- 2026/05/22 掲載
生成AIに「置き換えてOK」な金融業務は?融資稟議Before/Afterで完全解説(3/3)
融資稟議のAI化で訪れる…“若手に待ち受ける危機”
判断を伴う業務に生成AIを導入することで、行職員の作業時間が短縮する。多くの場合、このような効果を発揮することは事実であるが、これは業務効率化というより、意思決定プロセスの再設計と捉えたほうが適切であろう。再び融資稟議を例にとれば、従来、支店の営業担当者が行っていた、融資先の決算情報や面談記録から情報を取捨選択して稟議という形式にまとめる作業を生成AIが担う。それを支店担当者が確認した上で稟申し、審査部での審査を通じて決裁される。
つまり、従前は情報の収集・分析を支店担当者が行い、部店での決裁を得て最終判断を審査部で行っていたものが、生成AIが情報収集・分析と意思決定の素案作成を行い、担当者も審査部も異なる立場からそれを評価するというプロセスを通して、金融機関としての意思決定を行う形に変わることになる。このプロセスを通じて、AIの収集した情報・分析の確からしさ、また、それに基づいてAIが構築した論理の妥当性を評価・検証することが人間に求められている。
加えて言えば、責任の所在も人間にしかないため、社内規程次第の面はあろうが、支店、審査部、または、AIを構築・所管している部署が直接的な責任を負うことになるだろう。
生成AIで何ができるか/何ができないか、ではなく、“責任の境界線”をどう引き、どのような業務プロセスを構築するかが問われている。これについては、次章にてもう少し詳しく見ていくことにしたい。
また、これに伴い働き方、さらには組織体制にも変化があるだろう。支店担当者は営業活動に従事し一次情報に触れているため、生成AIの作成した稟議に事実の誤りがあるかどうか判別することが特に求められよう。もしかすると、稟議作成の過程で不足する情報を生成AIに列挙され、支店担当者が足で取りに行くということもあるかもしれない。
審査部は、稟議内容を所与として稟議内容の妥当性を判断することが重要な役割であろうし、これは現在と大きな差はないだろう。ただし、稟議内容を所与と書いたが、審査部でも生成AIを活用することで、従前は限界があった稟議記載内容の裏取りなども可能になるだろう。
また、審査部に上げられる稟議の形式面は生成AIの支援によって整っていくため、形式的な不備や情報の不足に対するチェックの必要性は低下すると考えられ、本質的な審査目線の発揮が求められるだろう。作業時間自体は短縮され、他方で、業務の密度、判断に求められるレベルは高まっていく方向になると考えられる。
稟申も審査の荒ごなしも生成AIに頼るのであれば、従来OJTで身についていた行職員のスキルの空洞化が起こり、必要とされる能力はむしろ失われる懸念があるため、審査においては、重要な判断をこなす重量級の役席者のグループが必要であることに加え、次世代の育成の観点での若手配置が重要になっていくと考えられる。
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