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  • 2023/06/02 掲載

熱狂の生成AI、金融業で使える「活用例10選」と念頭に置くべき「2つのシナリオ」

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世界中で生成AIの熱狂的なブームが渦巻いており、金融業界でも我先にとOpenAI社の生成AIサービスであるChatGPTを導入する動きが相次いでいます。 本稿では金融業で使うべき「活用例10選」と金融機関が生成AIについて備えるべき「2つの極端なシナリオ」を紹介。生成AIの現在の状況をふまえつつ、未来を展望します。

執筆:みずほフィナンシャルグループ 執行理事 デジタル企画部 部長 藤井 達人

執筆:みずほフィナンシャルグループ 執行理事 デジタル企画部 部長 藤井 達人

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生成AI後の世界はどうなっていくのか? 金融サービスはどう変わるか?
(Photo/Shutterstock.com)

金融機関の経営者でも生成AIのすごさは一目瞭然

 前回は、ChatGPTに代表される生成AIサービスが金融業界に与える影響について、その概要をご説明しました。今回は、一歩踏み込んで生成AIの発展のゆくえと金融サービス業界に与える影響について考えてみたいと思います。

 現在、世界中で生成AIの熱狂的なブーム(一過性ではないのでブームと呼ぶのは適切ではないかもしれませんが)が渦巻いており、金融業界でも我先にとOpenAI社の生成AIサービスである“ChatGPT”を導入する動きが相次いでいます。

 ChatGPTは、金融機関の経営層の方が初見でそのすごさを実感できる非常にわかりやすいサービスです。実際に触ってみると、このクラウドベースのAIエンジンは一部の専門的なスキルにおいて人間の能力を上回る「変曲点」に到達していると感じられます。

 デジタルの力でイノベーションや最適化、改革を推進したいと思っている経営陣にとって、この生成AIの活用は非常に魅力的なオプションとなったことでしょう。

生成AIの力を制限してはならない

 ところが、ChatGPTに代表される生成AIを “めちゃくちゃ賢いチャットボット” という概念に押しとどめてしまっているケースも目につきます。

 たしかに、その解釈は一面では正しいのですが、その理解では生成AIの能力を大幅に制限してしまっています。

 生成AIの適用範囲は、キーワードベースの情報抽出から、特定のトピックやテーマの抽出、さらには独自のコンテンツの生成まで、幅広い領域に及びます(下表参照)。

GPTが得意とするタスク
大項目 タスク 説明
情報抽出系 キーワードベースの情報抽出 指定されたキーワードまたはフレーズに基づいて、テキストから関連情報を抽出
事実の抽出 テキストから具体的な事実やデータを抽出
要約 長いテキストから主要な情報を抽出し、短くまとめる
文脈理解系 文脈に基づく回答生成 ユーザーからの質問に対する回答を提供し、会話の文脈を理解する
意図理解 ユーザーのテキストからその意図を解釈し、それに適切な応答を生成
チェック系 文法・スペルチェック テキストの文法やスペルの誤りを検出し、訂正提案を行う
校正・編集 テキストの構造やスタイルを改善する提案を行う
内容チェック 提供された情報の正確性や矛盾をチェック
翻訳系 言語間翻訳 1つの言語から別の言語へのテキスト翻訳を行う
異文化コミュニケーションの補助 異なる言語や文化のコミュニケーションを支援
カジュアルな翻訳 スラングや俗語を含む非公式なテキストを理解し、適切な翻訳を提供
分類系 センチメント分析 テキストの感情的なトーンを判断
テキスト分類 テキストを特定のカテゴリやトピックに分類
トピック抽出 テキストから主要なトピックやテーマを抽出
テキストタグ付け テキストにタグをつけて、検索や整理を容易にする
文章生成系 コンテンツ作成 特定のトピックについての記事、ブログ、レポートなどを作成
創作 ストーリーテリング、詩、小説など、創造的なテキストを生成
カスタムレポート作成 特定の指示や要件に基づいてカスタムレポートを生成
プロンプトに基づく作成 ユーザーからのプロンプトに基づいて、特定の内容を生成
プログラミング系 コーディング プログラム自動生成、バグ修正、コメント生成

 これらの機能は、金融サービス業界にとどまらず、一般企業にとって特に業務効率化の観点から非常に有望なものとなるでしょう。一部の業務については、人の手を離れてほぼ自動化され、リソースの再配置により経営効率の向上にもつながります。

生成AIは新しい情報社会のパラダイム

 生成AIの登場というイベントを、もう少し引いた視点で考えてみましょう。ITの世界は、これまでいくつかのパラダイムシフトを経験してきました。

 1つは、1990年代の一般家庭・企業へのPCの普及です。マウス+ウィンドウシステムのGUIを持つPCは、ワープロや表計算といった生産性向上のための使いやすいアプリケーションを通じて、情報複製・共有のための限界費用をゼロに近づけることに成功しました。

 2つ目は、言うまでもなくインターネットの普及です。インターネットの登場により、情報をほぼ無料で広く伝えることが可能になりました。これにより、情報が少なくて価値があるという従来の考え方(希少性)ではなく、情報が多くて価値があるという新しい市場(豊富性)が生まれました。そして、この豊富な情報をまとめてユーザーに提供するグーグルのようなサービス(アグリゲーター)が出てきました。

 3つ目は、生成AIの時代です。生成AIは、人間に比べてほぼゼロと言える限界費用で情報を生成することを可能としました。人間の場合、アイデアやコンテンツの創造は「重い」作業であり、アイデアの立証を含めるとなかなかレバレッジを効かせることはできませんが、生成AIはアイデア創造と立証をアンバンドルし、限界費用ゼロで複製・配布することが可能となったわけです。

 つまり、生成AIは社内の特定業務の効率化・精緻化だけでなく、無限のアウトプット生成能力を生かすことが、最も効果的な使い方となるのです。

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生成AI活用と金融機関「二つの極端なシナリオ」とは
(Photo/Shutterstock.com)
【次ページ】金融サービス業界向け「生成AI活用例10選」、その使いどころとは?

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