• 2012/06/26 掲載

【李鳳宇氏インタビュー】『フラガール』などのヒット作を製作した、シネカノンの破綻と再生について元代表の李鳳宇氏に聞く(3/3)

『パッチギ!』『シュリ』『フラガール』プロデューサー 李鳳宇氏インタビュー

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映画製作会社SUMOMOの立ち上げ、移動映画館、そしてこれから――

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2012年公開予定『EDEN』
©映画『EDEN』フィルムパートナーズ
──それで、SUMOMOとしての再スタートとなり、すでに山本太郎主演の『EDEN』(船戸与一原作)は完成、2012年秋公開の予定と聞いていますが、再スタートの資金はどのようにして。

 李氏■人生でこんなに落ち込んだことはないし、明日からどうしようかなと思っていたときに、友人や支援してくれていた仲間が、「李、おまえは映画しかできないんだから」とお金を集めてくれて、これで映画つくれよと。会社としての資本金が2200万。『EDEN』の制作費が6000万円、それも全部出してもらって。

 SUMOMOの事業としては、もう1つ、移動映画館があるんです。2011年に、東北の被災地で映画祭をやることから始めました。スタッフは、個人でやっている映画塾の卒業生が2人と、シネカノンの元スタッフが3人。人のつながりですよね、基本は。経験がないから、今は僕が一から教えてるところです。

 でも、昔のシネカノンも、みんな経験のない人の集まりでした。映画の仕事って、ただの業務じゃないですから。破綻する前は100人くらいにも膨らんでしまって、目が届かなくなっていた。今になってみると、20人くらいがちょうどいいんでしょうね、映画会社って。

──大型トラックに映写機と座席を積んだドーム型の映画館というので、どんなのものだろうかと思って、昨年の夏だったか、青山の国連大学のところでお披露目の試写会にいってみたら、ぜんぜん想像とは違ったものなんですよね。

 李氏■何やっているんだろうと思ったでしょう。みんな思うんですよ、ゴザを引いた、学校の野外上映会みたいなものかと。だから、みんな驚くんですよ。

 東北もそうでしたよ。宮城とか会津とか、あちこち行きましたけど。子供たちは、エアードームを広げる設営から、興奮しながら見物してます。僕は、紙芝居だと思っている。高級紙芝居。そういうのを映画館のない街に届けたいですよね。

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「移動映画館MoMO」 ©sumomo
 今は地方に行くと駅前はどこもシャッター商店街になっていて、駐車場もクルマが停まってない。そこに昔、常磐座という劇場があったなら「常磐座復活!」ってやったらいいと思うんです。

 映画の感動、それはDVDとは違って、みんなで観て、観終わって語り、一杯飲むとか。そういう映画文化を復活させたいんですよね。ですから、『EDEN』も、移動映画館で全国を回ろうと思っているんです。できたら、監督も(山本)太郎も来てほしいし。ほかの共演者もきてもらって。実際、移動映画館って、誰もやってないんで、見てもらわないとわからないし。とにかく出前なんです。

──「出前」という響きとは違って、椅子は洒落たミニシアター仕様だし、スクリーンは、大劇場と同じ。外観のドームも雰囲気全部が贅沢なんですね。

 李氏■映画はフラットで観るものじゃないですから、椅子も階段式にして。そのためには、椅子を作るところから随分苦労しました。そこまで本気になってやらないと。観る人にはお金払ってもらうんだから、申し訳ないですよ。

──トラックも、あれはベンツですよね。

 李氏■13tトラックです。だから、よく言われる。よくお金あったなって。それは僕のお金じゃなくて、友達が「おまえ大丈夫か」と出してくれたものです。「おまえが、いい映画をつくってきたからだよ、人が応援するのは」と。

 それはありがたいですね。それは在日の人も日本人も関係なく。上場企業の社長もいます。ダメになって、初めて人は見分けられるというのは、事実だと思いますね。僕、50になって、この会社を必ず成功させたいと思います。年商じゃなくて、深い感動のある映画をつくれる会社にできる自信があります。

──李さんが携わっていたものとしては、あの渋谷の円山町にあった、ゲバラの写真が並んだ「CHE」というバーはどうなったんですか?

 李氏■銀座一丁目に場所を移してやっています。スタッフは、昔のままですし、ゲバラの写真とかもそのまま。映画の企画は不思議と、夜生まれるんですよね。事務所で生まれるものじゃない。そのためにも、ああいうアジトのような場所は必要なんですよね。

──会社を整理していくときに、シネカノンの社員たちにはどのように告知をしたんですか?

 李氏■メインの人たちには、何か月か前に話していって、何人かの人は再就職先を斡旋もしました。

──若い人が先に退職し、ベテランが最後まで残ったように聞いていますが。

 李氏■それはやっぱり人情が残りますから。最後の半年は、閉め方を考えていましたから。1年か、2年後には、ええー、そんなことを準備してたのか、と言われるかもしれません。もちろん映画製作やシステムで。まだ言えるような段階でもないし、難しいことなんですけど、いずれ……。

(執筆・構成:朝山実)

●李鳳宇(リ・ボンウ)
1960年、京都府生まれ。1989年に映画配給会社シネカノンを設立し、映画プロデューサーとして、『パッチギ!』、『シュリ』、『フラガール』など多くの作品に携わる。その後、2010年1月にシネカノンが東京地方裁判所へ民事再生手続を行う前後の動向については、本インタビューに詳しい。2011年4月、映画製作会社SUMOMOを設立し、現在は公開を控える映画『EDEN』や次回作の製作、配給などの準備で多忙を極めている。
サイト:SUMOMO


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