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  • 2019/09/20 掲載

令和元事務年度の金融行政方針「5つのポイント」、利用者目線重視へと変貌したワケ 

大野博堂の金融最前線(3)

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金融庁は8月28日、昨年より1か月近く前倒して、いわゆる「金融行政方針」を公表した。昨年(平成30事務年度)は内部統制のほか、サイバーセキュリティやFATF(ファトフ)対応など足元の共通課題への対応に重点が置かれていたが、令和元事務年度版(以下、新金融行政方針という)では、「利用者を中心とした新時代の金融サービス」と題し、これまでと異なるアプローチを採用した。引き続き冒頭を飾る、金融デジタライゼーション戦略については、データの利活用の重要性に言及するなど、国際基調路線との整合確保へ動いている様子が色濃くうかがえる。本稿では150ページにおよぶ新金融行政方針で押さえておくべき要点をまとめた。

執筆:NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂

執筆:NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂

93年早稲田大学卒後、NTTデータ通信(現NTTデータ)入社。金融派生商品のプライシングシステムの企画などに従事。大蔵省大臣官房総合政策課でマクロ経済分析を担当した後、2006年からNTTデータ経営研究所。経営コンサルタントとして金融政策の調査・分析に従事するほか、自治体の政策アドバイザーを務めるなど、地域公共政策も担う。著書に「金融機関のためのサイバーセキュリティとBCPの実務」「AIが変える2025年の銀行業務」など。飯能信用金庫非常勤監事。東工大CUMOTサイバーセキュリティ経営戦略コース講師。宮崎県都城市市政活性化アドバイザー。

画像
新金融行政方針では「利用者目線」が重視されている
(Photo/Getty Images)

新金融行政方針の「5つのポイント」

 かつて金融庁では、前事務年度における行政としての振り返りを「金融レポート」として、また当事務年度における行政目標や金融機関への期待及び課題を「金融行政方針」としてそれぞれ公表してきた。

 ただし、2つの文書の作成自体に相応の職員の稼働を要することなどを念頭に、平成30事務年度よりこの2つの文書が統合され、「金融行政のこれまでの実践と今後の方針」として公表するに至っている(これを指して金融行政方針という)。

 ただし、作成目的の異なる両文書の統合によりドキュメント自体が150ページ近くになっただけでなく、文書構造が複雑化し読みにくくもなった。

 そのため、金融機関職員であっても「中身をつぶさに点検している」といった方はわずかにとどまるのが実態だ。

 その中で、とりわけ留意すべきは旧金融レポートを除いた核心部分、すなわち従来の金融行政方針に該当する箇所だ。

 昨年の平成30事務年度ではタイトルはさておき、大きく5つのポイントが示されていたものと筆者は理解している。なお、以下は金融行政方針の章構成やタイトルそのものから抜粋しているものではなく、「金融機関への期待と課題」部分に着目し、重要性が高いと思われる要素をピックアップしたものだ。

■平成30事務年度(昨年)のポイント
  1. デジタライゼーション戦略の推進
  2. 内部不正への対応
  3. 内部監査の強化
  4. サイバーセキュリティ対策
  5. FATF対応

 金融機関における不正融資などを契機に、平成30事務年度金融行政方針では内部不正への対応のほか内部監査に相応のページを割いていた。さらに、2020年東京五輪を見据えたサイバーセキュリティ対策と、2019年10月に第四次対日相互審査を控えたアンチマネーロンダリングを念頭にFATF対応が、それぞれ金融業界共通の課題としてピックアップされていた。

 他方、本年の新金融行政方針をみると、次のようなメッセージが伝わってくる。

■令和元年度(本年)のポイント
  1. 金融デジタライゼーション戦略の推進
  2. 多様化する利用者ニーズへの対応
  3. 顧客本位の業務運営の実践
  4. コンプライアンスリスク管理の高度化
  5. 各階層及び社外役員の機能向上

利用者を中心とした書き振りへ

 デジタライゼーションを強力に推進してきた金融庁のスタンスは、実は平成30事務年度版から様相を変えていた。平成29事務年度では「デジタル化の推進」に過ぎなかったものが、30事務年度ではデジタル化に伴うリスクへの配慮を滲ませる表現となっていたためだ。

 長らくフィンテック企業に寄り添うようなメッセージを発信し続けていた金融庁では、仮想通貨事業者における資金の不正流出が大きな転機となったようだ。

 他方で、国際的な基調がデータ利活用へと進む中で、「データ戦略は金融サービスを提供するプレイヤーのビジネスモデルに多大な影響を及ぼしてきている」としたうえで、データ利活用の積極的な推進を打ち出している。

 ただし、データの利活用は外部へのデータ漏えいなどのリスクも孕んでいるため、利便性の向上に加え、金融機関からみた外部連携先たる新たなサービス事業者におけるサードパーティリスクにも目配りが必要、と解釈できる。

 さらに、フィンテック企業とのアライアンスにより実現されるサービスの多くが、デジタルに疎い高齢者や障がい者を置き去りにしているのでは、といった指摘も一部にあるようだ。

 金融機関がフィンテックの活用と歩調を合わせて店舗統廃合を進めた場合、高齢者や障がい者の側に立った金融サービスをいかにして継続提供すべきなのか。スマホ決済などについて高齢者との親和性はどうなのか。

【次ページ】内部統制や不正避止の取り組みはどうなったのか?

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