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  • 2023/03/09 掲載

シンガポールとインドで「決済がつながった」理由、 背景にあるデジタル国家戦略とは

FINOLABコラム

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シンガポールとインドの金融当局は、両国で運用されている個人向け銀行口座間デジタル送金プラットフォームの接続開始を発表した。それぞれのシステムは銀行やフィンテックサービスのアプリや携帯番号に紐づけられており、今後は両国の国境を越えて、相手の携帯番号などがわかれば送金が可能となる。両国の動きから、単なるシステム接続というだけでなく、国家戦略としてデジタル決済の国際化を進めていることがみえてくる。

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

FINOLAB設立とともに所長に就任。東大経済学部卒、東京銀行入行、池袋支店、オックスフォード大学留学(開発経済学修士取得)、経理部、名古屋支店、企画部を経て1998年より一貫して金融IT関連調査に従事。2018年三菱UFJ銀行からMUFGのイノベーション推進を担うJDDに移り、オックスフォード大学の客員研究員として渡英。日本のフィンテックコミュニティ育成に黎明期より関与、FINOVATORS創設にも参加。

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シンガポールとインドで「決済がつながった」理由、 背景にあるデジタル国家戦略とは

「シンガポール&インド」決済システムとは?

 シンガポールの金融通貨庁(MAS:Monetary Authority of Singapore)と中央銀行であるインド準備銀行(RBI:Reserve Bank of India)は、個人間のリアルタイムデジタル送金プラットフォームの相互接続の開始を2023年2月21日付で発表した

 これにより、シンガポールの「PayNow(ペイナウ)」とインドの「UPI(United Payment Interface:各銀行アプリと送金アプリを統合的に連携させるデジタル決済プラットフォーム)」が接続し、両国間の個人間で小口送金をする際には、携帯番号もしくは、インド側のUPI登録番号やシンガポール側の仮想アドレスVirtual Payment Address(VAP)によってリアルタイムでの送金が可能となる

 もともとは、2021年9月に相互接続に関する共同開発の構想が発表され、2022年7月のサービス開始を目指していたものの、開発とテストの遅れもあって2023年2月の開始となったもの。

 この発表に際して、シンガポールはリー・シェンロン首相とナレンドラ・モディ首相の両国トップがオンラインで登場。さらにはレビー・メノンMAS長官とシャクティカンタ・ダスRBI総裁も同じ画面に登場して送金のデモを行ったことからも、両国が重要な国家施策として位置づけていることがうかがわれる

 因みに、シンガポールがタイと同様のデジタル送金システムの相互接続を2021年4月に発表した際には、MAS長官とタイ中央銀行総裁による発表であった。

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シンガポールとインドのトップが登場
(出典:シンガポール首相オフィスの資料

シンガポールの展開とは?

 PayNowについては以前にも説明しているが、シンガポール銀行協会(ABS:The Association of Banks in Singapore)が2017年7月に導入した、シンガポール国内の主要行が参加している銀行間送金サービスで、無料で24時間365日利用できる。

 今回の接続に際しては、DBS銀行とLiquidPayというウォレットを提供しているフィンテック企業Liquid Groupの顧客から利用を開始し、1回200シンガポールドル、1日500シンガポールドルを上限に、3月末まで試験的な利用を行ってから、利用範囲と利用金額(当初1000シンガポールドル)を拡大していく予定が発表されている。

 国際的な展開という点においては、前述のタイとの接続(2021年4月)に続いて、同様のデジタル決済の接続をASEAN地域内で拡げていくことを狙って、インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシアの各中央銀行とともに、MASは2022年11月に地域決済協定を締結している。

 協定参加国のうち、タイに続く実装はマレーシアと推測されているが、シンガポールが主導して、地域決済の盟主として地位を固めつつあることは間違いない。小口決済が中心のデジタル決済接続であるため、地域内の人流を活性化し、移民労働者の郷里送金の利便性向上に寄与することが予想される。

 さらに、シンガポール国内ではPayNow Corporateとして法人向けにもサービス拡張を進めていることから、将来的には地域内の決済インフラ活用が商取引にも活用されていく可能性がある 【次ページ】インドのデジタル決済整備とキャッシュレス推進の関係とは?

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