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  • 2019/08/28 掲載

これからは特定課題を解決する「バーティカルフィンテック」が主流になるワケ

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フィンテックが注目されてから数年が経ち、フィンテックという言葉を知る人はかなり増えたが、日常的にフィンテックを利用する人はそこまで多くはないだろう。フィンテックが多くのユーザーを獲得するためには、メリットを明確に訴求する必要がある。そのためには、特定の業種や領域において課題解決に貢献する「バーティカルフィンテック」が有力と思われる。

みずほ証券 小川久範

みずほ証券 小川久範

日本アイ・ビー・エムを経て2006年に野村證券入社、野村リサーチ・アンド・アドバイザリーへ出向。ICTベンチャーの調査と支援に従事する。2016年みずほ証券入社。FinTechについては、米国でJOBS法が成立した2012年に着目し、国内スタートアップへのインタビューを中心に調査を行ってきた。FinTechエコシステムの構築を目指す「一般社団法人金融革新同友会FINOVATORS」副代表理事。

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フィンテック領域がバーティカル化する理由とは
(Photo/Getty Images)

一般的な日本人にとってフィンテックとは

 2015年前後から大手金融機関がフィンテック部門を設置したり、オープンイノベーションのプログラムを実施したりしたことで、フィンテックは衆目を集めるようになった。金融機関等が出資するベンチャーキャピタルファンドが組成され、フィンテックスタートアップへ投資を行い、フィンテックのエコシステム(生態系)が発展した。

 ベンチャーキャピタルによるフィンテックへの投資はその後も続き、entrepediaの調査によれば、国内のフィンテック投資額は2018年に過去最高の717億円に達した。

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FinTechスタートアップの資金調達額と調達社数の推移

(出典:entrepedia 発表を基に編集部作成)

 2017年から2018年にかけては、良くも悪くも仮想通貨(暗号資産)が話題を集めた。2017年に仮想通貨の価格が高騰し、日本人にとって最も身近なフィンテックはビットコインであったと言える。ただし、2018年に入り仮想通貨の価格が下落に転じ、仮想通貨取引所において巨額の流出事件が発生したこともあり、国内の仮想通貨ブームは過ぎ去ったと言える状況にある。

 また、仮想通貨を使って資金を集める「ICO(Initial Coin Offering)」への関心も高まった。多額の資金調達に成功したプロジェクトがいくつも誕生した一方、その多くが実体のないものであったとして、各国は法規制の整備に追われることになった。

 2018年の終盤から脚光を浴びたのはQRコード決済である。特にPayPayによる100億円キャンペーンの影響は大きく、PayPayを使うことで初めてQRコード決済を体験した日本人は多かったのではないだろうか。

 世の中にある膨大なデータが価値を生み出すとするデータエコノミーにおいては、データの活用が企業の競争力に繋がるとされる。多くの企業がデータ収集に躍起になる中で、顧客の趣味や嗜好が反映された購買情報を入手できる決済アプリは、にわかにフィンテックの中心分野となった。そして、それをけん引するのは、金融機関でもスタートアップでもなく、大手の事業会社である。

 これまでに多数のメディアで取り上げられてきたこともあり、国内においてフィンテックという言葉は一般にも浸透した。

 実際に、仮想通貨を購入したり、QRコード決済を使ったりしてフィンテックに触れた日本人は少なくないだろう。自身は仮想通貨を購入したことも、QRコード決済を利用したこともない人でも、友人や知人がそれらについて話題にするのを聞いたことがない人は少数派と思われる。

 日本人にとって最も身近で慣れ親しんだフィンテックは、仮想通貨とQRコード決済と言える。これらが国内で浸透した理由として、どちらもユーザーに対してメリットを明確に訴求できたことが考えられる。

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決済や暗号資産だけが「Fintech」ではないのだが……
(Photo/Getty Images)

普及したフィンテックの共通点とは

 仮想通貨は価格変動が大きい上に、価格の高騰に伴い日本円に換算した場合の送金コストも上昇したため、「通貨」として利用することは現実的ではなかった。一方、「アセットクラス(投資対象となる資産の種類)」の1つとして見ると、価格が短期間で数十倍から数百倍にも上昇した実績から、投機を好む人が魅力を感じたことは否めない。

 また、仮想通貨の売買で1億円以上の財を成した「億り人」がメディアで取り上げられたことで、仮想通貨取引の成功例が過剰に強調された面があった。その結果、仮想通貨のリスクに対する理解や、個々人にとって最適な投資対象であるかという判断が十分ではない一方、全てが上手くいった場合のメリットだけが人々に広く共有されていった。

 QRコード決済では、購入金額の一定割合が還元されるキャンペーンを実施しているところが多い。シェアを獲得するための一時的な施策ではあるが、還元率が高いところでは購入金額の20%程度が戻ってくるため、多くの消費者にとっては無視できないものがある。

 特にPayPayが最初に行ったキャンペーンは、一定の確率で購入額の全てが返金される仕組みであったことから大きな話題となり、登録者数が短期間で400万人を突破した。「決済」というサービスの機能自体はどこも大差ない中で、大きなメリットを提示しユーザーに新サービスを体験してもらうことに成功した、プロモーションの成功事例と言えるだろう。

 このように耳目を集めた仮想通貨やQRコード決済に対して、消費者にあまり認知されていないフィンテックは、そのメリットを十分に訴求できていないと懸念される。

【次ページ】業界や領域に特化したバーティカルフィンテックの可能性

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