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  • 2018/02/21 掲載

スマートモビリティで何が起きる? 自動運転車やカーシェアが都市を変えるプロセスとは

フロスト&サリバン連載 ~ICTとの融合で特定の産業がどう変化するか~

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19世紀末に登場したガソリンエンジンを備えた自動車は、20世紀初頭に大衆化し、人々の暮らしを劇的に変化させた。いま、自動車産業は大きな転換期を迎えている。電気自動車が普及の兆しを見せ、人工知能(AI)を搭載した自動車が登場し、自動運転の技術競争も激化している。さらに、自動運転技術はカーシェアリングと結びつき、今後の都市の土地活用を大きく変えようとしている。自動車の各種技術はこれからどう進化するのか。注目を集めている自動車関連技術の概要と動向を見ながら「スマートモビリティ」がもたらす未来を考える。

執筆:フロスト&サリバン ジャパン 森本 尚 / 伊藤 祐

執筆アシスタント:フロスト&サリバン ジャパン 吉川 仁

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スマートモビリティとは何か? ビジネスにどう影響するのか?
(© zapp2photo – Fotolia)


電気自動車の普及拡大を支えるモノ

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 スマートモビリティとは、人の移動を効率化する新時代のテクノロジーの総称である。本記事では、スマートモビリティを電動自動車、AIを用いたコネクテッドカー、自動運転の観点から俯瞰し、かつそれがモビリティのみならず土地活用についても大きな変革をもたらす可能性について概説する。

 自動車の電動化は長年、環境問題解決の大きな足掛かりとしてかねてから注目されてきたが、近年世界的にみても大きな動きがある。英と仏政府が、ガソリン車とディーゼル車の販売を2040年以降に禁止すると発表したことは記憶に新しいであろう。

 実際、2013年頃から世界的に電気自動車の販売台数は急激に増加しており、ここ3年間で実に4倍近くまで増加した 。この傾向が続くと、2025年にその数は(ハイブリッド車も含めると)2000万台ほどにまで膨れ上がる。日本では、ここ最近は販売台数に大きな変化はないが、中国での電気自動車市場の成長は非常に顕著であり、全世界で販売されている電気自動車のうち半分近くが中国で販売されるなど、市場を大きくリードしている。

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電気自動車の世界市場の予測 (2015-2025)。2025年にはハイブリッド車を含めた電気自動車の販売台数は2000万台近くまで増加し、全自動車販売台数のうち16%を占めるとみられる。
(出典:フロスト&サリバン)


 電気自動車の普及が現実的になり、注目を集めているものがある。これまで普及の大きな障壁となっていたバッテリーだ。ここ5年でリチウムイオンバッテリーの調達価格は約50%減少したとされており、2020年には2010年時点の価格の1/5まで下がると予想されている。

 バッテリーの容量と充電速度も改良が進められている。たとえば東芝は、6分の充電で航続距離320kmを可能にするバッテリー(SCiB)を発表しており、トヨタ自動車も充電容量や充電時間で従来型電池に対し大きなアドバンテージを持つ全固体リチウムイオン電池の開発を急いでいる。

 これらは電気自動車普及の重要な突破口として期待されている。また、現在主流の従来型リチウムイオン電池の3倍近くの容量性能を持つリチウム硫黄電池や空気亜鉛電池の研究開発も始まっており、2025年頃には実用化される可能性がある。

AI搭載のコネクテッドカーに各社が着手

 「コネクテッドカー」は、インターネットと常時接続し、情報のやり取りが可能な自動車を指す。

 近年多くのメーカーがコネクテッドカーの開発に力を入れたり、アップルやLINEをはじめとするIT企業との提携を進めたりしている。フロスト&サリバンの調査では、コネクテッドカーの販売台数はここ2年で約1.5倍増加し、今後もさらなる普及が期待される。

 コネクテッドカーにはさまざまな機能が含まれるが、身近なものとしてはスマートスピーカーの搭載が挙げられる。Google HomeやAmazon Echoをはじめとする、AIを搭載した家庭用スマートスピーカーが登場してきているが、その機能を自動車にも搭載しようとする動きがある。

 2017年、トヨタはLINEのスマートスピーカー「Clova」をトヨタのサービス「SDL」と連携させ、運転中のLINEのメッセージの読み上げや、音声認識によるカーナビ操作などを可能にする方針を打ち出した。

 また、同社は交差点での事故削減を目指し、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems、ITS:人と道路と自動車の間で情報の受発信を行い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境対策などの課題を解決するためのシステム)専用周波数を利用した車車間・路車間通信システム(ITS Connect)を既に実用化している。

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2015年、トヨタが車車間通信システムと路車間通信システムに対応した車の販売開始を発表。ITS専用周波数を利用した車車間通信の実用化は世界初
(出典:総務省


 ITS Connectは緊急車両の存在通知や先行車両との車間距離調整を行う。そのほかにも、自動車が赤信号に近づいたときの注意喚起などを実現する 。このように、自動車と人、自動車と自動車、自動車と道路が高度に結びついた、快適・安全・効率的な車社会が、コネクテッドカーによって実現される可能性がある。

【次ページ】カーシェアリングが土地活用を激変させる

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