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2016年02月25日

ビジネスモデル解説:ファブレス

イケアの家具はなぜオシャレで安いのか? ライフスタイルを売るファブレス企業の秘密

年度末となる2、3月は、新生活に備えて家具店やインテリアショップに出向く人が多いことでしょう。オシャレな家具店と聞いてイメージするのが、北欧発の「IKEA(イケア)」です。イケアが顧客に提供しているのは、家具であって家具ではありません。イケアはDIYを好む顧客にとって、単なるモノを調達する店舗ではなく、自分らしいライフスタイルを実現するための娯楽施設となりました。イケアはなぜ、既存の家具店にない新たな価値を提供することができるのでしょうか。

執筆:佐藤 隆之

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ファブレス企業、イケアのビジネスモデルとは?

顧客をつかんで離さない「イケア効果」の経済学

 イケアは1943年にスウェーデンで設立された世界最大の家具販売店です。世界30以上の国と地域に250店舗以上を設け、その従業員数は10万人を超えています。イケアの特徴は低価格と優れたデザインにあり、また、郊外に大規模な店舗を構える手法を世界中で採用しました。日本では2006年に船橋で1号店がオープン。現在は8店舗、2020年までには14店舗になると計画されており、日本においていかにビジネスを拡大しているかが分かります。

 イケアで販売される家具は、顧客自らが家具の運搬・設置・組み立てを行う「DIY(Do It Yourself)」方式を前提としています。安価な素材を自分で加工するため、予算が抑えられるのはもちろん、単に家具やインテリアを買うよりも、より大きな充実感や満足感が得られるのが魅力です。

 顧客は倉庫のような店舗で目当ての商品を見つけ、運搬しやすいように商品が細かく分解されて小さく梱包された「フラットパック」を、自宅まで持ち帰り、自身で商品を組み立てます。通常は販売店が行うべき配送や組み立ては、有料のオプションサービスになっているのです。

 通常、人は手間のかかる作業を嫌うものです。それなのになぜ、イケアの顧客は手間のかかる製品の運搬や組み立てを消費者が進んで行うのでしょうか? 製品を自分で組み立てたときに、その製品の質を過大評価してしまう傾向は「イケア効果」と呼ばれ、行動経済学の研究対象となりました。

 ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ノートン教授が行った調査では、被験者に折り紙を折らせ、それを折り紙職人の作品と一緒に並べさせました。それぞれ、いくら払って買うか尋ねたところ、被験者は自分が作ったものに、より高い値段をつけました。製品の品質に関わらず、自分の労働に価値があると感じる心理を利用するため、イケアは人気を集めるのです。

イケアは、ステークホルダーと力を合わせている

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 イケアのコンセプトには「イケアと顧客が力を合わせることで、お金を節約できる」という考えがあります。イケアはデザインや大量仕入れを行い、顧客はセルフサービスによる運搬や組み立てを行うという分業を徹底し、コスト削減が実現できます。

 また、組み立て説明書は文字に頼らない簡素なスケッチで描かれた独特のデザインをしていますが、シンプルさを好むイケアと顧客の関係性を良く表しています。さらに、セルフサービスはさらなるコスト削減を可能にします。商品陳列や顧客対応が少ないため人件費が削減できる、フラットパックの採用により物流効率を削減できる、といった利点があります。

 また、イケアは自社工場を持たない、いわゆる「ファブレス企業」の形態をとっています。製品開発においては、顧客と商品供給業者の距離を縮め、コスト削減を図っています。イケアは徹底的に市場調査を行い、顧客が求めるデザインや価格を調べます。供給業者にはコストの積み上げではなく、目標とする価格に収まるよう発注を行います。世界中で同じ製品を取り扱っているため、大量発注が可能となり、調達価格の抑制をすることができます。

 東欧やアジアにある低価格で大量生産を行える工場とデザインとマーケティングに優れたイケアが「力を合わせてコストを削減している」というわけです。

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イケアにおける企画・製造・販売の仕組み


【次ページ】イケアのビジネスモデル革新とは?

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