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  • 2023/12/27 掲載

キリン・サントリー・アサヒの戦略を徹底比較、ノンアルビール市場の「最強」は誰か?

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少子高齢化や若者のアルコール離れが叫ばれ、ビール市場の衰退には歯止めがかからぬ中、現在も成長を遂げているのが「ノンアルコールビール(以下、ノンアルビール)市場」だ。かつてはビールの代替品でしかなかったノンアルビールだが、登場してから数々の進化を遂げ、今ではアルコールを楽しむ消費者以外にも広がりつつある。そんな“成長市場”では、これまでキリン、サントリー、アサヒの激闘が繰り広げられてきた。そして今、ノンアルビール市場の王者に立つのはどの企業なのか。勝敗を分けるポイントは何か。

執筆:経営コンサルタント 清水大地

執筆:経営コンサルタント 清水大地

MIRARGO Director
野村総合研究所、アクセンチュアなど、14年以上に及ぶコンサルティングと実行・執行支援の経験を基に、現在はスタートアップの経営支援を中心に、日本社会の更なる飛躍を目指している。共著に「時間消費で勝つ」(日本経済新聞社)、「経営コンサルタントが読み解く 流通業の「決算書」」(商業界)など

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なぜ、「オールフリー」や「ドライゼロ」は、ノンアルビール市場の最初の成功者「キリンフリー」を追い抜くことができたのだろうか? 後発組サントリー、アサヒの華麗な逆転劇を解説する
(Photo:Ned Snowman / Shutterstock.com)

ノンアルビールの苦難の時代

 ここ数年、少子高齢化や若者のアルコール離れもあり、アルコール市場全体は縮小傾向にある。中でも、チューハイやビールに類似する低価格の酒類(新ジャンル)の登場などもあり、年々ビール人気は減少傾向にある。

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ビール市場の推移

 その一方で、右肩上がりに成長を遂げているのが、ノンアルビール市場である。

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右肩上がりに成長しているノンアルコール飲料市場

 成長期待が高く注目のノンアルビールだが、当初のウケはイマイチであった。日本の酒税法において、「アルコール分が1度未満の飲料」はノンアルビールの“炭酸飲料”と分類されるが、微量のアルコールがある以上、体質・体調によってはアルコールを感じてしまう。飲酒運転になる可能性もゼロではなく、極めてグレーな存在であり、厳密には“ノンアルコール”ではなかったのである。

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2005~2008年の期間、ノンアルビールは低迷が続く
(出典:食品産業新聞社Webニュース「ノンアルビールの出荷、”08年比15倍” 背景に技術向上、各社は販売拡大を計画(酒類飲料日報 2018年3月15日付)」の「ノンアルビールの出荷推移(酒類飲料日報推定)」)

 さらに、消費者からは味に対する不満も多く、「ビールではない」とまで言われる始末であった。

 つまり旧来のノンアルビールは、“ノンアルコール”と言いながらアルコールが含まれ、“ビール”と言いながら味はビールとかけ離れる、といった致命的な「不」を抱えていたのである。その結果、ノンアルビール市場は、登場してから数年間、低迷を続けていたのである。

市場開拓に成功した初代王者キリンの戦略

 こうした市場に溢れる“グレーさ”は2007年、ターニングポイントを迎える。飲酒運転による交通事故をきっかけに、道路交通法が改正され、飲酒運転への厳罰化が施行されたのである。

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キリンは2009年にアルコール0.00%の「キリンフリー」を発売し、味・アルコール度数において「不」を抱える旧来のノンアルコールビールからのリプレイスに成功した
(写真:毎日新聞社/アフロ)
 それまで、ビールメーカーがノンアルビールに積極的でなかった要因の1つに、ビール市場へのカニバリ(共食い)が指摘されている。つまり、ノンアルビールが売れると、ビールが売れなくなることを恐れたがゆえに、大きな投資をかけてこなかったのだ。

 しかし、法改正が進めば、“グレーさ”はより“黒”に近づき、攻めるか、守るか、意思決定が求められる。

 こうした状況を機会ととらえたのがキリンであった。本丸のビールでは、1998年にアサヒスーパードライに首位を奪われ、その後、その差は埋めがたいところにまで広がっていた。さらに、2001年には「新キリン宣言」にてアサヒへの敗北を認め、チャレンジャーとしての立ち位置を設定し、「お客様本位」、「品質本位」の追求を社内に宣言していた。こうした危機意識がカニバリを恐れるビールメーカーの中で唯一、リスクを取る行動への後押しとなったと言える。

 2009年4月には世界初となるアルコール0.00%の「キリンフリー」を発売し、味・アルコール度で「不」を抱える旧来のノンアルビールからのリプレイスに成功した。さらにアルコール度・味に関する「不」で押さえつけられていた潜在ニーズはキリンフリーにより解放され、市場は一気に拡大をはじめた。ここにノンアルビール市場は開花期を迎えるのである。

 キリンフリーが切り開いたノンアルビール市場を前に、大手ビールメーカー各社はすぐに対抗策を講じた。「キリンフリー」の販売から半年もしない2009年9月に、サントリーは「ファインゼロ」を、アサヒは「ポイントゼロ」を発売したものの、キリンフリーの牙城を崩すには至らなかった。

 しかしその後、「キリンフリー」は、サントリーに追い抜かれることになる。なぜ、サントリーはキリンを追い抜くことができたのだろうか。ここからは、サントリーのマーケティングを駆使した華麗な逆転劇を解説する。 【次ページ】サントリーの華麗な逆転劇、驚異のマーケティング戦略

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