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  • 2021/05/14 掲載

「他国へスマホで即送金」、シンガポール・タイ間で“システム相互接続”が実現したワケ

FINOLABコラム

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シンガポールとタイの金融当局は、両国で運用している個人向け銀行口座間デジタル送金システムの接続開始を発表した。それぞれのシステムは携帯番号に紐づけられており、今後は両国の国境を越えて相手の携帯番号さえわかれば送金が可能となる。このような2国間のデジタル送金システムの相互接続は世界で初めてという。
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デジタル送金から何を学ぶか?
(Photo/Getty Images)
 

両国金融当局からの発表

 シンガポールの金融通貨庁(MAS:Monetary Authority of Singapore)とタイの中央銀行(BOT:Bank of Thailand)によって、2021年4月29日付で発表されたのは、シンガポールの「PayNow(ペイナウ)」とタイの「PromptPay(プロンプトペイ)」という両国で運用されている個人間のリアルタイムデジタル送金システムの相互接続である。

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Launch of PayNow-PromptPay Linkage
(出典:MAS

PayNow(ペイナウ)とは?

 PayNowとは、シンガポール銀行協会(ABS:The Association of Banks in Singapore)が2017年7月から展開している、個人間のデジタル送金サービスである。シンガポール国内の銀行間での送金・受け取りを可能にし、無料で24時間365日利用できる。参加行は2021年4月末時点で下記の9行であり、シンガポール国内の個人間送金がほとんど網羅される形だ。

  • ・Bank of China
  • ・Citibank Singapore
  • ・DBS Bank/POSB
  • ・HSBC
  • ・Industrial and Commercial Bank of China
  • ・Maybank
  • ・OCBC
  • ・Standard Chartered Bank
  • ・UOB

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PAYNOWの提携銀行

 PayNowは基本的にはスマートフォンでの利用が想定されており、送金相手の携帯電話番号を入力するだけで送金でき、数分以内に携帯番号と連動した銀行口座に入金される。2021年3月の利用額が60億シンガポールドル(約5,000億円)に達しており、決済インフラとして国民生活に定着している。以前にはDBSの「Pay Lah!」のようにシンガポール国内の個別行が提供する個人向け送金サービスも存在したが、「ペイナウ」登場によって、淘汰が進みつつある。

 2018年8月からは、法人向けの「PayNow Corporate」も開始されており、企業間の小口送金や個人が店舗で支払う場合にも利用できる。リアル店舗やオンラインショップでの支払いには、携帯番号の他に事業者固有の番号(Unique Entity Number: UEN)も設定されており、さまざまな利用シーンに対応できるようになっている。

Prompt Pay(プロンプトペイ)とは?

 銀行口座に携帯電話番号を紐づけることで、銀行アプリやインターネットバンキング、ATM上で簡単に送金ができるタイ国内のデジタル決済システムで、2017年1月に本格始動している。同年8月には、同じ決済インフラの上で、国内のQRコード決済を統一したサービスも導入されるなど、タイはキャッシュレス政策を着々と推進させている。

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「同じ決済インフラの上で、国内のQRコード決済を統一したサービスも導入」
(出典:BOT

 プロンプトペイの利用は、携帯アプリやネットバンキングの場合には無料であるが、ATMで利用する場合には以下のような手数料がかかることになる。

送金金額 取引手数料(ATM利用)
5,000バーツまで 無料
5,000~3万バーツまで 2バーツ
3万~10万バーツまで 5バーツ
10万~20万バーツまで 10バーツ

 タイでは、銀行口座保有者が8割超となっていたが、クレジットカードの普及率が10%に満たない状況であったのに対し、プロンプトペイの登録は導入後4年ほどで総人口の約3分の2にあたる4500万人超となり、2021年3月の利用額が2兆バーツ(約7兆円)を超える水準となっている。

 このことからも、プロンプトペイがキャッシュレス決済手段として普及していることがうかがわれる。さらに、三菱フィナンシャルグループ(MUFG)傘下にあるタイのアユタヤ銀行は、同行のプロンプトペイ利用顧客が、日本の商業施設で支払いができるサービスを2019年より開始するなど、海外連携も開始されていた。

【次ページ】なぜ他国への「銀行口座間デジタル送金」を実現できたのか

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