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- 2024/04/26 掲載
セブン&アイから独立?「新・イトーヨーカ堂」が評判と違って「意外と強敵」な理由
みずほ銀行の中小企業融資担当を経て、同行産業調査部にてアナリストとして産業動向分析に長年従事。分野は食品、流通業界。主な著作物に「図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書」(技術評論社)、「50年に一度の大転換期を迎えるスーパーマーケット業界」、「業態盛衰の歴史が示唆するこれからの小売の方向性」(中小企業診断士)などがある。
セブン&アイから分離? 単独経営に向かう「イトーヨーカ堂」
ついに、イトーヨーカ堂がセブン&アイから分離されることになった。具体的には、セブン&アイの2024年2月期決算説明会で、下記の点を前提にスーパーストア事業の株式公開化に向けた検討を開始すると発表している。- (1)SST(スーパーストア)事業の一部持分の継続保持
- (2)CVS(コンビニエンスストア)事業とSST事業の食品開発領域における協働体制の維持
これが実現すれば、スーパーストア事業については、「独自の財務規律の下で成長戦略を強化する体制へ移行させる」ことになる(≒実質独自経営)、という。また、スーパーストア事業を展開する傘下企業をセブン&アイの連結対象とすることにもこだわらず、持分法適用会社のイメージであることも決算発表会で発言された。
ざっくり整理すると、一定の資本業務提携関係は保ちつつも、セブン&アイの経営からは切り離す、ということであり、特定の企業への売却ではないが、資本市場の株主に「売却」されるということである。
それでも投資家は「イトーヨーカ堂」に期待しない理由
この発表に対して、周囲の反応は冷ややかであり、株式市場でも好感されたとは言い難い。「本当に上場が可能なのか」や「この発表はパーフォーマンスに過ぎない」といった声も聞かれ、セブン&アイの経営から切り離すという方向性をチラ見せし、再建途上のイトーヨーカ堂に対する批判をかわそうとしている、といった印象が強いのであろう。たしかに、イトーヨーカ堂は北海道や東北からの撤退のみならず、首都圏においての閉店などの真っ最中であり、黒字回復も今期の予定でしかない状況であり、普通に考えて、この事業が上場できそうにはとても思えないのだろう。
ほとんどの関係者が懐疑的になる、この「スーパーストア事業上場&独立のプラン」なのであるが、筆者個人としてはそれほど悪い話でもないと思っている。このスーパーストア事業は巨大グローバルコンビニ「セブン&アイ」にとっては、明らかなお荷物ではあるが、ほかの目線を捨て1つの「食品スーパー」として評価してみると、実はそこまで酷い会社でもないのだ。 【次ページ】業界首位も狙える?評判と違う「イトーヨーカ堂」の実力
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