- 2026/08/13 07:00 掲載
金融庁レポートで判明、なぜ「同じ条件で火災保険に入れない」企業が増えるのか
「同じ条件」が通じない、企業保険に何が起きた?
金融庁は8月6日、「2026年 保険モニタリングレポート」を公表した。今回、企業にとって見過ごせないのが、企業向け保険の引受環境を巡る変化である。同庁によると、大手損害保険会社によるアンダーライティング(U/W=リスクを評価し、補償内容や保険料率などを決めること)の見直しを受け、高リスク企業や大規模工場を持つ企業では、従来と同じ条件で保険調達が円滑に進まないケースが増えているという。具体的には、損保各社が十分なリスク情報を基に保険料率を設定し、引受金額を抑えたり、企業側も一定額を負担する免責金額や縮小てん補率を設定したりする方向へ動いているという。これまで毎年の更新を前提に、企業との長期的な関係を重視してきた日本の企業保険が、大きく姿を変わろうとしているのだ。
金融庁は、このU/W方針の見直しについて、国際的な再保険市場を利用する上で「不可欠かつ不可逆な構造変化」と位置付けている。つまり、一時的に保険料が上昇しているという話ではない。企業側も「これまでと同じ保険を、これまでと同じ損保から買う」ことを当然視できなくなりつつあるということである。
では、なぜこうした変化が起きているのか。その背景を追うと、自然災害や再保険市場だけでなく、日本の火災保険が長年抱えてきた構造問題が浮かび上がる。
実は「12社不足」は昔から、18年分データの真実
その象徴として金融庁が示したのが、火災保険の「異常危険準備金」である。異常危険準備金とは、大規模な自然災害などで保険金支払いが急増した際に備えて損保会社が積み立てておく準備金だ。金融庁によると、2025年3月末時点では、火災保険を扱う28社のうち12社が必要額に届いていなかった。ただし、この「12社」を2026年に突然発生した異変として捉えるのは正しくない。
金融庁が掲載した2006~2024年度の推移を見ると、未達成社は2006年度の17社から減少したものの、その後も一貫してゼロにはなっていない。最少だった2018年度でも8社で、2019年度は11社、2020年度は12社。その後も2021年度10社、2022年度11社、2023年度11社、そして2024年度12社だった。「昨年11社から今年12社へ急増した」のではなく、およそ20年にわたり8~17社が未達となる状況が続いてきたのである。
背景には、自然災害による取り崩しが繰り返されてきたことがある。2025年度は巨大台風などこそなかったが、8月6日からの大雨では3万3,421台・件に対して約678億円の保険金が支払われた。日本損害保険協会 の集計でも確認できる数字だ。
一方、2025年度からは異常危険準備金を取り崩す基準が厳格化された。金融庁は準備金残高が増える見通しを示している。ただし、今回示された「12社」は2025年3月末時点の数字であり、新基準の効果を示すものではない。今後、この長年の積立不足が本当に解消へ向かうのかが焦点となる。 【次ページ】なぜ損保は「契約を取る」から「リスクを選ぶ」へ
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