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- 2025/03/04 掲載
イオン銀行事案に学ぶ「マネロン対策の境界線」、当局「4つの着眼点」とは?
元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」

なぜイオン銀行は処分された?
インターネットバンキングに絡む不正送金などの急増を受け、政府は近年、金融機関のネットチャネルにおけるマネロン対策の整備状況に目を光らせてきました。そんな中、金融庁は24年12月、イオン銀行に対して業務改善命令を発出しました。その主な理由について、当局は次の3点を挙げています。
(1)マネロン対策に関する不適切な業務運営
金融庁によればイオン銀行は、2013年の6月から11月、24年の7月から9月にかけて検知した取引のうち、少なくとも1万4639件について、疑わしい取引に該当するかを判定しないまま放置。さらに、2013年5月以降、疑わしい取引を検知してから届出までに要した日数の月平均が最長152日間と、長期間に及ぶ状態が継続している実態が認められたといいます。
(2)ガイドライン対応の遅れ
金融庁は2018年2月に公表した「マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策に関するガイドライン」の中で、政府として金融機関に求めるマネロン対策の考え方を提示。24年3月を期限として、態勢整備を完了させるよう要請してきました。
金融庁によれば、イオン銀行は処分の前段階ですでに、システム対応や規程整備の不備を金融庁から指摘されていたものの、その後、十分な期間があったにもかかわらず、再検査の時点で改善が認められず、さらに24年3月の要請期限にも対応が完了していなかったといいます。
(3)態勢上の不備
さらに金融庁は、当局からの指摘を含め態勢上の問題点を把握する機会があったにもかかわらず、取締役会と経営陣が自ら積極的な実態把握を行わなかったばかりか、態勢整備に向けた必要な指示も行わず、主導的に関与してこなかったことを問題視。「取締役会および経営陣の姿勢が、当行の組織内においてマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の構築を軽視したリスクカルチャーを助長し、自主的な改善を阻害してきたものと認められる」と指摘しています。
今回の処分理由の中には、実際にイオン銀行の態勢不備によって不正利用が行われたという事実は含まれていません。逆にいえば、自社のサービスがマネロンに利用された事実がなくても、万一の場合に備えた対策に不備があれば当局に「刺される」可能性があるという点で、他の金融機関にとっても他人事ではないのです。
イオン銀行は処分を受け、同月31日に業務改善計画書を提出。「マネロン・テロ資金供与対策に係る態勢強化を図り、お客さまに安心してイオン銀行をご利用いただけるよう、信頼の回復に努めてまいります」とコメントしています。

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