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- 2024/04/22 掲載
5割弱が答えた「博士を採用しない」理由、イノベーションを失った…日本の残念な真実
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
「博士人材」不足は日本の死活問題
「イノベーションをけん引する博士人材の不足が、日系企業にとって死活問題だ」とする意見が増えている。経済団体連合会は、「博士人材と女性理工系人材の育成・活躍に向けた提言-高度専門人材が牽引する新たな日本の経済社会の創造-」を2024年2月20日に発表した。国際的な人材獲得競争が激化する中で、イノベーションを起こす高度専門人材の育成・獲得・活用が重要であり、そのために、博士人材と女性理工系人材の育成・活躍に注力すべきだとする。そして、経済界、教育界、政府などが連携・協働して取り組むことが重要としている。
文部科学省は、2024年3月26日に、「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」を取りまとめた。人口100万人当たりの博士号取得者を40年までに現在の3倍に増やす、優れた博士人材の昇格ペースを加速する、そして、産業界には採用拡大と処遇改善を働きかける、としている。
経済産業省の研究会は、2001年3月に「産学イノベーション人材循環育成研究会 審議のまとめ」を公表している。これは、産業界における理系の博士人材の活躍促進についての議論を取りまとめたものだ。
博士取得者は「日本で減少」「米国で増加」
高度専門人材の育成・獲得・活用が重要との見解は、まったくそのとおりだ。人口100万人当たりの博士号取得者数を見ると、日本では2010年の1万6760人から2020年の1万5564人へと減少した。米国は6万7698人から9万4119人に増加しており、対照的だ。しかし博士人材を増やすのは、決して簡単なことではない。高すぎる目標を設定しても、結局は失敗することになりかねない。
実際、文部科学省は1996年度から2000年度の5年計画として、「ポスドク1万人計画」を掲げたことがある。博士研究員などを6割増やし、博士号を目指す学生の支援を強化しようとした。しかし大学や研究機関でポストが不足し、不安定な雇用に就かざるを得ない研究者が増える結果となってしまった。
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