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  • 2020/05/21 掲載

IR誘致・大阪都構想・広島空港民営化──コロナで自治体“大混乱”、あの事業は今

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新型コロナウイルスの感染拡大が地方自治体の政治・行政日程を混乱させている。緊急事態宣言は全国39県で解除されたものの、大阪府と大阪市が進めるカジノを含めた統合型リゾート(IR)構想が大阪・関西万博前の開業を断念したほか、大阪都構想の住民投票は予定通りの実施が危ぶまれている。第2波、第3波の感染が広がれば、公共事業の遅れなどさらに幅広い影響が出る可能性を否定できない。奈良県立大地域創造学部の下山朗教授(地方財政論)は「コロナ後の社会情勢は大きく変化しそう。自治体はこれを機に予定している事業の継続にこだわらず、再検討してみてもいいのではないか」と指摘する。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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新型コロナウイルスの感染拡大で大阪都構想の住民説明会が中止に追い込まれた大阪市役所。住民投票を予定通り11月に実施するか、先送りするか決まっていない
(写真:筆者撮影)

大阪のIR、万博前の開業を断念

 「土地の引き渡しから万博開始まで3年では、一部開業も難しい。万博とIRの相乗効果は期待できなくなった」。IR誘致スケジュールの延期を発表した大阪府の吉村洋文知事は、新型コロナの影響に渋い表情を見せた。

 大阪府・市は大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)に誘致を進めているIRを、同じ夢洲で2025年4~11月に開かれる大阪・関西万博前に開業させることを目指していた。万博開催とIR開業で関西経済を一気に活気づかせようと考えていたからだ。

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IRと万博用地になっている大阪市此花区の夢洲。大阪府と大阪市は万博前のIR開業を断念した
(写真:2018年12月筆者撮影)

 事業者募集には、米カジノ大手のMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同事業体が手を挙げ、4月に事業者の提案書類受付を締め切る予定だったが、そのさなかに新型コロナの感染が拡大した。

 大阪府・市は締め切りを7月に延ばすなど全体の手続きを後ろ倒しした。その結果、事業者への土地引き渡し予定が2021年秋ごろから2022年春ごろに。万博前の開業はもともと厳しいスケジュールだったが、日米の往復もままならない中、間に合わないと判断せざるを得なかった。

変更後の大阪IR誘致の日程
2020年7月 運営事業者応募受け付け締め切り
2020年9月ごろ 事業者決定
2022年春ごろ 土地の引き渡し
2025年 大阪・関西万博開催
2027年3月末まで IR開業
(出典:大阪府・市のIR推進局資料から筆者作成)

 新型コロナの感染拡大でIR事業者は大打撃を受けている。MGMは「日本への投資を継続し、IR実現に注力する」としているが、世界経済の混乱が続いているだけに、資金調達などへの支障発生を不安視する声もある。

 横浜市も6月に予定していたIR実施方針の公表を2カ月延期した。計画地は中区の横浜港・山下ふ頭。林文子市長が出席して市内全18区で開催予定の市民説明会は2月下旬、6区を残して中断したままだ。

 IRを誘致した自治体は事業者と共同で区域整備計画の認定を政府に申請しなければならない。政府の申請受付期間は2021年1~7月。今回の延期で横浜市はぎりぎりの作業時間しか残されないことになるが、林市長は記者会見で「最重要なことに専心すべきだ」と述べ、コロナ対策を優先させる考えを示した。


大阪都構想住民投票は予定通りの実施に黄信号

 大阪市を廃止して4つの特別区を設置する大阪都構想の住民投票は、予定通りに進められるかどうか不透明になっている。都構想の制度設計を議論する大阪府・市の法定協議会は、市民の意見を聞く出前協議会を市内で4回開く方針だったが、新型コロナで中止した。

 大阪府・市と大阪維新の会は6月までに法定協議会で協定書をまとめたうえ、9月の府議会と市議会で議決を得て11月1日に住民投票を実施するスケジュールを描いてきた。二重行政の排除を掲げる大阪維新の会にとって、僅差で否決された2015年以来、2度目の住民投票挑戦となる。

 出前協議会の代替策として専用ページで市民の意見を募集したほか、大阪維新の会などが意見を表明する動画をインターネット上に公開している。しかし、市民の関心は盛り上がりを欠いている。

 大阪維新の会代表の松井一郎大阪市長は7月の状況を見て、実施時期を最終判断する方針。大阪市役所で記者団の質問に答え「医療崩壊を起こす状況でないのであれば、民主主義の根幹である投票はやるべき。来年に延ばしてもリスクは残る」と述べたが、予定通りに実施できるかどうかは、まだ予断を許さない。

【次ページ】広島空港の民営化は3カ月後ろ倒し

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