザーがいる。ローカライゼーションに力を入れ、“Sheep On Demand”(注1)というサービスも始めました」(シェイハ氏)。

注1:ムスリムは宗教的な祭事・儀式で羊を必要とするため、羊を運ぶサービスを提供

 Getaroundは、サンフランシスコを中心に展開するクルマのマーケットプレースだ。マイカーのオーナーがクルマを利用しないときに、他人に貸出して収入を得られる仕組みとしてカーシェアリングを提供。米国12都市でサービスが始まっているが、日本には進出していない。

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Getaround 創業者 兼 CEO
サム・ゼイド氏

 同社のサム・ゼイド氏は「1日に15億時間もクルマが使われていない」と説明する。

「車両はネットワークにコネクテッドされ、インテリジェント化が進んでおり、所有ではなくて、共有したり、貸し出せるようになりました。我々のサービスは“Getaround Connect”というデバイスをクルマに載せ、インターネットと接続するだけで位置情報を取得し、クルマの予約が行えます。スマートフォンがキーとなり、車両にアクセスできます」(ゼイド氏)

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エヌビディア 日本代表 兼 米国本社副社長
大崎 真孝氏

 自動運転を推進する立場からディスカッションに参加したのが、エヌビディア(NVIDIA)の大崎 真孝氏だ。同社はコンピューターのグラフィックス性能を司るGPUの開発・販売で有名だが、いまやAIコンピューティングカンパニーとしての存在感を急速に増している。大崎氏は「我々の従業員1万名のうち9000人がエンジニアで、その半分以上がソフトウェアを担当しています」とその現状を明かす。

「自動運転やIoT、ロボット、スマートカメラなどに専用チップが採用されています。教育面にも注力し、GPUの開発環境・CUDAがコンピュータサイエンスの世界で広く使われています。特にディープラーニングは、スパコンとエッジ側の連携が必要ですが、我々のチップは同一アーキテクチャーで構成できるという特徴があります」(大崎氏)

交通インフラが未発達な新興国で期待

 モデレータを務めたソースネクスト 代表取締役社長の松田 憲幸氏は、ライドシェアリングのメリットについて各氏に訊ねた。

 まずCabifyのアントニオ氏は「ラテンアメリカはほとんどの国が新興市場で、中近東と状況が似ている」と語る。

「利用者は中産階級が多いですが、公共交通手段は発達しておらず、クルマを持つしか選択肢がなかった。そこで我々は、ユーザーとしての利用だけでなく、ドライバーとしてもビジネスが行えるようにサービスを提供しています」(アントニオ氏)

 Careemのシェイハ氏も同様のメリットを指摘する。中近東の場合、文化的に保守的な面があり、女性がクルマを運転できない国もある。

「そこで我々のサービスを使えば、ショッピングでも、クルマをすぐ手配できるようになり、地域の状況が大きく変わる。ドライバーにも収入が入り、交通手段だけでなく、生活の改善にも貢献できます」(シェイハ氏)

 続いて松田氏は、Getaroundのゼイド氏に自社のサービスを思いついた契機について訊ねた。

 ゼイド氏は、人工知能の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏とXプライズ財団のCEO、ピーター・ディアマンティス氏が共同創設したシンギュラリティ大学で、グーグル創業者のラリー・ペイジ氏からチャレンジを受けたという。そこで未来のサービスとして、自律運転について共同創業者と検討。将来的にインテリジェント化されたクルマでシェアリングが主流になる時代が訪れると予測したそうだ。

「とはいえサービスにあたり、困難もありました。まず車載用デバイスを開発しなければならなかった。また借りた車で事故を起こすと、保険料金が跳ね上がるため、新しい保険も求められました。いまはクルマの予約から返却まで完全カバーする保険があり、オーナーの権利も守られています。

 人々の理解も重要でした。米国人はマイカーを持ちたがりますが、クルマを使わず無駄にしていた。彼らに協力してもらう必要がありました。我々はテスラモーターズのディーラーもやっていますが、1日に約100ドルで借りることも可能です」(ゼイド氏)

【次ページ】自動運転に経済的合理性はあるか? 新興国と先進国の温度差

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