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2016年07月19日

PFNとIBMがAIの「擬人化」に違和感を持つワケ

経済産業省の調査によると、ロボット産業市場は2025年に5兆3000億円、2035年には9兆7000億円規模にまで達すると予測されている。少し前まで、ロボットを活用する業界といえば、製造業が中心だったが、今後はサービス業などでも人工知能・AIを備えたロボットが普及するという専門家の指摘もある。ディープラーニング研究で知られるPreferred Networks(以下、PFN) 最高戦略責任者 丸山 宏氏と、日本IBM 執行役員 開発研究担当 久世 和資氏が、ロボットとAIが産業に与えるインパクトや、AIが生み出した知的財産の課題に関して議論した。

執筆:鈴木 恭子


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AIの擬人化には違和感がある?


PFNのディープラーニング研究

 2014年に設立したPFNは、ディープラーニングの研究を推進する東京大学発のベンチャー企業である。ディープラーニングをIoT(Internet of Thing)や製造業に活用したり、リアルタイム機械学習技術を、どのようにビジネスに応用するかといった研究をしている。

 PFNの取り組みで有名なのが、ロボット事業を手掛けるファナックと共同で行った「バラ積みロボットの制御プログラム」である。これは、ディープラーニングを適用することで、不規則に積まれた物体の掴み方を、ロボットが自動的に学習していくというものだ。

 またPFNは、2015年12月にトヨタから出資を受けたことでも知られている。同社では分散協調型コンピューティングの研究として、衝突回避の動きをアルタイムで分析・学習する「ぶつからないクルマ」の開発を、トヨタやNTTとともに取り組んでいる。

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(クリックで拡大)

バラ積みされたワークの取得動作を学習するロボットの様子は、YouTubeで公開されている


 一方のIBMは、人工知能の「Watson」を擁する。ただし、同社はWatsonを人工知能ではなく「コグニティブ(認知)コンピューティング」と位置付け、医療、保険、金融、法務、小売りなどの分野において、「データ分析プラットフォーム」として提供している。

 中でもIBMがWatson活用領域として注力しているのが、医療分野である。医療業界では新薬や新たな治療法が次々に登場している。しかし、医師がそれらすべてを把握することは困難だ。そこでWatsonを利用し、情報収集の効率化を図るようにする。

 三菱地所がオープンしたベンチャー企業向けビジネス支援施設「グローバルビジネスハブ東京」にて開催されたイベントに登壇した久世氏は、「Watsonは医者の裏方となって診断支援する役割を担う」と説明する。すでに、米国の癌センターでは150万の癌の症例と42種類の癌の専門誌をWatsonが読み込んで分析し、データを整理して医師に提供しているという。

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日本IBM
執行役員
開発研究担当
久世 和資氏


 またIBMでは28のWatson API(Application Programming Interface)を公開しており、2016年度中にその数を50にする計画だ。その理由について久世氏は、「あらゆる分野でコグニティブコンピューティングを土台とした製品を開発してほしいから」と説明する。

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IBMはWatson APIを積極的に公開し、エコシステムの構築に注力している


AIの擬人化にある違和感とは

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Preferred Networks
最高戦略責任者
丸山 宏 氏


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 PFNもIBMも、AI研究では中心的な存在である。しかし、PFNの丸山氏は「AIや機械学習を擬人化する傾向は強いが、それには違和感がある」と指摘する。

「人工知能は、人間が処理しきれない情報量を瞬時に処理するもの。また、産業ではそうした(人間が不可能な)領域で活用するのがよいのではないか。人間とAIの産業(担当)領域は異なる」(丸山氏)

 久世氏も「AIが人間に取って代わるのではなく、人の支援にどのように役立てるのかを研究課題としている」と語る。

 丸山氏は「強化学習」を利用すれば、今まで人間が時間と手間をかけて行ってきたプログラミング作業が劇的に効率化できるとの見解を示す。強化学習とは、コンピュータ自身がトライ&エラーを繰り返すことで、環境に適応する学習制御の枠組みだ。同氏は強化学習を「プログラミングの世界に革新をもたらす破壊的な技術で、コストを大幅に削減できる」と評価する。

「例えば、組み込み系制御システムなど、いままで莫大なコストをかけてプログラミングしていたものが一気に簡素化できる潜在能力がある」(丸山氏)

 もう1つ注目すべきは、非構造化データの分析活用だ。2014年にIT専門の調査会社である米国IDCが公開した予測リポートでは、「地球上で1年間に生成されるデジタルデータの量は、2020年には44ゼタバイト(44兆ギガバイト)になる」と試算している。その約90%が、自然言語、画像、IoTのセンサデータといった、非構造化データだという。

 久世氏は「1種類のデータを分析するだけでは、新たな知見は得られないことは多くの企業が気付いている。今は、人工知能を活用し、複数の非構造化データを組み合わせて分析することで、知見を得ようというトレンドに向かっている」と指摘する。

 例えば、半導体を製造している工場の製造機器から収集されるセンサデータと監視カメラで撮影した映像データを組み合わせて分析し、故障予兆の精度を向上させる。あるいは、鉄道の線路に取り付けられたセンサーが収集したデータと、鉄道員が書いた過去の「保全日誌(設備に関する記録)」を掛け合わせて分析し、新たな点検方法を見いだすといった具合だ。

【次ページ】AIが生み出した知的財産はだれのものか

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