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  • 2024/02/07 掲載

キャッシュレス化「急上昇」で何が起きる?インフレの2024年「10のお金のキーワード」

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日本のキャッシュレス決済比率が急上昇しており、政府が掲げた「2025年までにキャッシュレス比4割程度」という目標を前倒しする勢いである。その一方で、物価高(インフレ)や新NISAにより家計防衛や資産形成も大きな注目を浴びている。また法改正に伴って、中小零細企業の資金調達(SME)なども活性化する見込みで、API・クラウド・組込型金融、生成AIの活用なども広がる。2024年のお金にまつわるテクノロジー(フィンテック)は世の中をどう変えていくのか。ここではインフキュリオンが示した「2024年の “お金”にまつわる潮流・キーワード」を解説する。
執筆:斎藤 健二
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物価高と資産形成も大きなキーワードだ(後ほど詳しく解説します)

「2024年のお金」はどうなるのか?

 2024年は“マネー”にとってどんな年になるのか。本稿では金融サービスの開発を行うインフキュリオンが開催した「2024年の “お金”にまつわる潮流・キーワード」発表会で「2024年のフィンテック10トレンド」を示したインフキュリオン コンサルティング 森岡 剛氏の論考を紹介する。最初に総論として捉えておきたいのは、「日本のキャッシュレス決済比率が急上昇している点」だ。

 政府は「2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする」という目標を掲げているが、経済産業省の調べで2022年のキャッシュレス決済比率がすでに36%に達したことがわかった。

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経済産業省の調査によると2022年のキャッシュレス決済比率は36%に

 前年2021年からの増加率は3.5ポイントとこのまま伸びが続けば、「2023年の時点ですでに40%を達成しているかもしれない」(森岡氏)という状況だ。この急速なキャッシュレス決済の伸びの背景には何があるのか。インフキュリオンが発表した「2024年のフィンテック10トレンド」から読み解く。

 同社の挙げる10トレンドとは「『お金はアプリで動かす』拡大、『生活のフルデジタル化』へ」「物価高での家計防衛と資産形成」「地域活性化に向けたデジタル消費振興策」「公共交通の決済多様化 タッチ決済とコード決済」「SMEを含む企業向けのフィンテックが活性化」「API・クラウド・組込型金融の金融実装が進む」「大規模言語モデル(LLM)の事業活用と業務活用」「ステーブルコインとデジタル証券の実現」「緊急度を増すキャッシュレス決済の安全と安心」「CBDC(デジタル円)のイメージ具体化」である。

お金を「アプリで動かす」ことで「フルデジタル化」が進展

 キーワードの1つ目は「『お金はアプリで動かす』拡大、『生活のフルデジタル化』へ」だ。キャッシュレス決済普及の歴史を振り返ってみると、それは“お金の動かし方”の多様化の歴史だった。政府がキャッシュレス決済振興を決める前の2015年当時、決済や送金の主な手段は「クレジットカード」「電子マネー」「現金」「銀行振込」の4つしかなかった。

 ところがキャッシュレス決済比率が30%に達した2020年には、そこに「コード決済」「BNPL(後払い)」が加わる。そして2023年にはさらに、「タッチ決済」「ブランドでビット」「経費精算プリペイド」「お店Pay」「地域限定アプリ」「コード決済(送金)」「ことら送金」など、決済・送金手段が爆発的に増加した。

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個人と企業のお金の動き方・動かし方 多様化の歴史
(出典:インフキュリオン 報道発表)

 これらの中心にあるのが、「PayPay」を代表格とする“Payアプリ”だ。もともと日本はモバイルバンキングの普及率が20%未満と先進国の中で最下位となっており、紙とハンコの国だった。それを変えたのが各種のPayアプリだろう。店頭でスマホを開き、アプリを操作するのは今や当たり前。アプリを使い、クレジットカードや銀行口座からチャージを行うのも日常の風景になった。

 そこにちょうどコロナ禍が重なり、モバイルバンキングのニーズも急拡大する。紙の通帳からアプリ通帳、また銀行振込などをスマホやPCで行う人が増加したのもこの頃だ。

 これは「お金をアプリで動かす」ことが当たり前になってきたということと同時に、紙とハンコから「生活がフルデジタル化」してきたことも意味する。そして2024年は、この動きがさらに加速するだろうという。

物価高対策として「ポイントと投資」が人気

 2つ目のキーワードは「物価高での家計防衛と資産形成」だ。

 総務省が発表している消費者物価指数(生鮮食品除く)は27カ月連続して前年同月比が上昇している。2023年11月の結果はやや落ち着いてきたものの、日銀の物価目標である2%を上回る水準での上昇が続いている。インフキュリオンの調査でも、89%が「物価の上昇を感じたことがある」と答えており、物価高はもはや共通認識だ。

 物価高に対する対策として人気なのが、ポイントと投資だ。「物価高をきっかけとして始めたサービス」のトップには「ポイントアプリ」が来ており、さらに「ポイントカード」「電子クーポン」なども並ぶ。少しでも還元を受けることで、物価高を和らげようという考えだ。

 もう1つがポイント投資や株式投資などの資産形成サービスだ。ネット証券大手のSBI証券と楽天証券は、これまで資産形成に関心のなかった若年層を取り込み急成長した。SBI証券が仕掛けた売買手数料の無料化施策も呼び水となり、2023年9月末時点で、SBI証券(グループ含む)の口座数は1106万を超え、楽天証券は968万口座に達している。重複はあるにしても、2社だけで約2000万人が資産運用を行っていることになる。

 資産形成にさらなる追い風も吹いている。2024年からスタートした新NISA制度だ。これまで限定だった非課税期間が恒久化され、さらに運用可能額も最大1,800万円と大幅に拡大した。

 株価も好調だ。1月22日の日経平均株価は3万6,000円を超え、バブル期以来の最高値更新が続いている。物価高の先が見通せない中、家計を守るために資産運用をスタートする人が2024年は増加しそうだ。

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物価高での家計防衛と資産形成
(出典:インフキュリオン 報道発表)

地域デジタル消費振興サービスは「利用意向」が高い

 3つ目は「地域活性化に向けたデジタル消費振興策」だ。

 全国展開する大手Pay事業者の勢力が拡大する一方で、地域に根付いた金融サービスがジワジワと広がっている。森岡氏によると「2022年末時点で、135件の地域通貨、地域決済、地域ポイントが稼働している」という。

 神奈川県平塚市が展開する「ひらつか☆スターライトポイント」や、岩手県盛岡市が運営する「MORIOペイ」、東京都板橋区が提供する「いたばしPay」、岐阜県の複数市で利用できる「さるぼぼコイン」、神奈川県が定期的に実施する「かながわPay」などが挙げられる。

 これは、従来は紙などで発行していた地域限定商品券などを置き換えるものだ。地域内でのみ利用可能とすることで、地産地消を促し、地域振興を狙う。また地域住民への給付業務を効率化できる可能性もある。

 インフキュリオンの調査によると、これらの地域デジタル消費振興サービスは、利用したことがある人こそ10~35%程度とまだ少ないが、利用意向は54~74%と高くなっている。スマホの普及、コード決済への慣れなどにより、普及が加速する可能性を秘めている。

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地域活性化に向けたデジタル消費振興策
(出典:インフキュリオン 報道発表)
【次ページ】2024年「10のお金のキーワード」残り7つの実態は?
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