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  • 2023/07/13 掲載

プロダクト情報管理(PIM)とは何か?基礎から導入、PLMとの違いまでガートナーが解説

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プロダクト情報管理(PIM=Product Information Management:商品情報管理)とは、販売チャネルを通じたプロダクトのマーケティングと販売のために必要なすべての情報を管理するプロセスのこと。従来PIMは小売業やB2Cブランド向けのソリューションであると考えられてきたが、現在は製造業でもDXの中核技術としてPIMソリューションを採用するケースが増えてきた。PIMの基礎から導入方法について、ガートナーのシニア プリンシパル, アナリスト、ヘレン・グリムスター氏が解説する。

執筆:畑邊 康浩

執筆:畑邊 康浩

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プロダクト(製品)情報のライフサイクルを支えるPIMとは何か?
(出典:Gartner(2023年4月))

データ管理は「目的に合わせる」から「ギャップを埋める」へ

 データは完全なものではなく、常に「部分」として存在する。そのため、たとえ大きなビジネスプロセスが存在していても、データアプリケーション構築の仕方は「分裂的」だ。すべてのデータアプリケーションはデータを部分に分割し、そのうちの一部分だけ取り込むよう設計されている。

 しかし、アナリティクスの段階では「分裂」から「融合」へ移行する。分割され、失われたデータ間の関係性を復元するということだ。ビジネスプロセスの中のデータは欠落している部分が多くあるため、いかにその穴を埋めるかがアナリティクスの鍵となる。

 データには、いわゆる「もつれ(エンタングル)」が存在する。「もつれ」とは量子力学の用語で、2つの要素が共鳴すると、その2つがどんなに離れても共鳴が維持される状態のこと。ビジネスプロセスにも「もつれ」は存在しており、どんなにまばらなデータや削除されたデータでも、「もつれ」を頼りに復元することができる。

 「ただ、それをするための方法を考えなければなりません」とグリムスター氏は話す。

PIMとは「商品を買ってもらう」すべての情報を管理する

 PIMとは、販売チャネルを通じたプロダクトのマーケティングと販売のために必要なすべての情報を管理するプロセスのこと。プロダクトの説明文のほかに、デジタルアセット、規格など、商品を買ってもらうために必要な情報すべてを含み、その情報は常に正確かつ精度が高くなければならない。

 グリムスター氏は、「PIMがない世界はカオス」だと表現する。PIMがなければ、製品情報は無秩序にスプレッドシートに保存され、一部の情報を他のシステムにコピー&ペーストすることで製品情報に誤りが生じる可能性がある。

 「たとえば、寸法を間違えてしまうと送料が余計にかかったり、商品が販売店や倉庫に入り切らなかったり、価格設定の問題が発生したりします。あるいは、小数点の位置を間違えて製品の価格を低く設定してしまい、収益を圧迫することもあります」と、グリムスター氏は起こりうる問題の例を挙げた。

 ほかにも、プロダクト情報が企業内のドライブで共有されていて情報を最新の状態に保てなかったり、データがローカルに保存されて他のスタッフがそれにアクセスできなかったりすることもある。そうなると、あらゆる情報が属人化し、サイズやプロダクトの説明に一貫性がなくなってしまう。

 PIMソリューションは、そうした非効率的で拡張性のない手作業によるプロセスに取って代わるものだ。

 プロダクト情報は組織全体を流通する。情報の出どころはプロダクトライフサイクル管理(PLM=Product Lifecycle Management)のものもあれば、サプライヤーのマスタデータ由来だったり、エンタープライズのマスタデータ管理(MDM=Master Data Management)から来るものだったり、さまざまだ。

 そしてそれらの情報は、PIMソリューションを通じて組織内のさまざまな人々をサポートする。コマースチームやマーケティングチーム、クリエイティブチーム、営業、製造、法務、財務、コールセンターなど、プロダクトに関する情報を知る必要があるすべての人が対象だ。

 現在、PIMソリューションは、デジタルアセットマネジメント(DAM)やプロダクトデータシンジケーション(PDS)といった既存の機能との融合が進んでいる。それはPXMと呼ばれる新しい世代のPIMソリューションとなり、1つのソリューションで複数のチャネルに情報を提供できるようになりつつある。

PIMを導入するメリットとは?「情報の一貫性」がもたらすもの

 PIMを導入しない場合、どのような問題が生ずるのか。

 「最も大きな問題は、優れた顧客サービスを提供できなくなることでしょう。そして、プロダクト情報の一貫性・統合性がなくなることです」とグリムスター氏は話す。

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ガートナー
シニア プリンシパル, アナリスト
ヘレン・グリムスター氏

 そうならないために、複数のソースからデータを集中的に収集してただ1つのソースに統合することが必要になる。PIMがあれば、メールやファイル共有をせずとも社内外の人が必要な情報にアクセスできるようになり、データの共有はシンプルになる。データ共有や情報の出力の手間が省けるため、製品を早く販売できるようにもなる。

 また、最近の顧客は、何かを購入する際、製品についてできるだけ多くの情報を得たいと考えており、複数の異なるタッチポイントで商品をリサーチすることが分かっている。たとえば商品イメージや仕様、ブランドが表現していることなどだ。それらの情報もPIMで一元化すれば、一貫した製品情報を提供でき、見込み客を顧客に転換することが可能になる。

 「優れたプロダクト情報は、デジタルビジネスの成功にとって不可欠です。組織の多くの領域に改善をもたらすための基礎となるものだと考えるべきです」とグリムスター氏はPIMの重要性を説いた。 【次ページ】PIM戦略の効果を最大限に引き出すための5つのポイント

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