• 2011/06/17 掲載

【石原壮一郎氏インタビュー】ビジネスマンはどのように怒るべきか――コミュニケーション不足の日本人を考える(3/3)

『石原壮一郎のオトナの怒り方』『大人力検定』著者 石原壮一郎氏インタビュー

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「怒る」というコミュニケーション

――この本は「大人の」怒り方がテーマになっていますが、大きくは「コミュニケーションについて考える本」だと思いました。

 石原氏■「怒り方」というテーマで書き出したはずなのに、半分くらい書いたところで読み返してみたら、「どうすれば怒らずに済むか」を追求している本になってたんです(笑)。

――帯でも「あのシチュエーションで繰り出したいキラーフレーズ243!」って謳っているんで、一瞬、「どうやって相手をどやしつけるか」みたいなことが書いてある本かと思いました。でも、そうではないんですよね。

 石原氏■どやしつける方法ではなくて、複雑に絡まった状況の中から、ほんのわずかな突破口を見つける方法を探っている本ですね。でも、この本を書いて、自分は怒るのが苦手なんだということを改めて思い知らされました(笑)。相手を叩きのめすような怒り方は、たとえ架空の状況設定でも思い浮かんでこない……。

――あくまで精神衛生のために怒る、ということですね。

 石原氏■そう、「怒り」は抱えていると疲れます。それをどう落ち着かせるか、自分がはまり込んでいるイライラの罠からどう抜け出すか、そういうことを考えたわけです。

――また、要所でまるで釘を刺すかのように「自分が身勝手な主張をしている可能性を忘れるな」「怒ることの甘い誘惑に注意しろ」と、自分自身を省みることを促されています。これはこの本のある意味で裏テーマのようなものだと思ったのですが、いかがでしょうか?

 石原氏■ああ、そこに気づいていただいて感無量です。実はそっちがメインのテーマ と言っても過言ではありません。「怒り」には、必ず理由や原因があります。それが相手にあるとは限らないというのが、「怒り」のややこしさでありタチの悪さですね。

――けっこう留保をつけてらっしゃるところもありますものね。必ずしも「こちら側が正しい」という前提での怒り方をしていないというか。

 石原氏■例えば、隣の先輩のキーボードを打つ音が気になるとか、同僚のちょっとしぐさや言い方に腹が立つとか、誰しもそうした経験があると思います。でもそれは、自分の不安や自信のなさを埋め合わせるために「怒り」を利用している――つまりはイチャモンをつけているだけかもしれない。その可能性があることを忘れてはいけません。

「大人らしく怒る」とは?

――怒った相手を「フォローするまでが『怒る』である」ということを書かれていますが、そうしたことも踏まえ、石原さんにとって「大人らしく怒る」とはどういうことでしょうか?

 石原氏■まず怒った側としては「怒ってよかった」と思える怒り方がしたいですね。怒られた相手もそのときはいい気持ちはしないでしょうけど、あとで「言われてもしょうがなかったな」と気付いてくれたらいいですよね。そして、怒った側はもちろん、怒られた側も自分が相手の気分を害したのだから、やはりそこは「相手をフォローしなければならない」と考えてほしい。そうしてお互いにフォロー合戦になっていくのが理想です。

 怒った側だけが「言えてよかった」と思っていてもダメで、それはつまり何かが足りなかったということではないでしょうか。ちゃんと伝えて、相手が改善してくれないと怒った甲斐がない。やみくもに怒るのではなく、怒るべきところを見極めた方がよいでしょうね。

――見極めることができるのが「大人」ということですね。

 石原氏■こんなこと言うと諦めているように聞こえるかもしれませんけど、どうしようもないことはどうしようもないんです。他人はそう簡単に変わらないし、自分だってなかなか変えられません。「怒り方」を考えることも大事ですが、そもそもそんな必要がなくなるのがいちばんいい。早めに手を打つということも含めて、あの手この手で「どう腹を立てないか」を考えるほうが、もっとも大事なんだと思います。

――「怒り方」を知ることで「怒らない方法」が見えてくるということですね。では最後にもう1つだけ。石原さんご自身は最近怒られたことはありますか(笑)?

 石原氏■この本の原稿をなかなか書かなかったから、担当の編集者にはかなり怒られました(笑)。もちろん、怠け者の私の背中を押すためにあえて心を鬼にしてくれたのはよくわかっているので、とても感謝しています。

――「怒り方」の本を書きながら怒られると(笑)。本日はお忙しい中、ありがとうございました。


(取材・構成:辻本力

●石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年、三重県生まれ。コラムニスト。雑誌編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、ビジネスから恋愛、教育まで、幅広いジャンルで「大人」の素晴らしさと奥深さを世に知らしめている。おもな著書に『大人力検定』『大人の女力検定』『大人のワザあり!超メール術』『夫婦力検定』『大人の超ネットマナー講座』など。au oneトップページ〈大人style〉の「大人マガジン」「日々是名言」で監修を務める。


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