- 2026/10/21 06:30 掲載
なぜ北國銀行は“サポート”を経営課題に? 不安不満を88%減らす顧客接点改革とは(2/3)
「混乱・不安・不満」を約88%削減…成功体験の作り方
こうした強固な顧客起点のもと、北國銀行は、顧客とのさまざまな接点を通じて、将来の安心や前向きな変化・行動を促すことへの貢献を、目指すべき「お客さまの成功体験」と位置づけている。そのためには、顧客が本質的に叶えたい目的を理解し、最適なコミュニケーションをとることから始まるという。まず大切なのは、お客さまの感情に寄り添い、不安や戸惑いといった心理的ハードルを緩和することという。それが、顧客の「前向きな変化」を生み出す第一歩になるからだ。実際に、コールセンターに入電された際のAI感情分析では、応対開始時には「混乱・不安・不満」が50%前後を占めている。
「カスタマーサポートがお客さまの不安や疑問に向き合うことで、終話時には『理解・安心・納得』へ大きく変化し、『混乱・不安・不満』は6%まで低下(約88%減少)しています。こうした対応の積み重ねが、お客さまの成功体験を支え、ネットバンキングやキャッシュレスサービスの継続利用にも寄与しています。カスタマーサポートは、単なる問い合わせ対応ではなく、お客さまの行動変容と事業成長を支える重要な接点であると実感しています」(菖蒲田氏)
AIとデータの活用は、地方銀行にとっても「必然」になっていると同行は考える。特に非対面接点が増えるなか、声を上げない「サイレントカスタマー」のつまずきをどう可視化するかが課題になっている。
「変化が激しく、先を読みづらい時代だからこそ、AIを活用してデータを素早く分析し、継続的にPDCAを回す仕組みが重要になります。こうした仕組みを持つことが、これからの事業の競争優位や成長の前提になるという認識のもと、社内の体制整備を進めています」(菖蒲田氏)
生成AIの「データ循環」と“サイレントカスタマー”可視化
同行では、10年以上前から「お客さまの声活動」を実施してきた。2021年のCSグループ発足のタイミングで、経営陣の「有人の接点で得られるお客さまの声はごく一部に限られている。そこだけに囚われると本質的な課題やニーズを見誤る」という強い課題意識があったという。声を上げずに離脱したり、逆に直接は伝えないが商品を評価してくれたりする「サイレントカスタマー」の行動を可視化し、商品・サービスの真の課題と潜在ニーズを捉え直す体制構築を進めてきた。
その中核となるのが「デジタルフィードバックループ」という構想だ。これは、顧客接点で得られたデータを起点に、マーケティングや営業、バックオフィス業務など全社でデータを循環させ、会社の戦略や商品・サービスを常にブラッシュアップし続ける仕組みである。
具体的には、まずWebサイトやアプリ上での離脱データをもとに、顧客がどこで操作に迷っているかを可視化する。次に、コールセンターに寄せられる問い合わせ内容やVoC(顧客の声)分析と掛け合わせることで、離脱の背景にある本質的な課題を特定する。
そのうえで、特定した課題を商品・サービス側の改善につなげるサイクルを回している。実際に「北國デビットアプリ」では、この流れを通じて「UI/UXの使い勝手」という課題を特定し、企画部門と連携して順次アップデートを実施。翌年のNPS(Net Promoter Score)調査ではスコアが10ポイント以上上昇するという成果につながった。
「NPS調査を通じて、従来は『点』でしか捉えられなかったお客さまの声の全体像を把握できるようになりました。この全体像に基づき、お客さまの評価を大きく左右する顧客体験を特定しています。さらに、その顧客体験を深く理解するために、問い合わせ内容とWeb上の行動データを組み合わせて分析し、課題を可視化する取り組みを進めています。これにより、改善の優先順位が明確になり、関連部門との議論や改善活動の連携も強化されています。今後は、当社が保有する属性データや取引データも組み合わせることで、声として表れにくい『サイレントカスタマー』の行動や課題の可視化も強化していく予定です」(菖蒲田氏)
菖蒲田氏は、データが循環する基盤を活用しながら、AIと人が協働する新たなサポート体制の構築を「2年」という圧倒的なスピード感で推し進めている。
「2026年は顧客接点から得られるデータを循環させ、継続的にPDCAが回る仕組みを構築することに注力します。その上で、2027年に向けてAIが瞬時に回答できるサポートの比率をどれくらいに高めていくか、といった目標を設定し、より高度で効率的なサポート体制の実現を目指しています」(菖蒲田氏)
仮説検証の回転数を上げる、経営から現場までの意思統一が同社の強みだ。 【次ページ】「顧客の声」でアプリNPSが10ポイント上昇、“経営課題”へ
金融開発・保守・運用のおすすめコンテンツ
金融開発・保守・運用の関連コンテンツ
PR
PR
PR