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  • 2019/11/01 掲載

金融機関が直面する「従来型データ管理」の5つの課題とその解決方法

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日本の金融機関はこれまでデータ利活用に多大なシステムコストをかけてきた。しかし、近年は取り扱うデータ量および多様性が加速度的に増大し続け、従来型のデータ管理が限界を迎え、コスト面・人員面で金融機関のリソースを圧迫している。データ管理における現状の課題と対応方針について先進事例を元に考察する。

デロイト トーマツ グループ ディレクター 早竹 裕士

デロイト トーマツ グループ ディレクター 早竹 裕士

システムベンダーにて国際決済と国債決済を担当した後、大手監査法人にてバーゼル対応、金商法コンプライアンス、業務効率化、新商品開発等を支援。2018年より現職。2019年より、金融機関のリスクビジネス、リスク・ファイナンス管理のDXを推進するデジタルチームのリーダーを務めている。

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金融機関がデータ活用する上での課題と原因と対応策は何か
(Photo/Getty Images)

金融機関の「データ活用」で直面する5つの課題

 金融機関はこれまでも多くのデータを取り扱ってきており、情報処理産業の側面を有してきた。近年はデータの一次的な処理によりビジネスを完遂することに加えて、データの二次的な活用が強く求められており、新たなチャレンジが生じている。

 二次的な活用には、営業推進や顧客への情報提供といった攻めの側面と、財務・リスク管理やコンプライアンス管理といった守りの側面があり、多くはさまざまな切り口での集計・検索が基礎となる。

 二次的な活用局面が増加し、頻繁にデータ要件が追加・詳細化されるようになってきたことで、金融機関は以下のような課題に直面する機会が増えている。

〇課題1:データがない
 利息計算や期日管理などの一次的な業務管理をワードやエクセル等による手管理で行っている場合、システム上にデータとして登録されていない。この事象はシステム化のROIに合わない少量で個別性の強い業務に多く見られる。また、計画や見積りなど、将来に関する情報はシステム内に新鮮なデータがないことが多い。

〇課題2:データが正しくない
 一次的な業務がシステムで行われている場合でも、重要でない項目は入力されないか、入力されていても品質が低いことが多い。たとえば、購入した有価証券を登録するフロント部署では発行体の格付情報は重要でも、住所情報は重要でないが、コンプライアンス管理上は格付よりも住所情報が重要となるかもしれない。

〇課題3:データが利用可能な形式でない〇
 稟議や日報などの文章や、請求書や運用報告書といった計表形式の画像データなど、システム内にあるデータであっても、加工することなく直ちに利用することができないデータがある。

〇課題4:データがどこにあるかわからない
 グーグルのように“気の利いた”検索エンジンに日常生活で慣れてしまうと、類義語の判別もままならない社内イントラの検索機能では、必要な情報へ到達することができない。手動でのタグ付けによる対応もなされているが、タグが多すぎても少なすぎても検索することが難しい。

〇課題5:データが統合されていない
 一次的な業務システムはそれぞれ個別に最適化されたデータの持ち方をしており、二次利用するシステムとは個別に取り決められた形式のデータ授受が発生する。この受け渡しを集約するために本来DWH(データウェアハウス)が用意されていたはずだが、DWHでは頻繁に変化する二次利用要件の頻度や粒度(情報の詳細度)に対応できない場合が多く、十分な機能を発揮していない。DWH変更にかかるコストの高さに加えて、変更による業務影響を把握することが困難であることも機能不全の一因となっている。

 結果として、個別のデータ受け渡しルートが乱立する、いわゆるスパゲッティ化が生じており、スパゲッティ化した先で、更に枝分かれした情報をかき集め、整形・統合する非効率が強いられている。

課題の発生原因を探る2つの側面

 これらの課題の発生原因は態勢面と技術面に求めることができる。

〇課題の原因:態勢面
  1. データ戦略が存在せず、データ利活用方針や収集・整備方針、概念的なアーキテクチャーのコンセプトが定義されていない。

  2. データ価値を測定していないため、システム投資対効果やデータを正確に入力するコスト効果を明確化できていない。したがって、データを正しく入力することに対するインセンティブ(又は罰則)や、モニタリングが機能しない。

  3. データライフサイクルに係る権限と役割(アーキテクト、モデラ―、オーナー、ガーディアン等)、データ利用側とデータ準備側のコミュニケーションルートが明確化されていない。

  4. データがどこから来てどのように加工・活用されるか(来歴)、社内のデータ所在やフローを棚卸・認識できておらず、全社最適の観点で改善すべき対象・優先順位が明確になっていない。

〇課題の原因:技術面
  1. データ取込み技術(RPA, API, OCR, NLPなど)を十分に活用していない

  2. データの来歴(リネージ)分析技術やデータマークアップ(タグ付け)を十分に活用していない

  3. 柔軟性の高いデータ基盤(Hadoop, NoSQL, データ仮想化等)を十分に活用していない

  4. 検索技術(セマンティック検索等)やアナリティクス技術(機械学習、BI等)を十分に活用していない

【次ページ】先進的な金融機関での取り組み例とリファレンスモデル

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