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  • 2019/10/08 掲載

銀行の9割、銀行員の99%は「消える」──なぜもう「銀行はいらない」のか?

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ビジネスモデルの崩壊によって銀行の9割、銀行員の99%は「消える」──衝撃的な予測を掲げるのが『もう銀行はいらない』(ダイヤモンド社)を上梓した上念 司氏だ。その思いは、実は上念氏自身が銀行員だった1990年代から抱いていたという。「銀行が消える日」までのシナリオとはどのようなものか? 上念氏に聞いた。

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:阿部欽一、写真:大参久人

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:阿部欽一、写真:大参久人

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経済評論家 上念 司 氏

金融のビジネスモデルはすでに崩壊している

 もともと自分は銀行員でした。短い期間でしたが、実際に働いてみて、感覚的にこの業種は長くは続かない、なぜ儲かっているのか分からないという思いがありました。

 大学卒業後に入行した日本長期信用銀行のビジネスモデルは1973年頃で終わっていました。重厚長大産業を中心とした設備投資のための長期資金のニーズは、1973年の高度経済成長終了とともに徐々に衰退していったわけです。

 そこにダメ押ししたのがバブル崩壊です。1989年からの日銀の公定歩合引き上げ(いわゆるバブル潰し)によって、短期金利が上昇しました。ところが、長期金利は低いままで、短期で調達した資金を長期に資金を貸し出す長信銀という業態完全に逆ザヤ状態でした。

 私が『もう銀行はいらない』を書いたのは、元銀行員として銀行ビジネスモデルが崩壊しているという思いがあったのと、もう一つ、自分でビジネスをするようになって経験した、銀行との関わりがありました。

 それは個人事業から株式会社化したときに、銀行で口座を開設しようとしたら、新規企業に対して口座開設はできないと、非常に冷たい対応をされたのです。

 要するに銀行は、今、お金を持っていない人には資金を貸さないということです。本来の金融というのは、チャレンジしたい、でも資金がないという人を支援するのが役割だと思うのですが、銀行というのは、その人がお金を持っているか、持っていないかしか見ないのが現実です。

 確かに口座を悪用したり、マネーロンダリングに使ったり、振り込め詐欺のような犯罪目的で開設したりするのは問題です。

 その一方で、ビジネスでチャレンジしようという人は、大抵実績もゼロですし、お金も持っていない。そういう人が銀行口座を開設できずに報酬を銀行振込でも得られないというのは、私からいわせれば「嫌がらせ」以外の何者でもありません。

 日本経済が高度経済成長を達成する辺りまでは、かろうじて銀行の存在意義はあったわけですが、それ以降は、ほとんどなくなってしまったと思います。

 高度経済成長の時代は、監督官庁の言うとおりにしておけばよかったのです。銀行からお金を借りたい人はたくさんいたので、堅そうな人に上から順番に貸していけばビジネスは安泰。ですから、銀行の中では預金を集めてくる営業マンが最も偉かったわけです。

 そのモデルが1973年に崩れて、企業も成長も一段落し、借り手が少なくなってきた。そうすると今度は融資する営業マンの地位が高くなった。これがバブル期まで続きました。この頃はゴルフの会員権や株を買うのに融資するくらいの無茶がまかり通っていました。

 その後、バブルが崩壊すると、今度は運用難の時代。債券ディーラーの地位が高くなり、リーマンショック後は、今度はまた融資を増やさなければならないということで、債券ディーラーと融資部門の戦いが始まります。私から言わせれば何の主体性もない後追いしているだけの経営だということです。


「銀行が消える日」までのシナリオ

 今後、どれくらいのスパンで“9割の銀行が消える”のか分かりませんが、いずれにせよ、時間の問題だと考えています。

 その昔、モールス信号の交換手というのは、高給取りだったことはご存知でしょうか? 専門性が高い花形職業だった。

 でも今、職業として存在していないですよね。日本でも終戦直後の昭和30年ぐらいの人気ナンバーワンの業種というのは石炭産業で、自動車産業はまだ新興勢力でした。

 銀行も僕らが新卒で入社する頃は、潰れるわけがないと言われていて、私が銀行を辞めるときも、さんざんバカにされたものです。しかし、これまでにどれだけ多くの銀行が統合され、なくなったでしょうか。今もいくつかの地銀は潰れるかもしれないと言われています。

 それも半分以上の銀行が赤字経営、しかも複数年にわたる赤字ということで、明らかにオーバーバンキング(銀行過剰)の状態です。

 今の体制がいつまで維持できるかというのは、金融庁のさじ加減次第ですが、農業ですら補助金が出せなくなり、厳しい状況にあることを思えば、補助金や規制頼みの業界というのはいずれ滅びるのではないでしょうか。

 地銀にせよ、メガバンクにせよ、資金の貸し出しによって儲からない点は同じです。銀行は創業以来、貸せば儲かる状況で経営していたので、何を貸せば儲かるのか、実はよく分かっていません。

 そして、経費も減らせない。彼らには支店網の維持、現金の取り扱いの維持といった、どうしても「譲れない一線」があるらしく、やめることができないのです。

 こうした中で、まず進むのは、地銀の統廃合ではないでしょうか。地銀や信金、信用組合の再編が始まります。そして、資金量や支店網でメガバンクに匹敵する銀行が登場し、そこがまた巨大なシステムを作っていく。システムの統廃合は一番コスト効果が大きいですからね。

 それとともに、業務の均一化に着手する。これによって、日本全体が10個弱ぐらいの銀行システムに統廃合されていく──。これがまず考えられるシナリオです。

 加えて、ジャパンネット銀行や住信SBIネット銀行、楽天銀行、ソニー銀行、セブン銀行のような新興勢力による手数料競争ですね。手数料の安さをうたった顧客の奪い合いです。地銀の統廃合と新興勢力による手数料の価格競争。この2つがますます進んでいくでしょう。

 そうすると、ITリテラシーが高くて、手数料の安さを好む顧客は新興勢力に流れていくわけです。

 一方、既存のしがらみに縛られた銀行には、相変わらず窓口に長蛇の列ができて、手数料は高いけど利益率は高くない、儲からないという図式がますます進んでいくわけです。

【次ページ】「金融変革」も新興勢力が牽引すべきだ

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