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  • 2017/10/04 掲載

ICOとは何か? ビットコインなどの「仮想通貨」使った資金調達方法の基礎を解説

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スタートアップが迅速に資金調達できる手段として注目されている「ICO(Initial Coin Offering/新規仮想通貨公開)」。Mozillaの前CEOが30秒で3,500万ドルを調達したなど、話題には事欠かない状況になっています。売買手数料ナシ、小額投資可能、大化けすればハイリターンというメリットがある反面、現在は法律が未整備であるなどの課題も抱えています。ここではICOとは何かを詳らかにするとともに、その仕組みを基礎から解説します。(2017年10月13日一部更新)

執筆:田中 仁

執筆:田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もある。

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毀誉褒貶の激しいICOだが、仕組みを知っておく必要はある

ICOとは何か?
ICO(Initial Coin Offering:イニシャル・コイン・オファリング/新規仮想通貨公開)とは、資金調達をしたい企業や事業プロジェクトが、独自の仮想通貨を発行/販売し、資金を調達する手段/プロセスのことを指します。投資家には「コイン」や「トークン」と呼ばれるデジタル通貨(資産)を購入してもらい、原則として対価は支払われません。別名「クルドセール」や「プリセール」、「トークンセール」などとも呼ばれ、株式を利用した従来の方法(IPO:新規株式公開)以外の資金調達手段として注目を集めています。



ICOを行う企業の8つのメリット

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 一般的に、企業もしくは事業プロジェクトが資金調達を行う場合、銀行などの金融機関からの借り入れを行う(デット・ファイナンス)、もしくは新株を発行して出資してもらう(エクイティ・ファイナンス)のいずれかの方法がありました。

 しかし、信用力がなかったり与信能力が低かったりする新興企業が、デットファイナンス/エクイティファイナンスで資金調達すると、借入利率が高くなったり、十分な資金が調達できなかったりするという課題がありました。

 これに対してICOは、こうした課題を抱えることなく、比較的簡単に資金調達が行えます。ICOを発行する企業のメリットは、以下の通りです。

  1. 集めた資金は配当を支払う必要がない
  2. 集めた資金に株式(会社の所有権)を発行する必要がない
  3. 利子の支払いがない
  4. 投資対象となる事業の価値を投資家に提示する必要がない
  5. ネットを利用してグローバルなマーケットを相手に資金調達できる
  6. 小さなベンチャー企業や個人でも利用が可能
  7. 支払いは仮想通貨のため、インターネット上で払い込みが完結
  8. 投資サイドは小額からの資金提供ができる
  9. 投資家は購入したトークンやコインをインターネット上でいつでも転売可能

 また、投資家やVC側にもメリットはあります。通常、投資家がスタートアップや新興企業へ投資する場合、配当ではなく、成長性に期待して出資が行われます。特に創業期に近ければ近いほど、ハイリスクではありますが、その後のリターンを見込むことができるのです。

 ICOの場合、株式の割り当てや配当は行われませんが、企業として成長していけば、そのトークンは信頼性が高まり、価値を向上させる、すなわち出資しているブロックチェーンが値上がりすることが期待できます。また、ICOであれば、議決権が付与されないため、経営者も経営に関与されるリスクが極めて低く、早い段階から出資できる点が魅力と言えるでしょう。

IPOとは何が違うのか

 資金調達手段としては、IPO(Initial Public Offering/新規株式公開)のほうが有名でしょう。ではICOとIPOでは何が違うのでしょうか。

 IPOは証券市場に新規上場し、株式を発行することで資金調達を行います。このためには証券会社の協力が必要であり、自社だけですべての資金調達を完結させることはできません。また、投資家から資金調達を得るためには、事業計画書や直近決算の開示する必要があります。

 しかし、ICOではこうした作業を行う必要が少ないため、資金調達に伴うコストを大幅に引き下げることができます。

 ただし、よいことばかりではありません。後ほど詳細については触れますが、ICOは手続きが簡便である反面、投資家側を保護するルールが未整備です。ICOは非常にリスクの高い取引であり、投資家は自己責任で行うことを肝に銘じなければなりません。

画像
ICOのトークンの情報が一覧でチェックできる「TokenMarket」のICO Calendar
(出典:ICO Calendar


ICOの手順、具体的な仕組みとは?

 それでは、ここでICOの具体的な仕組み、通貨発行から資金調達完了までの流れを見ていきましょう。

 前述の通り、ICOで資金調達する企業は、まず独自のトークンやコインを発行します。トークン/コインの購入者(投資家)は、その企業が提供するモノやサービスを、そのトークン/コインで購入できます。また、他の仮想通貨との交換も可能です。

 ICOは発行したトークンを事業者のサービスに使えるようにしたことで、出資者と事業者の関係は、トークン購入後も継続することになります。

1.アナウンス

 ICOをする企業は、仮想通貨市場の投資家に対して、トークンの発行を周知する必要があります。一般的には「ホワイトペーパー」と呼ばれる目論見書(のようなもの)を発行し、企業やプロジェクトの魅力を喧伝します。これにより投資家は、企業の目的やその内容に対し、正当性や価値を判断します。

2.オファー

 ICOをする企業は、特定の人物や投資家を対象に、契約条件を規定した「オファー」と呼ばれる内容書を提示します。このオファーにより投資家は、プロジェクトの全容を理解し、投資額や投資期間などを指定します。ICOはトークン発行に証券市場のような基準が設けられていないため、トークン発行者(ICOをする企業)が詳細な条件を規定して開示します。

3.PR活動

 一般的にICOをする企業のほとんどは、小規模で知名度がありません。そのため、ICOを成功させるには「企業のPR活動」が重要になります。「実績が少ない」=「潜在的可能性がある」、「社歴が浅い」=「先進的な事業に意欲的」といったポジティブなことばを駆使し、「投資に値すべきバリューの高い企業」というイメージを確立させましょう。

4.トークン販売開始

 ブロックチェーンを使ったトークンの販売方法は、以下の2つが考えられます。

  1. オファーで開示した最低金額を獲得した段階でトークンをリリースし、当該投資家に分配する方法
  2. それぞれの仮想(暗号)通貨取引所でトークンを個別販売する方法


 なお、仮想通貨取引所で販売する場合には、その取引所で上場することがほとんどです。

【次ページ】ICOの成功事例、30秒で3,500万ドルの調達例も

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