- 2026/08/11 07:00 掲載
金融庁に「暗号資産・ステーブルコイン課」誕生、ローソン実証で決済はどう変わる?
ローソン実証、「新決済」が始まるワケ
金融庁は2026年8月7日、大規模な組織再編を実施し、新たに「暗号資産・ステーブルコイン課」を設置した。初代課長には安富稔晃(あどみ としあき)氏が就任、「資産運用・保険監督局」の直下に置かれる。また、その前日の8月6日、東京・港区の「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」では、円建てステーブルコイン「JPYC」を使った店頭決済の実証実験が行われた。制度を担う行政と、消費者に最も近い小売の現場が、ほぼ同時に動いた格好だ。
ステーブルコインとは、円やドルなどの法定通貨に価値が連動するよう設計されたデジタル資産である。価格が大きく上下しやすいビットコインなどとは性格が異なり、「デジタル化された決済手段」としての活用が期待されている。
ローソンの実証で、利用者はスマートフォンの「HashPort Wallet」に表示したバーコードを普段の商品と同じPOSレジで読み取ってもらう。従来のようにステーブルコイン専用端末を店舗に置く必要がなく、既存のレジに決済機能を組み込む形を採った。ローソンによれば、POSレジを使ったステーブルコイン決済の実証は国内初という。
さらに8月17日には「ローソンゲートシティ大崎アトリウム店」で、円建てのJPYCに加え、ドル連動型のUSDC、USDTを使った実証も予定されている。対象は現時点では関係者に限られており、本格導入が決まったわけではない。それでも、実験の焦点が「ブロックチェーン上で送金できるか」から、POS連携やレジのオペレーション、決済速度など、実店舗で普通に使えるかどうかへ移った意味は大きい。
ステーブルコインは、「技術として動くか」を試す段階から、「コンビニのレジで違和感なく使えるか」を試す段階へ──。今回のローソン実証をそう捉えると、金融庁が専門課を新設したタイミングとも重なって見えてくる。
PayPay・クレカと何が違う?「手数料ゼロ」の強み
もっとも、消費者からすれば疑問も残る。「PayPayやクレジットカードがあるのに、なぜ別の決済手段が必要なのか」という点だ。経済産業省によると、2025年の国内キャッシュレス決済比率は58.0%、決済額は162.7兆円まで拡大した。そのうちクレジットカードが134.6兆円と82.7%を占め、コード決済も16.6兆円まで成長している。すでに消費者側の利便性はかなり高い。
それでもステーブルコインに期待が集まる理由の1つが、店舗や企業側のコスト構造だ。HashPortが提供する店舗向けサービス「HashPort Wallet for Biz」は、決済手数料ゼロを掲げている。同社は今回の実証で得た知見を基に、将来はAIエージェントを使った「Agentic Payment」を組み込み、企業の送金、決済、精算業務まで自動化する構想も明らかにしている。
ここに、クレジットカードや現在のQRコード決済とは異なる可能性がある。ステーブルコインでは、ブロックチェーン上の価値移転とシステム処理を組み合わせられるため、単に「レジで払う」だけでなく、その後の送金や精算、取引条件に応じた自動処理まで一続きにできる余地がある。
ただし、「ステーブルコインなら必ず安い」と考えるのは早計だ。ウォレットの管理、本人確認、不正利用対策、システム連携など、新たなコストも発生する。何よりPayPayやカードには巨大な利用者基盤があり、ポイント還元なども含めた強力な経済圏がある。
つまり、勝負を分けるのはブロックチェーンという技術そのものではない。利用者に新しい操作を強いることなく、店舗側のコストや裏側の業務をどこまで減らせるのか。その差が見えて初めて、「既存決済を置き換えるのか」という議論が現実味を帯びることになりそうだ。 【次ページ】なぜ金融庁は「専門課」まで作ったのか
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