• 2026/03/12 掲載

MUFG・SMBCが注目する“インド開発拠点”、金融ITの勢力地図はどう変わるのか?(3/3)

FINOLABコラム

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MUFG・SMBCの施策とは?

 日本の金融機関やフィンテック企業にとってこうした動きは今後の戦略を考える上で示唆に富む。

 国内ではIT人材不足が続き、内製化の必要性が指摘されているものの、その担い手の確保は容易ではない。金融サービスのデジタル化やAI活用が進む中、金融IT人材に求められるスキルは高度化しており、銀行や保険会社が国内だけで必要な人材を確保することは難しくなっている。

 これまで日本企業にとってインドは主にオフショア開発拠点だった。しかし近年拡大するGCCは、単なる開発リソースではなく、AI開発やデータ分析、プロダクト開発を担うグローバルな開発拠点として位置づけられつつある。

 特に金融分野では、不正検知やAML、与信モデルなどAI活用が競争力を左右する領域が広がっている。こうした分野では外注ではなく、業務理解と技術力を兼ね備えた内製型の開発体制が重要になる。

 その意味で、インドのGCCは単なるコスト削減のためのオフショア拠点ではなく「金融DXを共に設計するパートナー拠点」として再定義する余地がある。

 今回のイベントにおいて筆者が登壇したパネルディスカッションでは、MUFGとSMBCの現地IT開発拠点の責任者の参加もあり、オディシャ州のような新興拠点を人材供給や次世代金融技術の共創拠点として注目していることがうかがえた。

 特に、MUFGはインドにおける人材確保とアジアにおけるITリソースの拡充を図るべく、シンガポールを拠点とする金融エコシステム組織GFTN(Global Finance & Technology Network)との連携を進めている。両者は2025年11月、インドを起点とする複数年のパートナーシップを締結し、FinTech人材の育成と金融イノベーションの担い手創出に取り組むことを発表した。

 第一段階としてオディシャ州で展開されるのは、シンガポール国立大学(NUS)のAsian Institute of Digital Finance(AIDF)が提供するFinTech・InsurTech教育プログラムで、2030年までに約7000人の学生の育成を目指す。MUFGは教育プログラムに加え、実務課題への参加やメンタリング、ジョブフェアなどを通じて学生と金融業界を直接結びつける仕組みづくりを支援する。

 こうした取り組みは、単なる人材育成にとどまらず、インドを中心としたアジアのFinTechエコシステム形成を視野に入れたものとみられる。金融機関自らが教育段階から関与し、将来のデジタル金融人材のパイプラインを構築する試みとしても注目される。

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GCCの展開に関するパネルディスカッション
(提供:GFTN)

金融ITの勢力地図はどう変わるのか?

 インドにおけるオフショア開発の歴史は、効率化から始まった。しかし現在進行しているGCCの進化は、金融イノベーションをどこで生み出すかというR&D戦略へと変質しつつある。

 その背景には、AIの進化や普及によりIT集積地の構造変化が起こり、インド国内で生き残りをかけた地域間の競争が始まっていることがある。

 イベントにおける議論を通じて、インド全体でも14億超の人口で当面増加傾向にある「人口ボーナス」という量のアドバンテージを享受しつつも、世界のIT企業に多くのトップレベル人材を輩出している質の高さを生かして、方向転換に入りつつあることが感じられた。

 インドGCCの進化は、金融ITのグローバル分業構造が変わりつつあることを示している。金融イノベーションをどこで生み出すのかという地理的重心は、今まさに動き始めており、日本の金融機関にとっても「グローバルな開発体制をどのように設計するのか」は経営課題になり得るだろう。

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