株式会社インフキュリオン 提供コンテンツ

  • スペシャル
  • 会員限定
  • 2026/03/25 掲載
金融は「組み込まれる」時代へ──データ起点で変わる地域金融と、インフキュリオンのEmbedded Finance
会員(無料)になると、いいね!でマイページに保存できます。

金融は「組み込まれる」時代へ──データ起点で変わる地域金融と、インフキュリオンのEmbedded Finance

地域金融の競争力は、もはや「店舗網」や「預金量」では測れない。鍵を握るのは、地域で日々生まれる“事業データ”をどう取得し、どう活用するかだ。こうした金融の変化を象徴する概念が「Embedded Finance(組込型金融)」である。インフキュリオンは2021年からカンファレンス「Embedded Finance Days」を開催し、この新しい金融のあり方を議論してきた。北國銀行との協業は、その思想を具体化する取り組みのひとつだ。丸山弘毅氏は、BaaSの本質を「金融機能の提供」ではなく「データ起点で地域経済を再設計すること」にあると語る。北國銀行との協業は、その思想が実装に落ちた一例である。本稿では、次世代ペイメント基盤の取り組みを手がかりに、「データ起点」で地域金融がどう変わるのかを読み解く。

5年目を迎えた「Embedded Finance Days」と地域金融

 2021年、インフキュリオンはカンファレンス「Embedded Finance Week(現:Embedded Finance Days)」を初開催した。当時、日本では「エンベデッド・ファイナンス(組込型金融)」という言葉はまだ一般的ではなかったが、同社代表取締役社長 CEOの丸山弘毅氏は一貫して「決済や金融は手段であって目的ではない」と語ってきた。従来、金融や決済は事業者が主役として語られがちだった。しかし丸山氏が目指すのは、消費体験や事業活動そのものに金融機能が自然に溶け込み、ユーザーが意識せずとも最適な手段を享受できる世界だ。

photo
インフキュリオン
代表取締役社長 CEO
丸山 弘毅氏

 2026年2月に開催された「Embedded Finance Days 2026」には、Sansanや関西電力など多様な企業が登壇した。金融が前面に出るのではなく、事業や生活の中に自然に組み込まれる、その可能性は着実に広がりを見せている。

 地域金融機関にとって、BaaSやエンベデッド・ファイナンスは何を意味するのか。丸山氏はその核心を「データ」にあると指摘する。

「AIやSaaSが普及する中で、誰も持っていないデータそのものの価値が高まっています。地域金融機関は、地域固有の情報を持っている存在です」(丸山氏)

 地域の産業構造、イベント、人の流れ、商習慣──こうした情報はこれまで属人的に扱われてきた。しかしキャッシュレスの普及により、売上傾向や来訪者比率といったデータがリアルタイムに近い形で蓄積されるようになった。

「財務諸表よりも早く、個社単位でミクロな状況が把握できる。それを活用すれば、事業支援のあり方も変わる。現時点での一般的な生成AIには分からない、地域の実態に基づく判断が可能になります」(丸山氏)

 生成AIが高度化しても、地域特有の商習慣や企業の実情までは学習されない。そこに地域金融機関の存在意義がある。

北國銀行が示す「BaaS×地域データ」の未来像

 インフキュリオンと北國銀行の協業は2019年から続く。丸山氏は、北國銀行について「未来を見据えている」と評価する。

「預金と融資にとどまらず、地域経済をどう活性化するかというゴールを明確に持っている。そのビジョンが一貫しています」(丸山氏)

 北國銀行は決済データや契約データ、請求データを統合し、地域経済を俯瞰(ふかん)する“データ・ハブ”としての役割を志向している。単なる金融仲介を超え、事業活動そのものを可視化する構想だ。

 こうした構想を実現するためには、分析以前に「データを自ら取得できる基盤」が不可欠になる。決済が他社レールに依存していれば、データは断片的なままだ。だからこそ北國銀行は、ペイメント基盤そのものの再設計に踏み出した。特に注目されるのが「事業性担保」への取り組みである。不動産ではなく、ビジネスモデルや成長性を評価軸とする考え方だ。

「KPIを共有し、データを見ながら一緒に改善を考える。うまくいけば融資を続け、課題があれば支援する。伴走型の金融が重要です」(丸山氏)

 BtoBであれば契約や請求データ、BtoCであれば売上データ。こうした事業活動データを基に企業と向き合うことが、BaaSの本質だと丸山氏は語る。

 北國銀行はコンサルティング業務も展開し、データに基づいて地域企業と成長するモデルを体現している。

 北國銀行が目指しているのは、決済サービスの拡充そのものではない。決済を起点にデータを蓄積し、事業活動と資金循環を可視化する“基盤”の再設計だ。その構想を具現化するために同行が踏み出したのが、統合型の次世代ペイメントプラットフォーム構築である。

10年のキャッシュレス事業で見えた「構造的課題」

 キャッシュレス比率42.8%に達した日本で、決済インフラの在り方が大きく変わろうとしている。従来の縦割りシステムでは、デビット、クレジット、プリペイドがそれぞれ個別のシステムで運用され、事業者にとって高コスト・長期間の導入が避けられなかった。この構造課題に対し、北國銀行はペイメント基盤そのものの再設計に踏み出した。

photo
北國銀行
キャッシュレスグループ長
河崎 伯彦 氏
 北國銀行が次世代ペイメントプラットフォーム構築に乗り出した背景には、10年間のキャッシュレス事業で直面した深刻な課題があった。同行 キャッシュレスグループ長 河崎伯彦 氏が振り返るのは、2016年から始まった地道な取り組みだ。

「私どもは2016年にVisaから直接プリンシパルライセンスを取得し、銀行として日本で初めてアクワイアリング事業を開始しました。」(河崎氏)

 当時、北陸新幹線の開業を機に、地域の生産性向上と消費者体験の改善が急務となっていた。少子化が進む中、地域競争力の向上にキャッシュレス化は不可欠だったのだ。

 10年間でVisaデビットカードや加盟店端末を全方位的に展開し、北陸三県でのキャッシュレス比率を大幅に押し上げた。しかし、その過程で根本的な問題が浮き彫りになった。

「(人口減など)この10年の社会情勢をみると、プロダクトを作ってお客さまにどんどん売っていくという考え方はこれからの時代にはそぐわないと思います」(河崎氏)

従来システムの限界を突破する「統合型プラットフォーム」の設計思想

 従来のキャッシュレスシステムは、縦割りで設計された個別開発が主流だった。デビットもクレジットも個別システムで分断されていたのだ。

画像
なぜ次世代ペイメントプラットフォームが必要?

 この構造では、同じ会社でもプロダクトによってまったく違うシステムが立っており、1つのアプリで複数のプロダクトを管理することが困難だった。さらに、個別システムの維持には莫大なコストがかかり、新規参入の敷居も高くなっていた。

 北國銀行とインフキュリオンが共同開発した次世代ペイメントプラットフォームは、この構造的課題を根本から解決する。さまざまな機能を柔軟に提供できるオープンなプラットフォームとして設計され、マルチテナント環境で運用される。

「1つのプラットフォームですべてを提供できる。マルチテナントで展開しているので、毎環境の構築をすることなく、テナントを利用して専用の領域を作り、その中で事業者さまに好きなサービスを組み合わせていただけます」(河崎氏)

 このアプローチにより、事業者は必要な機能だけを選択し、短期間・低コストでキャッシュレスサービスを立ち上げることが可能になった。APIベースの疎結合設計により、既存サービスへの組み込みも簡単に実現できる。

5分でカード発行完了「one paretto」の革新的ユーザー体験

 同プラットフォームから生まれた第一弾プロダクト「one paretto」は、従来のカード発行プロセスを劇的に変革した。2025年9月にリリースされたこのVisaデビットカードサービスは、プラスチックカードを基本的に発行せず、すべてスマートフォンファーストで設計されている。

画像
one paretto

「北國銀行の口座所有者さまの場合、認証などの手続きも含め5分も経たずにお手持ちのスマートフォンの中にバーチャルのVisaデビットカードが発行されます」(河崎氏)

 申し込みから解約まですべてアプリで完結し、バーチャルカードを即時発行する。Apple Pay、Google Payに対応し、非対面でのオンライン決済も可能だ。セキュリティ対策も万全で、24時間365日の非対面運用を実現している。

 このサービス開発で特に重視されたのが、1つのアプリでの完結性だった。北陸地域はキャッシュレスで先進的とされる一方、デジタルリテラシーの面では課題もある。高齢化社会への対応も考慮し、複雑な連携を避けて直感的に使える設計にこだわった。

「なるべく1つのアプリで全部完結するポイントの利用、明細の見え方、そういったものを全部ひと目で分かるようにと工夫を凝らしました」(河崎氏)

地域通貨とブロックチェーンを統合した次世代決済基盤

 同プラットフォームのもう1つの特徴が、アクワアイリング機能と地域通貨の統合だ。店頭決済、EC決済、定期決済に対応するアクワイアリング基盤に、ブロックチェーンベースの地域通貨「トチツーカ」を接続している。

「ブロックチェーンで元帳管理を行っています。システムとしては安価で、かつセキュリティも万全、決済のスピードも通常のカード決済と遜色ない形でサービスを提供できるのです」(河崎氏)

 この地域通貨の最大のメリットは、加盟店手数料を大幅に下げられることだ。国際ブランドとは別の決済ネットワークを構築することで、コスト構造を根本的に改善している。

 さらに注目すべきは、複数の決済手段を1つのプラットフォームで統合管理できる点だ。ビザ、マスターカード、JCB、地域通貨のすべてが同じダッシュボードで管理でき、加盟店の運用負荷を大幅に軽減している。

 「餅は餅屋」という河崎氏の表現が示すように、それぞれの得意分野を生かした最適な組み合わせが実現されている。24時間365日の決済受付が必要な部分はビザのグローバルソリューションを活用し、アクワイアリングのバックエンドはインフキュリオンの知見を、消費者向けアプリは北國銀行が内製開発している。

3段階ロードマップで描く全産業キャッシュレス化戦略

 北國銀行の次世代ペイメント戦略は、明確な3段階のロードマップに基づいて展開されている。現在はStep1.0の段階で、プラットフォーム構築と自社サービス実現に取り組んでいる。one parettoのローンチに続き、春にはアクワイアリングサービスも本格展開予定だ。

 Step2.0では、事業者との協業による新ビジネス創出に軸足を移す。ここでの重要なコンセプトが「事業者本業へのキャッシュレス組み込み」だ。従来のような独立したキャッシュレスサービスではなく、各事業者の本業に自然に溶け込む形での提供を目指している。

「イシュイング(カード発行)とアクワイアリング(加盟店開拓)を掛け合わせることによって、また異なるビジネスチャンスが生まれます」(河崎氏)

 具体的には、加盟店のキャッシュレス売上をファンドソースとして、即座に仕入れ決済につなげるサービスを企画中だ。キャッシュコンバージョンサイクルを翌日または当日に短縮し、加盟店が新たな資金調達をする必要をなくす。さらに、加盟店が仕入れ代金をカードで支払うことで銀行が得る収益の一部を、キャッシュバックとして還元する。実質的な加盟店手数料引き下げも実現する。

 Step3.0では、あらゆる産業・地域への展開を想定している。BtoB、BtoC関係なく、日本全国でキャッシュレスが当たり前になった状況を目指す。

画像
3段階のロードマップに基づいて展開

 目的はキャッシュレス化そのものではない。地域の利便性と生産性を高めることだ。

 また、このプラットフォーム展開で注目されるのが、北國銀行の「ツーブランド戦略」だ。地元北陸三県では従来の北國銀行ブランドを維持しつつ、全国・海外展開では「CCIグループ」ブランドを使い分けている。

「地元の北陸三県の方々には北國銀行という80年超の安心安全のブランドを引き続き推し進めていきたい。一方、都市圏や全国、海外の方に対しては、北國銀行という形では、我々の思いやプロダクト、社会を一緒に変革していきたいというイメージがどうしても伝わらないのです」(河崎氏)

 この戦略的ブランディングにより、革新的な金融プラットフォーム企業としての新たなポジションを確立しようとしている。

ワンストップサポートで実現する参入障壁の撤廃

 キャッシュレス事業参入の大きな障壁となっていたライセンス取得、複雑なオペレーション、法令遵守についても、包括的なサポート体制を構築している。事業モデルに応じた必要ライセンスは北國銀行から提供し、完全内製化を目指す事業者にはプリンシパルライセンス取得支援も行う。

画像
ワンストップサポート

 運営業務のBPO、ブランドライセンス対応、リーガル対応まで含めたワンストップサービスにより、事業者は本来の事業に集中できる環境を整備している。

 河崎氏自身も2人という少人数でビジネス開発を開始し、新ソリューション立ち上げも3人のコアメンバーで実現してきた経験を持つ。「気持ちさえあればできる」との信念から、事業者の「少しの勇気」を全面的にバックアップする体制を敷いている。

 地域金融機関にとっての勝算とは、規模の競争ではない。地域固有のデータを起点に、事業者と伴走する金融へと進化できるかどうかにある。

そのために必要なのは、決済や口座といった金融機能そのものではなく、事業データを取得し活用できる「基盤」の設計だ。

インフキュリオンは、その基盤設計を担う存在として、組込型金融時代のOSを提供していく。

Embedded Finance Daysとは
 なお、インフキュリオンが主催するカンファレンス「Embedded Finance Days」は、金融と産業の新しい関係性を議論する場として2021年にスタートした。
決済・金融の専門家だけでなく、SaaS企業、エネルギー企業、小売事業者など、さまざまな産業のプレイヤーが登壇し、「金融が事業の中に組み込まれる未来」をテーマに議論を重ねてきた。
2026年開催の「Embedded Finance Days 2026」では、Sansanや関西電力に加え、SMBCグループのTrunkなど金融機関・事業会社が登壇し、事業と金融の融合による新たな価値創出が議論された。
________________________________________
アーカイブ配信
「Embedded Finance Days 2026」の講演内容は現在アーカイブ配信を行っている。
Embedded Financeの最新動向や、金融と産業の新しい関係性に関心のある方は、ぜひアーカイブをご覧ください。
▶ Embedded Finance Days 2026 アーカイブはこちら
https://infcurion.com/event/efd2026/

【回答目安1分】本記事をご覧いただきアンケートにご協力ください。

※回答者の中から抽選で20名様にAmazonギフト券500円をプレゼント。
※お一人につき1回のみ回答が可能です。複数回の回答されますと以降のサービスご利用をお断りすることがございますので、ご注意ください。
photo
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます


処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

基本情報公開時のサンプル画像

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます

基本情報公開時のサンプル画像