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2017年09月10日

増え続ける「買い物難民」、地方だけでなく大都市圏でも深刻化

人口減少や高齢化社会の進行により、自宅近くで買い物できない「買い物難民」が増えている。以前から問題化していた過疎地にとどまらず、地方都市や大都市圏でも買い物に苦労する人が見られるようになってきた。茨城キリスト教大文学部の岩間信之教授(都市地理学)は「店舗までの距離の長短だけでなく、地域住民間の相互扶助の高低も買い物難民の発生に影響している」とみている。自治体は公設民営店舗の開設や移動販売の展開で急場をしのごうとする一方、総務省は国と地方自治体が積極的に対策を講じるよう求める通知を関係省庁に送った。

執筆:政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

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和歌山県田辺市の中心部で営業する浅尾さんの移動販売車。上屋敷町会館前に到着と同時に高齢者らが買い物に集まってきた

(写真:筆者撮影)


地方都市の中心部で買い物難民が発生

 和歌山県南部の中心都市・田辺市。市役所から歩いてすぐの上屋敷町会館前に軽快な音楽を鳴らして軽トラックがやってくる。山間の過疎地で30年以上、移動販売をしている浅尾篤さん(69)=同市秋津町=の移動販売車だ。

 移動販売車の到着前から待ち構えていた高齢者ら約10人がどっと群がってきた。「キュウリの浅漬けはあるの」「ダイコンは半分でいい」。ほとんどが常連客らしく、次々に注文を飛ばしながら、食料品を買い求めていく。

 浅尾さんはこのあと、市内2カ所を回ったが、場所はいずれも市役所周辺の市中心部。人口7万人を超す地方都市の真ん中で移動販売が人気を集めるのは、高齢化が急速に進んでいるからだ。

 全人口に占める65歳以上の高齢者の割合を示す高齢化率は、市全体で30%。だが、上屋敷町では既に40%を超えている。2013、14年にスーパー2店が撤退すると、車を運転できない高齢者が買い物に困るようになった。

 そこで、市の依頼を受けた浅尾さんが、週に2回移動販売に訪れている。買い物に来た主婦は「近くにスーパーがないので、本当に助かる」と喜んでいた。田辺市自治振興課も「独居の高齢者にとってなくてはならない存在」と目を細めている。

経産省推計では2014年現在で全国に700万人

 買い物難民は食料品など日常の買い物が困難な人を指す。明確な定義はないが、一般に最寄りの食料品店まで500メートル以上離れ、車の運転免許を持たない人とされる。

 総務省がまとめた2014年10月の60歳以上の人口4,198万人と、2010年度の内閣府高齢者意識調査で「日常の買い物が不便」と答えた人の割合17.1%を基に、経済産業省が2014年に推計したところ、全国に700万人いることが分かった。

 2010年の推計では600万人だっただけに、4年間で100万人増えた計算になる。その後も高齢化の進行が続いているため、実数はもっと多いとの見方も出ている。

 国土交通省は2014年に公表した「国土のグランドデザイン2050」で、食料品小売業が80%以上の確立で存在できる自治体の規模を三大都市圏以外で500人と推定している。過疎地は今後も急激な人口減少が続く見通しで、基準に合致する地域がさらに増えそうだ。

 大都市圏でも郊外のニュータウンで急激な人口減少が見られるようになった。若い世代の都心流出などから、小売店の撤退が相次いでいる。もはや買い物難民は過疎地限定の話ではない。

大都市圏のニュータウンにも移動販売車が登場

 こうした苦境をしのぐため、自治体が移動販売を後押しする例が全国で急増している。鳥取県は日本財団と共同で2016年、過疎が進む江府、日野、日南、伯耆の4町に移動販売車を配備した。

 移動販売業者は零細が多く、高齢化が進んでいる。過疎地での販売は手間がかかって利益が薄いうえ、車両確保は改造費の負担が大きい。移動販売継続のため、自治体側が車を用意したわけだ。

 自治体が移動販売を実施する例も出ている。広島県江田島市は2015年、兵庫県淡路市は2016年から社会福祉協議会が移動販売車の運行を始めた。民間の移動販売がない過疎集落を回り、買い物難民の暮らしを支えている。

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(クリックで拡大)

行政と連携した移動販売の主な事例


 大都市圏では、東京都の多摩ニュータウンや大阪府の泉北ニュータウンで移動販売車が活躍している。大阪府住宅供給公社は「移動販売は住民に好評。今後も継続してほしい」と語る。

【次ページ】国を挙げた支援体制の確立が早急に必要だが…

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