- 2026/10/20 06:30 掲載
Web3の二の舞か? 国策「オンチェーン金融」5つの論点、銀行に残る“ある役割”(3/4)
すべてをブロックチェーンに? 提言が引いた“冷静な一線”
ただし、現存しているものすべてをオンチェーン上に持ち上げるべきかという論点について、先のPTの提言では冷静な意見が語られており、本稿ではこの点を強調しておきたい。たとえば、トークン化預金(TD:銀行預金をブロックチェーン上でトークン化したもの)のファイナリティ(決済が取り消されずに確定すること)を確保する観点から、日銀当座預金のトークン化対応が必須であると述べられている。
その一方で、「全銀システム(銀行間の振込を中継するシステム)については、銀行間の資金決済における振込指図等を送受信する仕組みであるとともに、毎日850万件にも及ぶ大量処理を要するなかパブリックチェーン(誰でも参加できるブロックチェーン)での大量処理における迅速性の限界も併せ考えると、現時点においては、ブロックチェーンへの置き換えが必須とまでは必ずしも言えない」と語られている。
本稿では、この点に着目して、オンチェーン金融が実際に到達しうる世界観を展望する。はたして、オンチェーン金融はFinTechやWeb3と同じ道をたどるのか。そして、その世界で金融機関に求められる役割とは何か。
法整備で先行する米国、FRB理事は“慎重論”
米国では、2025年1月に発せられた大統領令(注11)により、デジタル資産・パブリックブロックチェーン・ステーブルコインを米国の金融・産業競争力の基盤として推進する国家方針が打ち出された後、いわゆるGENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)が同年7月に成立している(注12)。本法律により、ステーブルコインが単なる暗号資産の一種という位置づけを超え、決済インフラの一員となりうる道筋がついたことになる。また、SEC(米国証券取引委員会)は、2025年7月にProject Cryptoを発表している(注13)。このイニシアチブでは、米国の証券規制をデジタル資産・ブロックチェーン時代に合わせて全面的に見直し、米国の金融市場をオンチェーン化できるようにすることが語られている。
ただ、我が国と同様、米国の主要関係者の意見は、必ずしもこの世界観を目指すことで一致しているわけではない。たとえば、米連邦準備制度理事会(FRB)のリサ・クック理事は、2026年5月の講演で、「トークン化が従来の市場インフラに取って代わるものではない」と述べており、「むしろ、こうした新たな機能を従来のインフラや確立された法的枠組みと統合することで、金融システム全体の効率性と機能性を向上させる機会が生まれる」という見解を示している(注14)。
一方、民間ではこうした行政の動向をにらみながら実装を進めつつある。最も有名な例の1つが米金融大手のJPモルガンが展開しているJPM Coin(JPMD)である(注15)。これは、イーサリアムのレイヤー2(処理能力を補うために上位に構築されたネットワーク)であるBase上で発行されるデポジットトークン(銀行預金をトークン化したもの)であり、パブリックブロックチェーン上で資金の移動、担保の預託、取引の決済を可能にする。
このように、米国では、SECが描く姿が実現するかは議論の余地があるものの、政策・規制面から市場全体のオンチェーン化を促しつつ、民間銀行が実用インフラを先行実装する動きが並行して進んでいる格好だ。 【次ページ】【5つの論点】日本のオンチェーン金融はどこへ向かう?
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