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  • 2007/03/19 掲載

【企業経営で着目したい4つの時代】仕組み革新の時代 / 法政大嶋口教授(3/3)

【ビジネスインパクトvol.10】個別要素の競争、シェア争いからの脱却

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─顧客満足という意味では、顧客の課題を解決するというテーマも重要になると思われますが。

嶋口●
それが3つ目の性格です。つまり、仕組みの中核には明確な事業コンセプトがなければいけない。これは革新的な定義と密接に関係しますが、この事業コンセプトとは「事業がユニークに満たすニーズ」のことです。ユニークというのは、差別化されている独自性を意味しています。ビジネスの世界でコンセプトとは、すべからくニーズを指します。たとえば化粧品のコンセプトは化粧品が満たすニーズですから、「美しくする」ことであり、「希望をつくる」ことです。それを、どれだけユニークに達成するかということが重要なわけです。薬ならば「病からの回復」や「健康の維持」ということになります。

仕組み革新のプロセス
(図2)仕組み革新のプロセス
 ベニハナの場合であれば、食事が作られるプロセスをエンターテインメント化したことがコンセプトになります。
 コカ・コーラもそうです。1960年代に、彼らは改めて消費者ニーズを調査しました。成長が鈍化してきていたからです。そこでわかったことは、消費者サイドに立って見たコカ・コーラのコンセプトは、その味わいや清涼感以上に、「喉がかわいたときに、手を伸ばせばそこにある」という手軽さだったのです。そこで彼らは「手の届く範囲にあるリフレッシュメント」を新たな事業コンセプトにしました。そして、ありとあらゆる場所に製品を置きまくったのです。商品戦略ではなく、流通戦略を柱としたわけです。


─そして最後に仕組みを作り上げる?

嶋口●
そうなります。つまりどういうことかと言うと、コンセプトに従って、ヒト、モノ、カネ、情報、ノウハウという経営資源を統合する、整合性を持って最適化するということです。そして最後の最後、5つ目に収益を上げる。収益はもちろん重要なのですが、利益を上げることをまず考えるのではなく、十分な千客万来の仕組みを作って、経営資源を最適化することで、収益に落とし込んでいく。最初から収益を考えてしまうと、効率化に走る。そうなると、千客万来の仕組みは作れなくなります。ただ、仕組み自体の中に、うまく利益の最適性を担保する要因を入れ込んでおくことが必要になります。

 ベニハナの例でいえば、素材、材料の絞込みです。そして仕入れをうまくし、最適在庫を心がける。飲み物などにしても、エンターテインメント空間ですから、普通よりも高く値付けすることができる。そこら辺にビジネスとしてのミソがある。

 整理すれば、まず事業の革新的な定義があって、千客万来の仕組みを作る。最初から利益を狙うのではなく、お客様を創造して維持できる仕組みを作り上げる。そのためには、コンセプトというものが必ず中核になければいけない。そのコンセプトは、「ユニークに満たすニーズ」でなければいけない。そのコンセプトに従って、首尾一貫した仕組みを作り上げ、経営資源をうまくあてはめていく。集中と選択です。足りないものがあれば、提携なども検討する。ただ最後に、その仕組みはちゃんと収益モデルに落とし込めなければいけない。入口に顧客がいて、出口に利益があるわけです。


─ 一般にビジネスモデルは、儲かるモデルという印象があると言いましたが、これは多分、利益を先に考えるからなのでしょうね。なぜかと言うと、ビジネスモデルという言葉が、IT 関連などでベンチャー企業がベンチャーキャピタルに投資をしてもらうためにプレゼンするものというイメージが強いからだと思います。

嶋口●
なるほど、私たちがアカデミックに考える場合とは捉え方が異なるのでしょうね。仕組み競争というのは、本来は決して目新しい話ではない。ただ、多くの場合、目先の競争に終始してしまう。だから個別要素での競争をする。高度成長期はそれでもよかったのでしょうが、今はだめです。仕組み全体で顧客と向き合わなければならない。そうでなければ恋愛競争には勝てないのです。

 サービス業の場合は、それが端的に表れます。ディズニーランドにしても、リッツ・カールトンにしてもそうですよね。仕組みの勝負だから真似がしにくい。仮にリッツ・カールトンのホテルマンの挨拶の仕方だけ真似しても、リッツにはなれない。

 もともとビジネスモデルは多義的な言葉です。マーケティング戦略の定義も同じです。人によっては確かに、儲ける仕組み、あるいは儲かる仕組みづくりだと言いますが、そうではないと私は思う。マーケティングとは、売れる仕組みづくりなのです。だから、千客万来の仕組みづくりが重要になる。


─ 門前市をなして、初めて儲けることもできる。初めから儲けようとしてしまっては、門前は閑散としかねないということですね。

嶋口●
そう思います。日本マーケティング協会が昨年行った調査においても、優秀な企業は、顧客満足による優位性をビジネス戦略の中心に据えていました。それに比べて、あまり業績のよくない企業の場合は、相変わらずシェア争いを戦略の中心にしていました。時代の変化に、早く気づくべきだと思います。

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