- 2026/08/28 06:30 掲載
日銀9月利上げでも円安は終わらない? 為替を動かす“真の原因”と投資環境4つの論点
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。
日銀は9月利上げか、それでも円安が終わらない“2つの理由”
日銀が9月にも利上げに踏み切るとの観測が盛り上がっている。日銀は為替相場の安定を通じて、基調的な物価上昇率が2%を上振れていかないように、金融政策を調節するという予想・期待が強くなっている。では、日銀の利上げによって円安傾向が終わるかといえば、それは難しいと考える。一方で筆者は163円を超えて円安が進行するとも予想していない。理由は主に2つ。
1つは、日米協調介入によって、163円近辺に大きな壁が作られたことがある。政府対投機筋という負けられない闘いに、米政府が参戦したことの「精神的」な意味合いは大きい。参戦した以上、米政府は円安抑制に失敗したという黒歴史を作りたくないだろう。
そしてもう1つは、米金利低下によってドル安主導の円高が進むと考えていることがある。米国は原油高によってヘッドライン・インフレ率こそ高まっているものの、エネルギーを除いたコア物価は落ち着いており、その背景にある賃金上昇率も安定していることから、現在織り込まれている利上げ観測は徐々に後退していくと考えられる。
筆者は、引き続きFF金利(米国の政策金利)が年内は据え置かれると予想しており、来年には利下げの環境が整うと見ている。そうした環境が現実のものになるとの見通しが広がれば、米金利は低下し、ドルは弱含むだろう。
なお、FF金利先物が利上げを常に織り込んでいるのは、ウォーシュ議長が多くを語らない姿勢を維持しているため、唐突な利上げに対する保険的な動きがあると見られる。
日銀利上げでも円高にならない? ドル円を動かす“真の主役”
日銀の利上げが円高に結びつかないと考えるのは、ドル円と日米金利差の説明力が落ちている一方、米10年金利単独との相関が依然として強いことが1つである。日米金利差は2025年以降に主として円金利上昇によって1%以上縮小したものの、これまでのところ円高方向への動きは観察されていない。このことは、日本の金利上昇が為替動向に重要な変化をもたらさなかったことを意味する。
「日銀のせい」は本当か? 韓国ウォン安が示す“ある事実”
もう1つ重要な事実は、金融政策が中立的な韓国においても通貨安に歯止めがかかっていないことがある。円安を巡っては、日銀の緩和的な金融政策がやり玉に挙げられることが多い。しかしながら韓国の事例を踏まえると、「日銀説」には疑問が生じる。韓国の政策金利は2.75%であり、同国の消費者物価上昇率と比較すると引き締め寄りの中立であり、実質金利(政策金利-消費者物価上昇率)はゼロか小幅なプラス圏で推移してきた。
ここで米韓金利差とウォン相場を眺めてみると、やはり説明力が落ちている。円と同様に、ウォンも米10年金利単独との相関はさほど崩れていない。これら簡潔なデータから言えることは、円もウォンも米金利の変動が主要な要素であるということである。
米国の金融政策については、年初時点で2回の利下げが見込まれていたものが、原油高を受けて1回超の利上げが織り込まれるに至った。そうした過程でドルが買われることに違和感はない。
日銀の利上げが円高要因であること自体は否定しない。ただし、これら事実を踏まえると、その影響は小さいと考えるべきであろう。
仮に9月に利上げを実施しても、為替相場が転換するには米金利の低下を待つ必要があるように思える。では、その米金利を左右する米国経済は、今どのような状態にあるのか。 【次ページ】7月の米雇用統計はなぜ弱い? 夏場に沈む“季節のクセ”
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