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  • 2014/06/30 掲載

加藤貞顕 氏インタビュー:新しいSNS「note」が生む、GoogleやAmazonにない価値とは?

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かつてダイヤモンド社で『もしドラ』『スタバではグランデを買え!』などのベストセラーを手がけ、独立後は定額課金型デジタルコンテンツ配信プラットフォーム「cakes(ケイクス)」を立ち上げコンテンツビジネスの新しいカタチを呈示した加藤貞顕氏。この加藤氏が2014年4月にリリースしたソーシャルメディアプラットフォーム「note(ノート)」は、サービス開始初日に1万人が登録し、1カ月で2000万ページビュー、100万ユニークユーザーを達成。さらに、6月より個人が手軽にメディアを作成できる新機能「マガジン」が追加され、人気ロックバンド「くるり」がnoteで公式ファンクラブをスタートさせるなど、常に話題を提供している。このnoteは何を目指し、何ができるのか、加藤氏に話を聞いた。
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加藤 貞顕(かとう・さだあき)氏
1973年、新潟県生まれ。大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。アスキーにて、雑誌の編集を担当。ダイヤモンド社に移籍し、単行本や電子書籍の編集や、電子書籍アプリの開発に携わる。おもな担当書籍は『ゼロ──なにもない自分に小さなイチを足していく』『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』『評価経済社会』『スタバではグランデを買え!』『英語耳』など。2011年12月に株式会社ピースオブケイクを設立、代表取締役CEOに就任。

ニコ動にはニコ動、pixivにはpixivの空気がある

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──noteのサービスがスタートして約数カ月が経ちますが、あらためてその機能や目的についてお聞かせください。

加藤貞顕氏(以下:加藤氏)■もともと僕は出版社で紙の本の編集をしていたので、2000年代を通じて雑誌や書籍がインターネットに追い上げられていくのを肌身で感じていました。いまや電車に乗ればみんなスマホを眺めているわけで、書店も減っていますよね。そうやって紙の出版の出口は小さくなる一方だから、新たな出口を作る必要があるなと、2012年にcakesというデジタルコンテンツの有料配信プラットフォームを立ち上げたんです。

──いろいろな著者のコンテンツや、外部の出版社の雑誌原稿などをウェブに掲載し、週150円でそれらすべてが読み放題というサービスですね。

加藤氏■このcakesは、編集された場所で、著者を選んで原稿を依頼し、読者には課金もするという、いわばクローズドなサービスです。でも、やっぱりネットというのは本質的にオープンな場所なので、究極的には、誰でも自由にモノを作ったり売ったりできる場を設けたかったのです。それには、cakesを徐々に開いていくやり方もあるのですが、cakes立ち上げから2年近く経って、いまならやりたいと思った最終形態であるフルオープンなサービスを、いきなり別個にリリースするのもアリかなと。それで始めたのがnoteです。

──当初のビジョンからすれば予定通りだと。

加藤氏■そう、最初からやりたいことではありました。ただ、コンテンツを投稿する場所の設計って難しいものなんですね。誰でも参加できるようにすると、ヘタするとカオスになります。そうなってしまうと、プロはもちろん、アマチュアでもそういう変な場所には近づきたくなくなるかもしれない。

──場の空気というのは重要ですよね。

加藤氏■ニコニコ動画にはニコニコ動画の持つ空気があるし、pixivにはpixivの空気がありますよね。そういうことを考えると、2年前の段階では、僕はクローズドのサービスでよかったと思っているのですけど、今はオープンでやってもいいような雰囲気があるなと感じました。CGM(Consumer Generated Media:消費者が内容を生成するメディア)みたいな文化も根付いてきているし、テクノロジー的にも、クリエイターの慣れという意味でも、環境が整ってきたかなと。

──noteでは文章はもちろん、画像(写真・イラスト)も音楽も動画も簡単に投稿できますね。

加藤氏■最初はテキストを中心に考えていました。ただ、画像を投稿できるようにすると、写真家やマンガ家も使えるし、汎用性も高まりますよね。そうなると、音楽ものせられるし、動画もいける。どれもデジタルのデータとしては等価なんですよね。ドラッグ&ドロップで投稿して、インターフェース上はまったく変わりません。

──noteがスタートしたとき、「ネット上に自分の店舗を構える感じ」「フリーマーケットみたい」といった感想がユーザーから寄せられていましたよね。現実でもそういうことはやれなくはないけれど、たとえば同人誌を作ってコミケの会場で売りに行くのは慣れない人にとってハードルが高いとも言えます。

加藤氏■そう、noteはまさにお店屋さんごっこ的な楽しさはありますね。ただし、基本的に、クリエイターが一番やりたいことは何かというと、自分の思いを伝えることであって、それを紙に印刷して束ねたものを売りたいわけではないと思うんですよね。

──「伝える」ことが先にあって、「売る」ことが本質ではない。

加藤氏■だからコンテンツについての有料/無料の線引きは自由にできる設計にしています。当然、noteを無料で公開しているだけでもいいんです。

 それよりも、一番大きいと思っているのは、フォローでつながって、フォロワーにコンテンツを届けられることです。この点にかんして、僕は「ほぼ日」(ほぼ日刊イトイ新聞)の物販にすごく影響を受けています。cakesでも「ほぼ日」代表の糸井重里さんへのインタビューをさせていただきました。そこで、「ほぼ日」の物販について僕は「あるコミュニティの中で、ある価値観やストーリーを共有して、その上で『いいもの』を出す」という話をしています。ここがポイントではないかと、思っています。

──「ほぼ日」は、ただ「モノを売っている」だけではないと。

加藤氏■まずコミュニティがあって、人と人がつながって何かを共有する、その体験にこそ価値があるのではないかなと。コンテンツを中心にコミュニティを作るための仕組みとしてのnoteという発想は、そこへつながるわけです。

──事実、noteは「クリエイターとユーザーをつなぐ」サービスと謳っていますし、コンテンツを売り買いすることでコミュニティができていますね。

加藤氏■noteでは、クリエイターは自分のコンテンツに対して100~1万円まで自由に課金できるんですけど、100円の記事ひとつにもコミュニティが生まれるんですよ。これは当初は想定していなかったことでもあるのですが……。

【次ページ】「GoogleやAmazonにからめとられない価値」とは?

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