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2013年04月23日

『ソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へ』著者 円堂都司昭氏インタビュー

【円堂都司昭氏インタビュー】ソーシャル・ネットワーク時代の音楽のトランスフォーム (3/3)

歴史を証言する音楽批評

──時代の変化に伴走する形で、ゼロ年代以降の音楽論・音楽批評というものも変容していると思うのですが、最近の潮流について、注目している論者などがいらしたら教えてください。

 円堂氏■ロックも生れて50年以上経ち、回顧する対象になりましたよね。大和田俊之さんの『アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』のような優れた歴史研究本も出ています。各論でいえば、ストリート・カルチャーや社会運動と結び付くような部分での音楽について磯部涼さんが追っている。ソーシャル化以降の音楽に関しては、井手口彰典さんが音楽行為のネットワーク化や同人音楽について書いている。いわゆるポップスに関しては柴那典さんが最近、積極的に発言しているし、レジーさんのブログも注目です。それこそ『ソーシャル化する音楽』は、彼らが書いても不思議ではないテーマでしょう。ひとまず長い歴史的スパンに関しては僕がまとめましたけど、各論の部分、もっと現代寄りで細密な議論を、若い書き手に期待したいです。というか、「書いてくれ!」というメッセージだったりもするんです(笑)。

──円堂さんご自身は、音楽のソーシャル化で、書くものに影響を受けたという意識はありますか?

 円堂氏■そうですねぇ、ソーシャル化とはあまり関係ないかもしれませんが、ディスクレビューの仕事でいうと、お店の試聴コーナーに置かれるような、売れているアーティストの音の説明はあまりしなくていいと思っていて。事前に聴く機会があまりなさそうなものに関しては、逆に音について多めに触れる。そんなことは意識的にしてますね。

──ネット以降、それこそすぐに試聴できるようになりましたし、下手すると丸々YouTubeに上がっていたりもします。昔は、ラジオでかかるとかを別にして、アルバムの事前情報ってほぼレビューしかなかった。レビューの文章のみで、買う/買わないを判断をしていたわけで、だいぶ状況も変わりましたよね。

 円堂氏■年齢も年齢なので、最近は洋楽だと再発ものの原稿を振られるケースが多いんです。だから、歴史のなかに位置付けるような書き方になる。年長者として、歴史を証言していくことは必要なんじゃないかなと。

──再発盤の時は。

 円堂氏■いや、再発に限らず、ですかね。国内ものでも、例えば若いバンドとかだったら、こういう音楽を参照したり参考にしているんだろうなというのが透けて見えるものに関しては、その辺について触れたりもします。

──こういう音楽の歴史の流れの上にありますよ、ということですね。

 円堂氏■はい。あと、これは賛否両論ありますが、歌詞の解釈をする時もあります。文芸評論的に読み解いてみる、ということですね。音のほうは聴けば感じられるものなので、聴いて感じられる以外の解釈なり情報を入れていった方がいいのではないかなって。あとは、アーティストのキャラクター性を評してみたりとか。

──軸をどこに置くかは、アーティストやその作品によって変わってくるということですね。

 円堂氏■思い込みだけで書くような、熱い言葉で盛り上げるようなスタイルはイヤなわけですよ(笑)。私は評論家なので。短いレビューであっても、論評的な、解説的なものにしようという意識はありますね。

──うかがっていると、ネット以前/以降とかはあまり関係なく、円堂さんの評論家としての意識みたいな部分はあまり変わっていないようですね。

 円堂氏■内容以前に、紙媒体の数が少なくなっちゃった方が大きな変化かも(苦笑)。

──紙に書く場所がない。一方で、ネットには有象無象の「感想」が膨大に溢れている。

 円堂氏■洋楽に関しては回顧ムードになっているから、洋楽雑誌とかでも、例えば最近だと新譜が出たデヴィッド・ボウイが表紙になったりしていますけど、昔の写真やジャケ写を使ったりしていて、特集の多くを占めるのは過去の回顧です。雑誌が、雑誌文化に親しんだ世代向けに作られているところはありますよね。

──『ソーシャル化する音楽』は、タイトルや帯からは、音楽業界が激変したことを論じようとしている本に見えますし、じっさい変わっている面もたくさんあるんでしょうけど、でもそれは前後に大きな断絶があっての変化、では全然ないわけですよね。

 円堂氏■そうですね、あくまで連続性のもとでの変化ですね。

──環境や状況、アウトプットされているものは変化しているけど、書き手の意識やスタンスまでもが激変したかといえば、そういうわけではない。でも、ちょっとずつ変わってはいる。『ソーシャル化する音楽』は、読んでいると連続性の方が気になってくる本ですね。

 円堂氏■メディア環境の更新に伴い、ある連続性のもとで、音楽のトランスフォームはこれからも続いていく、ということですね。


(執筆・構成:辻本力

●円堂都司昭(えんどう・としあき)
1963年千葉県生まれ。文芸・音楽評論家。著書に『YMOコンプレックス』(平凡社)、『「謎」の解像度』(光文社)、『ゼロ年代の論点』(ソフトバンク新書)、『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)がある。共著に『バンド臨終図巻』(河出書房新社)など。
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