- 2026/07/31 06:30 掲載
金融庁も認める“手つかずの3領域”、地銀・信金がまだ稼げていない支援とは?
大野博堂の金融最前線連載第99回
93年早稲田大学卒後、NTTデータ通信(現NTTデータ)入社。金融派生商品のプライシングシステムの企画などに従事。大蔵省大臣官房総合政策課でマクロ経済分析を担当した後、2006年からNTTデータ経営研究所。経営コンサルタントとして金融政策の調査・分析に従事するほか、自治体の政策アドバイザーを務めるなど、地域公共政策も担う。著書に「金融システム監査の要点」(経済法令研究会)「金融機関のためのサイバーセキュリティとBCPの実務」「AIが変える2025年の銀行業務」など。飯能信用金庫非常勤監事。東京科学大学CUMOTサイバーセキュリティ経営戦略コース講師。宮崎県都城市市政活性化アドバイザー。
人口減少は食い止めない? 金融庁『デモグラフィカル』の真意
地域金融力強化プランは、地域経済の活性化を目的とし、地域金融機関の役割を強化するための政策パッケージである。2025年6月の金融審議会において、地域金融力の強化に関するワーキンググループの設置が宣言され、趨勢的に減少傾向を辿るであろう地域の人口動態について、これを「食い止めるのではなく受け止める」ことが念頭に置かれていたのが興味深い。
これは先の石破内閣時代の2025年6月に公表された「地方創生2.0」の概念を踏襲したものだ。かつての地方創生で国は地元自治体に、「人口減少を食い止める」ことを目的に地方版総合戦略の策定を要請していた。
各自治体では、事業や施策を打ち出したものの、全国どこでも共通するような変わり映えのしないものばかりで、当然ながら人口減少の趨勢に影響を与えるものとはならなかった。実際、全国平均の合計特殊出生率も直近で1.3にまで落ち込んだ。
これを受け地方創生2.0では「人口減少を是とし、それでも地域の社会構造やインフラを維持できる状態を目指す」ことを打ち出さざるを得なかったのが本当のところだろう。つまり、かつての婚活支援など「婚姻数を増やす施策」や「子供を増やす施策」ではなく、「子供を育てやすい環境づくり」「少ない人口でも維持できる最低限の機能やインフラの整備・維持」に戦略そのものが大胆に移行することとなったわけだ。
国を挙げたこうした発想転換は、地域金融機関の営業戦略にも変化を与える。つまり、地域の人口が趨勢的に減少傾向を辿る中で、営業エリアの法人数、個人顧客数が減少することを想定せねばならず、これに見合った経営形態を指向する必要があるためだ。
なお、法務局の登記ベースでは我が国における法人企業数は500万社におよぶ。ただし、これには休廃業や登記閉鎖された休眠状態の企業も多数含まれており実態から乖離しているとの指摘がある。実際は、国税庁によれば2024年度時点で299万社(法人成り含む)程度が活動実態のある法人とされる。とはいえ今後の人口動態の変容で、こうした企業数にも下振れ圧力が加わっていくことを国は想定しているということだ。
こうした概念を金融庁では「デモグラフィカル」の視点と位置付けている。つまり、趨勢的な人口減少の中で想定される法人顧客、個人顧客の減少を念頭に、現実的な自行庫の立ち位置を見極め、経営戦略を見直さねばならないわけだ。我々は、これが地域金融力強化プランに通底する問題意識となっていることを強く認識せねばならない。 【次ページ】定番“3サービス”の先、企業が欲しい“手つかずの支援”とは
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