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  • 2021/05/24 掲載

4年後あなたの仕事はこう奪われる 「AIネイティブ新卒」の恐るべき実力

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「AIに仕事を奪われる」とは、AI(人工知能)技術の進展・普及に伴いよく聞かれる言葉となりましたが、実は仕事を奪うのは「AI」だけではありません。意識せずともAIサービスが周囲にあり(AIネイティブ)、プログラミング教育、AI教育を受けてきた若手人材もまた、AIを使いこなし、あなたの仕事を奪う存在なのです。そのような若手を「AIネイティブKIDS」と呼び、著書『管理職はいらない』でAI時代に生き残れる管理職の条件を説いた野口竜司氏が、「AIネイティブKIDS」第一世代が職場にやってくる2025年をシミュレーションしました。

ZOZOテクノロジーズ VP of AI driven business 野口竜司

ZOZOテクノロジーズ VP of AI driven business 野口竜司

ZOZOテクノロジーズ VP of AI driven business 日本ディープラーニング協会 人材育成委員メンバー ZホールディングスのZOZOでさまざまなAIプロジェクトを推進するかたわら、大企業やスタートアップのAI顧問・アドバイザーやAI人材育成も実施。「ビジネスパーソンの総AI人材化」をめざし活動中。著書に『文系AI人材になる』(東洋経済新報社)など。

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「AIネイティブKIDS」が職場に入ったらどんなことが起こるのか?
(Photo/Getty Images)

もしも「AIネイティブKIDS」が職場にやってきたら?

 AI教育プログラムの認定の募集がスタートする2021年(注1)を日本における「AI教育元年」だとすると、各大学で差はありつつも、AI教育を受けたAIネイティブKIDSが大学を卒業して社会に出るのは最短で2025年。あと数年で、あなたの職場にもやってきます。

(注1)内閣府・文部科学省・経済産業省の3府省が連携し、各大学・高等専門学校における基礎的なAIリテラシー教育の取り組みを奨励する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」。令和3年3月17日~令和3年5月14日の期間で募集が行われた。

 そのAIネイティブKIDSは、あなたの職場にどんな“化学反応”をもたらすのでしょうか。また、「オールドタイプ」の社員との間にどんなコンフリクトを生むのでしょうか。イメージを持っていただくために、「AIネイティブKIDS」が新入社員として配属された、ある老舗アパレルメーカーX社の架空のストーリーを見てみましょう。

〈主な登場人物〉
  • ・A課長
    39歳。X社の企画課長で、社内では「企画部のエース」と目されている。かつて、機能性スーツでヒットを生んだ成功体験が居酒屋での鉄板の自慢話。

  • ・B係長
    45歳。少し出世から遠ざかってしまったが、真面目な性格でハードワークもいとわない姿勢はA課長にとって頼もしい存在。Excelが得意。

  • ・C君
    23歳。国の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」認定校の大学を卒業し、企画課に配属されたばかりの新入社員。

シーン1:「AI部下」を従えた新入社員

〈Scene1〉
「議事録を作成しましたので、こちらに貼っておきます。ご確認ください」

 午前中の会議の議事録がSlackでC君から送られてきた。まだ時計の針が11時を回ったばかりだ。いくら何でも早すぎる。疑いの目でファイルを開いてみたが、要点が押さえられていて大きなツッコミどころは見当たらない。

「ありがとう。仕事が速いね」

 A課長が返信すると、間髪入れずにメッセージが返ってきた。

「議事録作成AIを使ったんです。大学のゼミでは普通に使って慣れていましたので」
 AIネイティブKIDSは、大学でAIリテラシー教育を受けているほか、授業やゼミなどでもさまざまなAIツールを使いこなすことに慣れています。それはあたかも、自身の中に「AI部下」を従えているようなものです。この、AIを使いこなしている様子に、「オールドタイプ」の社員はカルチャーショックを受けます。

 一方のAIネイティブKIDSも、逆の意味でカルチャーショックを受けます。AIを使わずに時間と労力をかけて仕事を進めている職場や上司に対して、強烈な違和感を持つようになります。

画像
これまでの自分の仕事の進め方が否定されるかもしれない
(Photo/Getty Images)

シーン2:消費者の肌感覚を熟知したAIネイティブKIDS

〈Scene2〉
「このECサイト、ぜんぜんイケてませんね。これではターゲットに刺さりませんよ」

 ある日のオンラインミーティング。B係長が中心になって試作を重ねてきた新しいECサイトのデモ画面を見て、感想を求められたC君が言い放った。画面越しのB係長の表情が少し曇る。

 「対案を出させてください」と言った翌日には、C君から企画の対案がSlackで送られてきた。A課長はB係長の提案を本命としつつ、C君の案も“予備案”として企画会議に出してみることにした。

 会議の結果、“予備案”だったはずのC君の企画が通ってしまい、ECサイトの計画は大きな変更を余儀なくされることとなった。チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)として社長が自ら招聘したMさんの「こっちのサブ案のほうが、AI機能がうまく組み込まれていてユーザー体験も優れています。数段いいじゃないですか」との鶴の一声で決定されたのだった。

「A課長、どうして私の提案で押してくれなかったんですか!事業パートナーのY社も徹夜して、今日の企画会議になんとか間に合わせてくれたんですよ。Y社にどうやって説明しろと言うんですか?」

 前面に立ってY社との交渉・調整をやり遂げてくれたB係長は激高してA課長に詰め寄った。社歴では先輩にあたるB係長に、A課長も返す言葉が見つからない。
 消費者としても「AIを当たり前に使いこなす」感覚を備えているAIネイティブKIDSは、「アルゴられていない」商品やサービスに対して不快感を覚えます(注2)。消費者層としてもこれからの中枢を担っていく彼ら/彼女らの支持を得られない商品やサービスは、自然と市場から淘汰されていきます。

(注2)「アルゴられる」:「文脈やコンテンツに合った推薦(レコメンド)」や「一人一人への最適化(パーソナライゼーション)」といったAIのアルゴリズムの恩恵を受けること。

 したがって、社内で商品やサービスの企画・開発を進めるにあたっても、「アルゴられる」感覚に敏感なAIネイティブKIDSの案がAI時代にフィットし採用されやすいのは、当然の結果と言えるのです。

【次ページ】衝突、そして“下剋上”は突然に

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