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  • 2010/12/06 掲載

【連載】ザ・コンサルティングノウハウ(19):ノウハウマネジメント・セミナー

新しいコンサルティングノウハウを生み出す

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社内コンサルタントの育成を目指す企業が増えている。その狙いは、経営に資するIT戦略の策定や、コンサルティング営業による勝率・利益率の向上、グローバルグループ会社に対する本社支援力の強化などさまざまである。しかし多くの企業では、コンサルタントの育成はうまく進んでいない。この理由は、コンサルタントが、分析技法や方法論などの技術修得によって育成されるという誤解にある。コンサルタント育成に重要なのは、技術ではなくノウハウである。この連載では、コンサルティング会社の実態をもとにしたストーリー形式で、コンサルティングノウハウの存在とパワーを示す。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載

ノウハウマネジメント・セミナー

 システム子会社B社のビジネス・モデル仮説検証のための調査が終了し、目指すべきビジネス・モデルが確定した。確定したビジネス・モデルは、役員が合宿によって作り上げた仮説を次の点で改定したものだった。

 1つは「安易に、来る仕事を受注しない」ことである。現在外販事業には、大手システム・インテグレータから下請けの仕事が来る。外販事業では、売上を上げたいために、このような案件にすぐに飛びつく。ただし、そのような案件では、大手インテグレータがすでに作るべきシステムを顧客と決定し、B社はこれを安く作るという以外に付加価値の出しようがない。そこで利益率も低い。また案件によっては、大手インテグレータが、B社親会社のシステム化のノウハウをうまく引き出し、これが大手インテグレータの手柄として顧客に提供されていることもあった。このような案件では、B社親会社の持つ、システム化の効果を最大化するための機能や、システム活用のために業務をどのように変えるか、またシステムを活用する顧客ユーザー部門をどのように巻き込んでいくかといったノウハウが、簡単に元請の大手インテグレータに渡されていた。ビジネス・モデル確立には、安直に来る仕事に乗らず、自ら積極的に市場を開拓し、自社のノウハウを「高く売る」環境設定が重要だった。

 仮説検証でもう1つ明らかになったのは、「親会社のノウハウだけでは、魅力市場を攻略できない」ということである。システムの中には、魅力市場の業種がB社親会社の業種と異なっており、この魅力業種にB社親会社のシステム化のノウハウは使えないところがあった。このような市場には、市場攻略のためのノウハウを、親会社以外から獲得しなければならない。今回の仮説検証の過程で、B社は求められるノウハウが何であるかを突き止めた。まず営業段階では、顧客に訴求するノウハウとして、「システム化による効果と投資回収方法」が重要であることがわかった。たとえば親会社が導入した社内の日常業務処理をペーパーレス化するシステムは、日常業務における情報のレビューと意思決定の一部を自動化するものであった。このため、このシステムによって、管理職の工数の15%が削減できた。同時にこのシステムによって、たとえばアジアで電子部品在庫がだぶついたため、即座に購入の意思決定をすれば安く調達できるとか、生産計画変更の時間を短縮し、在庫を削減するといった、意思決定スピードの迅速化により5つの領域で原価削減が達成された。このような効果の事例、効果の金額と、システム投資額は、営業段階で、顧客にB社がこれから提供してくれるサービスの付加価値を認識させるために重要であった。同様に営業段階では、「システム化推進のための成功要件と、推進体制に関わるノウハウ」、「顧客対応者の上司に対するシステム化承認獲得に必要な訴求方法、訴求材料」などが重要であることがわかった。

 システム開発段階では、開発生産性を向上させるノウハウとして、「システム機能とこれが達成する効果」が重要であることがわかった。システム開発では、システム化の要件を確定する工程で、出戻りが多発する。この原因の1つは、顧客が新しくでき上がるシステムのイメージがつかめず、要件設定や決定が遅れる点にある。そこでB社では、親会社の実績から、作り上げるシステムの機能と、これが顧客にどのような効果をもたらすかを示し、顧客側の要件設定と決定を迅速に確実に行わせるのである。システム開発段階では、これ以外に、「システム機能とこれを達成するために必要な業務改善方法」、「システム開発において発生する脅威があるリスクとこれのコントロール方法」が重要であることがわかった。

 このように獲得すべきノウハウが明確だと、親会社でなくても獲得が可能となる。そこでB社では、研究開発機能を強化し、今後狙うべき重点領域に関わる上記ノウハウの調査研究と関係者への普及を行うこととした。従来B社の研究開発は、ITに関わる調査研究がメインであり、数人が片手間に行っていた。今後は、B社事業拡大、利益率向上のための武器である、上記ノウハウ供給元として、明確な位置づけがされることとなった。

【次ページ】 仮説検証の中で解決しなければならなかった、大きな問題とは?

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