- 2026/08/14 07:00 掲載
【7社決算比較】中堅証券「爆益」の裏側、株高後に失速するのは?“利益の質”に明暗(2/2)
売買頼みから脱却へ…いちよし・水戸・丸三の実力は
そこで注目されるのが、投資信託の信託報酬やファンドラップのフィーなど、顧客の資産残高に応じて継続的に得られる収益だ。
売買手数料より継続性は高いが、もちろん運用残高の時価変動や顧客の解約による影響は受ける。
いちよし証券では、投資信託の信託報酬やラップフィーなど、資産残高に応じて継続的に得られる収益が前年同期比76.1%増の49億5,400万円となった。
同社は、これらの継続収益を販管費と比較した「コストカバー率」を開示している。販管費を100とすると、継続収益が97.1に相当する計算で、前年同期の66.4%から大きく上昇した。
これは、株式の売買手数料やトレーディング利益がなくても、販管費の大部分に相当する収益を確保していることを示す。ただし、収益と費用を単純に比較した会社独自の指標であり、固定費の97.1%を利益で賄ったという意味ではない。
ファンドラップ「ドリーム・コレクション」の残高も、前年同期末比40.7%増の4,806億円となった。ただし、この残高増には、顧客からの資金流入だけでなく、市場上昇による時価評価額の増加が含まれる可能性がある。残高の増加をそのまま新規資金の獲得とみなすことはできない。
水戸証券も、投資信託の代行手数料とファンドラップ報酬を合わせたストック収益を、46.0%増の18億1,500万円へ伸ばした。会社開示の販管費カバー率は49.3%だった。
国内株式の委託手数料や外国株式収入、トレーディング利益も増え、営業利益は前年同期の2億3,900万円から19億8,400万円へ拡大している。今四半期は、市況連動収益と継続収益の双方が伸びた形だ。
丸三証券では、投資信託の信託報酬が31.6%増の24億1,900万円となった。
同社が対面営業部門を対象に算出する、信託報酬による販管費カバー率は53.8%だった。ただし、いちよし証券、水戸証券、丸三証券では、対象となる収益や販管費の範囲が異なる。このため、97.1%、49.3%、53.8%という数値を直接比べ、順位を付けることはできない。
丸三証券の営業利益は約4.4倍に増えた一方、純利益は2.1%増にとどまった。
前年同期には、決算説明資料でいう連結子会社合併に伴う差益5億3,300万円──決算短信上の科目は「抱合せ株式消滅差益」──や、投資有価証券償還益4億9,400万円などを計上していたためだ。主要2項目の合計は10億2,700万円だが、少額項目や百万円未満の端数を含む決算短信上の特別利益計は10億3,100万円となる。
前年同期の一時的な利益を除いて見ると、丸三証券の本業利益は大きく回復した。
3社の決算から確認できるのは、売買手数料より継続性の高い収益が伸びたという事実だ。
“爆益”は本物か? 次の決算で見抜く3つの「利益の質」
7社の中で、利益の読み方に注意が必要なのがアイザワ証券グループだ。営業収益は37.0%増の58億1,200万円となり、営業損益は前年同期の5億7,600万円の赤字から、2億3,800万円の黒字へ転換した。事業別では、証券事業が4億8,300万円のセグメント利益を確保した。一方、運用事業は6,600万円、投資事業は9,300万円のセグメント損失となった。
親会社株主に帰属する四半期純利益10億5,400万円には、政策保有株式や投資事業の投資有価証券の売却に伴う8億6,600万円の特別利益も含まれる。最終利益だけで証券本業の実力を判断すると、実態を読み違える可能性がある。
今回の決算だけで、相場下落時に最も強い会社や、中堅証券7社の「本当の勝者」を決めることはできないが、次の決算で確認すべきポイントは3つに整理できるだろう。
第1は、「市況連動収益の反動」だ。岩井コスモHDは株式トレーディング、東洋証券は株式委託手数料、極東証券は債券を中心とするトレーディング利益が業績を押し上げた。
市場の売買が鈍った際に、これらの収益がどこまで減るのか。営業利益の変動幅を見る上で重要となる。
第2は、「残高連動収益の伸びと中身」だ。
いちよし証券、水戸証券、丸三証券では、信託報酬やラップ報酬などが増加した。
ただし、預かり資産やラップ残高の増加には、相場上昇による評価増も含まれ得る。顧客からの純流入額が開示される場合は、評価増と分けて確認する必要がある。
第3は、「収益と販管費の伸びの関係」である。継続収益が増えても、人件費やシステム費などの販管費がそれ以上に増えれば、営業利益には残らない。
今四半期の営業利益額では岩井コスモHD、営業収益に対する営業利益の単純比率では極東証券、前年同期も営業黒字だった6社の増益率では東洋証券が首位だったことだ。一方、いちよし証券、水戸証券、丸三証券では、売買手数料より継続性の高い収益が拡大した。
信託報酬やラップ報酬などの継続収益をどこまで伸ばせるかは、中堅証券7社の利益の質を判断する重要な材料の1つとなる。
今回の好決算は、7社の地力だけでなく、株高と売買活況に支えられた面が大きい。したがって、次の決算で問われるのは利益額の大小だけではない。
市況連動収益の反動、残高連動収益の伸び、預かり資産の純流入、販管費の増加。これらを追うことで、今四半期の“爆益”が一過性だったのか、それとも持続性を伴う確かなものだったのか、明らかになることだろう。
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