- 2026/07/30 07:00 掲載
調整色強まる半導体株、「AIバブル崩壊」は本当か?台湾・韓国データが示す相場の真実
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。
AI半導体相場を牽引するのは誰? 勝敗を分ける“2つの企業群”
6月下旬頃からAI・半導体関連株の上昇が一服し、7月入り後に調整色を強めている。もっとも、ひと口にAI・半導体関連株といっても、その中身は設備投資をする側と、それらに関連する財を供給する側に大別される。前者はハイパースケーラーと呼ばれ、主に米国のメガテック企業で巨大なデータセンター網を持ち、クラウドサービスやAI計算基盤を世界に提供する。一般的にはアマゾン、マイクロソフト、グーグル、メタ、オラクルを指す。中国のアリババ、ファーウェイ、テンセントなどを含める場合もある。
後者には、米エヌビディア、台湾TSMCのほか、韓国サムスン電子、SKハイニクスといった半導体の製造に直接関わる企業群に加え、日米欧の半導体製造装置企業群が含まれる。日本勢は、メモリメーカー1社に加え、グローバルニッチなどと言われる半導体部材、電子部品、データセンターに必須となる電線などを提供する。
これまでの半導体株の急騰を巡っては、ハイパースケーラーの設備投資動向が最も重要な要素とされてきた。それゆえにハイパースケーラーの決算が強いと、設備投資がさらに拡大するとの思惑から「つるはし銘柄」が物色の対象になってきた。ここでいう「つるはし銘柄」とはAIの開発を手掛ける企業群ではなく、半導体製造装置などを供給し、AI開発を周辺から支える企業群である。
「AIバブル崩壊」は起きる…? 答えを握る台湾の最新経済指標
これは今後の株式市場を読む上で、多くの投資家が答えを知りたい最大の疑問であろう。むろん、このAI投資の隆盛がいつまで、どれだけ続くのかを正確に予想することはできない。ただ、株価水準の妥当性を検証するうえで役に立つ指標はいくつかある。そうした点において筆者は半導体製造に深く関連する台湾と韓国、そして日本の経済指標を定点観測している。まず、半導体受託製造世界最大手のTSMCを擁する台湾の経済指標に目を向けてみる。具体的に注目するのは、台湾企業が海外から受けた輸出受注額である。
最新の数値を見ると、6月の前年比伸び率は+59.4%と、5月の同+47.2%から加速し、市場予想の同+47.3%を大幅に上回った。輸出受注は2023年に減少へ転じ、その後2024年に反転上昇した。2025年前半にはやや足踏みしたものの、同年後半以降は鋭角的な増加を遂げている。現在のところ、伸び率が明確に鈍化する気配は乏しい。
輸出受注の伸びをけん引したのは、もちろん半導体関連であった。輸出受注全体の約8割を占める電子製品と情報通信技術製品(ICT)は、それぞれ前年比+79.9%、同+81.9%と極めて強い伸びを示した。いずれもAI関連需要の動向に大きく左右される重要品目である。
なお、7月21日にはTSMCが手掛ける高性能コンピューティング向け半導体、AIチップなどについて「当初計画を上回る発注には追加料金を求める。2027年からは通常の値上げ幅に10~15%を上乗せする」と報じられた。高性能半導体については、出荷が需要に追いつかず、価格が急騰する現在の状況がしばらく続くと判断される。
もう1つ、台湾の経済指標で注目すべきは製造業PMIである。この指標は、生産や新規受注などが前月に比べて増えたか減ったかを企業に尋ねるアンケート調査で、一般的には50を上回ると景況改善の目安とされる。そのPMIは6月に55.2と、5月から0.9ポイント低下したとはいえ、依然として好調を示す領域を維持した。
内訳に目を向けると、新規受注が56.9と直近12カ月の最高値付近にあるほか、受注残も56.2と高水準にあった。そうしたなか、販売価格は64.1と高止まりしている。原油高の影響もありそうだが、半導体関連製品の価格急騰が寄与していると見られ、名目値で見た台湾経済が急激な拡大基調にあることを物語っている。台湾の名目GDP成長率は1-3月期に前年比+18.8%と約50年ぶりの伸びを記録した。実質GDP成長率は+14.6%、GDPデフレーターは前年比+3.7%であった。 【次ページ】暴落のサイン? 「AIバブル測定器」として機能する“ある指標”
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