- 2026/09/16 06:30 掲載
なぜMUFGやメルカリ、Revolutは「みんなの銀行」を選ぶ?答えは“3つの売り方”
ネットニュース編集部で編集者兼記者、デスクを経て2005年6月から独立して現在に至る。専門はモバイル、決済、デジカメ、セキュリティなど。発表会取材、インタビュー取材、海外取材、製品レビューまで幅広く手がける。
38万→170万口座へ…みんなの銀行「5年間の足跡」
みんなの銀行は2021年5月28日にサービスを開始した。将来的な「BaaS専業銀行」としての機能提供も見据えつつ、まずはB2Cで一般のお客さまに支持されるサービスとシステムを徹底的に磨き上げる道を選んだ。初年度にはピクシブ支店、テンプスタッフ支店を開設し、早くもBaaSを展開。2年目には参照系APIの提供を開始し、パートナーは6社へ拡大した。
永吉頭取は「ミニマルに銀行を作り、必要最低限のデジタルウォレット機能からスタートした」と振り返る。その後は機能を段階的に拡充し、2023年にはローン機能や更新系APIを実装。パートナーは11社となり、4年目には24社、口座数は130万口座を突破した。
5年目にはデビットカード(リアルカード)の発行に加え、メルカリやDMM.com、ゲオ(viviON)などとの連携も開始。2026年9月にはパートナー38社、口座数170万口座へ拡大した。さらに法人口座や複数口座にも対応し、利用シーンの拡大を進めている。
開業から5年間を振り返ると、口座数170万という成果以上に、BaaSを支える機能やパートナー網を整備し、「銀行機能を提供するプラットフォーム」としての基盤を築いた期間だったと言えそうだ。
MUFGやメルカリが“地銀発銀行”のシステムを採用したワケ
そして最も大きな発表が、三菱UFJ銀行に対するバンキングシステムの提供だろう。これは、三菱UFJ銀行が進めるデジタルバンクのシステムにみんなの銀行の技術を使うというもので、Google Cloud上のフルクラウド型銀行システムを初めて外部提供した。永吉頭取は、「これまでのアジャイルの開発や(みんなの銀行の)安定的な稼働が評価されて採用された」と話す。世界的にも大手の三菱UFJ銀行が採用したことで、永吉頭取は同社のシステムの優位性やプレゼンスが高まるとしており、日本だけでなく海外でのシステム採用にも積極的に展開していきたい考えを示す。
この案件は、ネット銀行がメガバンク向けに銀行システムを提供するという点でも象徴的だ。従来、銀行システムは富士通、日立、NEC、IBMなど大手ベンダーが提供してきた。しかし、三菱UFJ銀行ほどの規模になると、既存勘定系をクラウドネイティブへ全面刷新するのは容易ではない。
一方、新規デジタル銀行であれば既存資産に縛られず開発できる。みんなの銀行は、その「ゼロから作った銀行」を5年間実運用し続けた実績が評価されたと言えそうだ。勘定系システムベンダーが担ってきた領域に、クラウドネイティブなデジタル銀行が参入したことになり、銀行システム市場にも新たな競争軸が生まれる可能性がある。
つまり、競争の相手は他の銀行だけではない。銀行システムを提供してきたITベンダーや、将来的にはクラウド事業者まで含めた市場へ踏み込み始めたとも言える。
メルカリとの連携も強力だ。メルカリはアプリのアクティブユーザー数が2000万人を超えており、そのアプリに組み込む形で銀行サービスを追加したところが目新しい。メルカリアプリ内から「残高の即時出金」でその場で口座が開設でき、手数料なく銀行口座へメルカリの売上金などを出金できる。永吉頭取も、「かなりの口座数、取引が増えている」と明かす。
メルカリとの連携は、銀行が顧客を集めるのではなく、顧客がいる場所へ銀行が出向く発想とも言える。利用者が日常的に使うアプリへ銀行機能を組み込むことで、金融サービスの利用ハードルを下げる組込型金融の代表例となっている。
【次ページ】メルカリアプリに“組み込む”銀行…組込型金融の手応え
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