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  • 2025/10/16 掲載

システム全体最適化と一体で進める共通AI基盤の整備 |ふくおかフィナンシャルグループのDX最前線

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多くの金融機関でAIの本格活用が進んでいます。しかし、各部門が個別に導入を進めれば、AIの乱立により重複開発の発生やコストの増大、ガバナンスの低下、データの分断といった課題を招きかねません。この課題に対し、ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)ではシステム全体最適化とAI戦略を一体として推進し、システムをビジネス価値の源泉へと進化させることを目指しています。DX推進本部 システム設計グループの大上記央氏と中山修司氏に、FFGのAI活用促進に向けた具体的な取り組みと狙いを伺いました。

付加価値領域に注力すべくシステムの全体最適化を推進

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大上 記央 氏
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
DX推進本部 システム設計グループ
主任調査役
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中山 修司 氏
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
DX推進本部 システム設計グループ
調査役
 福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行、福岡中央銀行の4行と、デジタルバンクのみんなの銀行を傘下に持つFFG。「一歩先を行く発想で、地域に真のゆたかさを。」という存在意義を理念に掲げ、先進的なチャレンジに取り組みながら、地域に根差したブランドで顧客との関係を深める経営を推進しています。

 2025年からスタートした第8次中期経営計画では、「経済的・物質的・精神的にゆたかな地域社会」の実現を目指し、既存ビジネスの変革や新たな価値創造、強靱な基盤づくりなど5つの基本方針を掲げています。これらを支える上で欠かせないのがシステムの全体最適化です。

 背景にはIT部門が抱える課題認識があります。昨今、デジタル化の進展に伴ってシステム化案件の数が増加の一途をたどる一方、IT人財の育成や採用は容易ではありません。その結果、本来の業務に注力しにくくなり、システムの個別最適化や機能の重複といった課題が見られるようになってきました。

 「今はシステムがなければビジネスが成り立たない時代です。システム自体がビジネス価値を創出していけるようなかたちを目指すべきであり、そのためには自分たちの仕事をより付加価値の高い領域にシフトしていく必要があります」と大上氏は話します。

 このためFFGでは、大上氏らが所属するシステム設計グループが中心となり、システムの企画段階から全体最適を意識して取り組む体制づくりを進めています。業務や最新技術への理解を深めながら最適化を推進することで、今後の全社的なAI活用を支える基盤を作ることを目指します。

 この全体最適化の取り組みは「体制・人財」「プロセス」「ナレッジ・アセット」「共通インフラ」の4つを柱としており、共通インフラに関しては全体最適化に必要なAPIや共通AI基盤の整備を行っています。

全社的なAI活用を支える共通AI基盤を整備

 FFGでは現在、「あらゆることをAI中心に考える」という方針の下で営業改革や業務改革、ビジネスのデジタル化、AIトランスフォーメーション(AIX)に取り組んでいます。そのアプローチは、短期的には既存業務の一部をAIで代替して現場でAIのポテンシャルを実感してもらう「Small Win」、中長期的にはAIを起点にして業務そのものを抜本的に変革する「プロセス変革」を柱としています。

 こうしたAI活用戦略を支えるのが共通AI基盤ですが、整備の発端となったのは“AI乱立の防止”でした。

 「生成AIの台頭に伴い、さまざまなベンダーからAI導入の提案が寄せられ、社内の各部署からも『AIを導入したい』という相談が増えてきました。それらに個別に対応し続けることで、コストの増加や開発の重複といった無駄が生じやすい状況になりつつありました」(大上氏)

 共通AI基盤には、それを防ぐ役割があります。同基盤には、文章の要約や翻訳などの基本的なAI機能(タスクAI)が備わり、これらを各システムから利用することで開発スピードの向上やビジネス・アジリティーの強化、最先端AI技術の速やかな導入、ガバナンス強化といった効果が期待できます。将来的には、自行で開発したタスクAIを外部に提供し、サービス化につなげることも視野に入れていると大上氏は話します。

 また、共通AI基盤の構築にあたってはアーキテクチャー設計にも工夫を凝らしました。既存システムを構成する「画面入出力─業務ロジック─データ」に対し、共通AI基盤は「業務ロジックを補完してより高度化するもの」と位置付けています。共通AI基盤側に複数のタスクAIと大規模言語モデル(LLM)を用意し、各システムが用途に応じて柔軟に切り替えて使うことができます。さらに、AIアプリケーションの多様性を受け入れ、AIの可能性を最大化するために、フロントシステムとタスクAIの間にAPI層を設け、このAPI層をハブとして多様なタスクAIを受け入れられるアーキテクチャーとしています。

業務部門が使えるAIアプリケーション開発環境「Dify」を導入

 前述のAI活用方針におけるSmall Winを実現する手段として、FFGは日本IBMの支援の下、AIアプリケーション開発・運用プラットフォーム「Dify(ディフィ)」の導入を進めています。Difyの特徴は、ノーコード・ローコードにより、ITエンジニアではない社員でも業務に必要なAIアプリケーションを開発できることにあります。これにより、クイックな技術検証が可能なほか、社内に蓄積されたナレッジとの連携や、さまざまなLLMや外部サービスの利用も容易になります。

 Difyを活用した共通AI基盤により、AI活用に伴うさまざまな課題を解決できると中山氏は話します。

 「従来は投資対効果(ROI)が見えづらい要望や机上での検討にとどまらないフィージビリティー検証を行うことが難しく、生成AIの可能性を十分に探るには一定のハードルがありました。Difyを共通AI基盤に導入することで、これらの課題を解消し、新たなニーズに対して迅速な検証が可能になると期待しています」

 検証スピードはどの程度向上するのでしょうか。これまではPoCや実証実験を行う際、ベンダー選定や予算確保・契約、本番導入時の予算確保・契約などに多くの工数を要していました。共通AI基盤でそれらを省略でき、PoCから本番導入までを大幅に短縮できるようになります。

 共通AI基盤の整備以降、FFGにおけるAI活用は一気に加速しており、現在は複数の案件が並行して進んでいます。「半分以上はITエンジニアではない業務部門の社員が自ら作成し、やりたかったことを実現できています。また、Difyを安全かつ継続的に活用するためには、(1)全体運営、(2)案件推進、(3)開発・教育、(4)運用保守の各領域で体制整備が不可欠でしたが、日本IBMにはその導入に向けたコンサルティングなど、当行の立場に寄り添った積極的な提案と手厚いサポートをいただきました」と中山氏は話します。

デジタル基盤の整備はアーキテクチャー、データ、AIの三位一体が鍵

 開発したAIアプリケーションを既存システムで活用する動きも進んでいます。その一例がチャットボットからの利用です。FFGでは、ChatGPTをベースに独自開発したチャットボット「AIユーモ」を標準の業務支援ツールとして利用しています。今後はタスクAIをユーモから使えるようにすることで、機能のさらなる進化を計画しています。

 中山氏は、共通AI基盤のようなデジタル基盤の推進では、「システム・アーキテクチャーとデータ、AIを三位一体で進めることが重要」と強調します。

 「システム・アーキテクチャーを最適化し、AIを適材適所で活用しながらデータを蓄積する好循環を回すことで、ビジネスを加速度的に進化させることができます。AI活用には整ったデータが不可欠といった声も耳にしますが、当社ではAIを使いながらデータを蓄積するというアプローチも取り入れ、今後もAIの活用を広げていきたいと考えています」(中山氏)


ビジネスのためのAI
詳細はこちら:
https://www.ibm.com/jp-ja/products/watsonx-orchestrate

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