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- 2026/10/05 06:30 掲載
AI需要は絶好調、台湾の輸出受注も71%増…それでも半導体株が沈んだ“真犯人”の正体
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。
“2回の利下げ”はなぜ消えた? FRBを狂わせた“ある誤算”
思い返してみると、年初の段階で米国の金融政策は2回の利下げが予想されていた。賃金上昇率が緩やかに低下するもとで、労働集約的なサービス価格のインフレ率が低下し、全体のインフレ率を下押しするとの見立てであった。関税によって押し上げられていた財価格が低下に向かうこともインフレの低下要因と認識されていた。その見通しを狂わせたのは、3月以降のイラン情勢悪化に伴う原油価格急騰である。原油価格の上昇によって消費者物価指数は5月に前年比プラス4.2%へと急伸し、FRB(米連邦準備制度理事会)が重視するPCEデフレーター(個人消費支出物価指数)も同プラス4.1%と物価目標を大幅に上回ってしまった。PCEデフレーターは原油価格が急騰する直前の2月にはプラス2.8%まで鈍化していたので、大きく計算が狂った形になる。
ここで、FRBの金融政策によって原油価格を直接コントロールすることはできないのだから、原油価格が低下するまで待てば良いとの見方もある。実際、FRBは9月まで利上げを待ったのだから、部分的には、そうした見方に基づいて行動したことになる。
物価高を“放置”できないFRB…株価の“雨雲”が晴れる条件
ではなぜ、FRBは利上げに動いたのだろう。それは、物価高を放置する姿勢を過度に見せてしまうと、人々はFRBが物価高を容認すると思うようになり、それによって実際のインフレ率が加速してしまうという、過去の経験があるからであろう。予想インフレ率の高まりが実際のインフレ率を高めてしまうのは、企業行動を想像すると分かりやすい。たとえば、インフレ率が2%程度の状態のとき、企業は来期の計画を立てる際などに2%程度のコスト増を織り込み、自社製品・サービスの価格を決定する。
採算の維持・向上を狙うのであれば、企業は2%かそれ以上の値上げを計画するのが自然であろう。その予想インフレ率が3%などへと上昇すれば、予想が自己実現する形で、実際の物価上昇率も上がる。
今次局面に置き換えると、原油価格が高止まりする状況下で、中央銀行が金融引き締めを先送りすれば、人々は「FRBは物価高を容認する。インフレ率が加速するかもしれない」と予想するようになり、実際のインフレ率が加速する恐れがあった。
WTI原油価格(米国産原油の指標価格)が100ドルを超える状況だと、いくらサービス価格や賃金が落ち着いていたとしても、FRBとしては静観(政策金利の据え置き)を続けることは難しくなる。今や金融市場では年内に1.3回程度の利上げがあるとの予想が支配的になっている。
もちろん、原油価格が下がれば、利上げの必要性は薄れる。そうなれば、株式市場を圧迫してきた米国の利上げ観測が急速に後退し、市場を覆ってきた雨雲が一気に晴れる可能性がある。11月の米中間選挙に向けて、ガソリン(含む軽油)高に苦しむ有権者の支持を獲得すべく、トランプ大統領がイランとの合意を急ぐ展開は念頭に置いておくべきであろう。
日銀の利上げはどこまで続く? ペースを落とす“ある指標”
他方、日銀は利上げを続けるだろう。消費者物価の上昇率は、ガソリンの暫定税率廃止と補助金に加え、電気・ガス代の補助、さらには教育関係の無償化によって表面的には2%を割り込んでいるものの、そうした特殊要因を除いたベースでは2%超で推移している。この間、毎月勤労統計(厚生労働省)における賃金上昇率(一般労働者の所定内給与)が3%近い基調にあることを踏まえれば、政策金利の引き上げを中断する理由に乏しい。2027年末までは3~4カ月に1度の利上げが続き、最終的に政策金利(ターミナルレート)は2%を超えると思われる。
なお、為替の円高以外の要因で利上げが終わる、あるいはペースが緩やかになるとしたら、それは「企業金融」の急速な悪化ではないか。企業金融とは、いうなれば企業の資金調達環境であり、その悪化は設備投資の減速や雇用(人件費)の削減につながり得る。利上げによって企業行動が鈍化し、経済成長率が減速するもとで、物価上昇率が低下する可能性が高まる。
今後は、企業金融を映す日銀短観(全国企業短期経済観測調査)で示される「貸出態度判断DI」や「資金繰り判断DI」を注視する必要があるだろう。
では、こうした金融引き締めの逆風にさらされるなか、株価を左右するもう1つの柱である企業業績はどうなっているのか。実は、株価の調整とは裏腹に、ある数字が大きく切り上がっている。 【次ページ】利益予想は45%増なのに…株価だけが“割安”に沈んだワケ
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