- 2026/05/22 掲載
生成AIに「置き換えてOK」な金融業務は?融資稟議Before/Afterで完全解説(2/3)
【見極め方がワカル】生成AIに任せられる「金融業務」の領域とは?
上で金融機関の業務にはさまざまな判断があると述べた。ここでは、その判断を類型化するとともに、それぞれ生成AIをどのように活用していく余地があるのか考えてみることにしたい。具体的には、本稿では金融機関で行われる判断を形式判断、予測判断、価値判断の3つに類型化したい。以降、それぞれの代表的な業務と特徴について述べていこう。・(1)形式判断
たとえば、送金プロセスを考えてみる。まず、依頼者の本人確認書類の確認を行う。認められる本人確認書類の種類にも、有効期限にも、担当者の判断が入る余地はない。反社会的勢力に該当しないかのシステムチェックや、外国PEPsのチェックも同様である。重要なのはデータが規程などに一致するか否かのみである。判断者の裁量は小さく、逆に条件に合致しているか否かを示せば説明責任を果たせる類型である。
・(2)予測判断
上で述べた与信審査などが該当する。将来や金融機関側では把握しきれない事象について、過去データなどを基に予測し、判断を行う。審査のスコアリングなどはロジックが整えられており、担当者が独自のロジックを用いることはないだろうが、事業性評価などは担当者ごとのロジックは異なることも考えられる。
判断者に一定の裁量は与えられているが、専門家としての知見の範疇であるため、裁量の幅は必ずしも大きくない。説明責任としては、分析・判断の手法を中心としたプロセスの妥当性について責任が生じる。
・(3)価値判断
さまざまなケースが考えられるが、たとえば、投融資先のネガティブスクリーニング先の決定や、不採算店舗を地域の公共性に鑑み存続させるか判断するというようなものがあてはまるだろう。これは「正解」のない問題に対して意思を示すことと言え、裁量の最も大きい類型である。
これについては、分析・判断の手法というより、どのような価値観の下、比較衡量(ひかくこうりょう)のプロセスを通して意思決定を行ったのかというプロセスが問われる。
それでは、この分類を前提とした場合、生成AIをどのように活用することが考えられるだろうか。
(1)形式的判断は、最も生成AIが得意とする分野である。生成AIではない従来のAI、識別型AIでも形式的判断を担わせることは可能であったが、数値基準を元に自動判別させるなどの利用が主であったのに対して、生成AIであれば、申請書などの自由記述を読み解いて判別する、リストチェックを実施する際も表記ゆれを加味して判別するなどの対応が可能になる。
(2)予測判断型については、財務諸表や面談記録、ニュースやIRなどを元に与信判断を行うなどの業務を担わせることができるだろう。
基本的には稟議作成補助などが中心で、最終的な判断は人間が下すという活用の仕方が中心であると考えられるが、個人向けのローンなどでは、生成AIが原則的に判断を下すサービスが登場する可能性はあるだろう。
(3)価値判断については、議論の壁打ちとして生成AIを活用することは当然考えられるが、人間が下すべきものであるため、生成AIに判断を依拠するということはないであろうし、また、その理解も得られないであろう。
以上のように、金融機関で行われる各種の判断に生成AIは大きく寄与するが、判断の種類によって生成AIの受け持つ範囲は異なり、すべての判断を生成AIが代替するということは起こらないと考えられる。
「AIが収集・人間が判断」で融資業務はどう変わる?
なぜこのようになるかと言えば、先述したように、金融機関では(1)判断の前提となる事実認識のために、必要な情報収集・分析を合理的な水準でしっかりと行ったか、(2)事実に基づいて、銀行の公共性や健全性を損なわない意思決定をしたかが問われるからである。情報収集・分析については、多くの場合、生成AIは人間以上のスピードでこなすことができる。しかし、判断プロセスがブラックボックス化されかねない点、また、意思決定の責任の所在という点で生成AIには課題がある。
そのため、意思決定に裁量の余地のない形式的判断では生成AIを最も有効に扱い得るが、予測型判断や価値判断においては人間の判断が必要になる。つまり、生成AIの本質は判断の前提のための情報収集・分析装置ということができるだろう。
したがって、AIの業務への導入に際しては、AIにどこまでを任せるか、人間が何を判断するのか、AIの結果の誤りをどう正し、また誰が責任を負うのかを定めることが重要になる。
ちなみに、たとえば、米国のAI融資プラットフォームのアップスタート社では、個人ローンを中心に、原則的にAI(ただし生成AIではない)が融資の可否を判断する仕組みがすでに稼働している。
この成功の要因をどう捉えれば良いのか。ここでは、3つのポイントを挙げたい。
1点目は予測精度である。従来の金融機関では個人の信用力評価指標(FICOスコア)を用いるが、アップスタート社ではいわゆるオルタナティブデータと呼ばれるものも含め多くのデータを活用、すなわち、必要な情報収集・分析をより高いレベルで行っていることが挙げられる。また、モデル次第ではあるが、人の手を介さないほうがアンコンシャスバイアスから逃れられる可能性もあるだろう。
2点目は厳格なガバナンスである。自社でのバックテストはもちろん、アルゴリズムと予測結果を当局に開示し、差別的な判断が行われていないかモニタリングを受け入れていた。
3点目は、コストの問題である。AIの管理には当然コストを要するものの、大量のローンビジネスをさばく人手を要さないビジネスモデルであり、コスト削減が可能となっている。その浮いたコストを元に競争力のある金利条件を提示することで成立していると言える。 【次ページ】融資稟議のAI化で訪れる…“若手に待ち受ける危機”
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